ストリート発ミュージシャンの系譜 その最前線に踊り出たUSAGIとは何者か?

新宿駅前でストリートライブを行うUSAGI。左から、上田和寛、杉山勝彦。

 ストリート出身で活躍するミュージシャンは数多いが、また新たにその歴史に名を刻もうとしている二人がいる。彼らの名はUSAGI。2000年前後に起きた「ストリートミュージシャン」ブームを振り返りながら、新星USAGIの魅力をお伝えする。

 ストリートミュージシャンの歴史は長い。古くは1969年前後に盛り上がり、泉谷しげるも参加した「新宿西口フォークゲリラ」。その後は80年代以降の歩行者天国増加やバンドブームに伴い、「路上で通行人に向かい歌う」という行為がミュージシャンの間でも浸透した。しかし一般にもその存在が浸透したのは1997年頃、ゆずの登場が大きかっただろう。横浜市中区伊勢佐木町の横浜松坂屋前で行っていた彼らのライブには毎回数千人の見物客が訪れ、インディーズアルバム「ゆずの素」(1997年)の翌年にリリースされたメジャーデビューシングル「夏色」(1998年)はオリコン17位を記録。30万枚近くを売り上げプラチナシングルとなった。路上ライブは「人が集まりすぎるから」という理由でその年の8月30日がラストとなったが、その路上最終ライブには7500人もの観客が詰めかけたという。その後の活躍については挙げるまでもないが、今でも第一線で精力的に活動している。

 ゆずがメディアに出演するようになると音楽好きの若者たちが一斉にフォークギターへ飛びついた。これまでカラオケ屋で歌っていた者達がストリートミュージシャンに転身し、自作の唄を路上で披露するようになる。それまで楽器店の片隅に置かれていたフォークギターの売上が飛躍的に伸び、テレビでもストリートミュージシャンを特集した番組が数多く放送されるようになったのもこの頃だ。TV発のストリートミュージシャンで有名なのは「電波少年」出身のSomething Elseや「The Street Fighters」で有名となったサスケだろう。Something Elseのシングル「ラストチャンス」(1998年)はオリコン1位を獲得、サスケの「青いベンチ」(2004年)は8位を獲得し後にテゴマスによってカバーされた。他にも326プロデュースの19なども活躍しており、世はまさに空前のストリートミュージシャンブームであった。当時私は千葉県の柏市に住んでいたが、ストリートミュージシャンの聖地と呼ばれた当時の柏駅前は週末になると溢れんばかりの観客が押し寄せ、彼らを前に数多のミュージシャンがしのぎを削っていた光景を今でも覚えている。

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