柴 那典「ロックフェス文化論」 第2回

サマソニ第一弾出演者決定 ヘッドライナーにA・モンキーズ選出でUKロック色強まるか

 もしくは、ひょっとしたら新作『AM』のヘヴィでスローな方向性を反映してブラック・サバスとのダブルヘッドライナーが実現、昨年の「オズフェスト」に続くヘヴィ/ラウド系のラインナップになるかもしれない。こちらは大穴の予測だが、実現したらかなり熱い一日になるのではないだろうか?

 90年代末の黎明期から00年代の拡大期を経て、いまや日本のロックフェスは単なる音楽イベントと言うより、花火や海水浴にも並ぶ「夏の定番レジャー」として定着している。この連載「ロックフェス文化論」でも検証していこうと思っているが、その状況を踏まえ、ここ数年、日本の各種大型ロックフェスは、様々なスタイルで独自進化を遂げ、「フジロッカーズ文化圏」や「ロッキン文化圏」など、それぞれ独自のコミュニティと文化圏を形成してきている。

 その中で、「都市型フェス」としてスタートしたサマソニは、20万人以上の動員を誇りながらフェス独特のコミュニティや文化圏を持たない、という特色がある。その背景にあるのが、毎年ヘッドライナーによって傾向が変わるラインナップにあるわけだ。リアーナやKE$HAやピットブルを目当てにサマソニに訪れたギャルやギャル男が、その翌年にメタルTシャツ着てメタリカでヘッドバンギングしている図は思い描きづらいわけで。フジロックやロック・イン・ジャパンに比べ、フェスへの帰属意識が生まれにくい構造になっている。

 つまり、野外の開放的な自然環境の体験を伴わないこともあり、最も“メディア的な”ロックフェスとして進化してきたのがサマソニなのである。イキのいい海外の新人バンドをショーケース的にいち早く来日させ、邦楽バンドだけでなくアイドルやKPOPにも門戸を開き「そこにいけば今の音楽シーンの様々な最新潮流を身をもって体験できる場」としてブランドを築き上げてきた。

 昨年には全日程がソールドアウト、合計約23万人(東京13万人、大阪10万人)という過去最高の観客動員を記録したサマソニ。今年も大きな注目を集めそうだ。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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