阿部寛が明かす、“加賀恭一郎”の8年間 「『新参者』シリーズは役者としての基盤を支えてくれた」

『祈りの幕が下りる時』阿部寛インタビュー

 2010年4月に連続ドラマとしてスタートした東野圭吾原作の『新参者』シリーズの完結編となる『祈りの幕が下りる時』のBlu-ray&DVDが現在発売中だ。数多ある「刑事モノ」で描かれる刑事とは一味違う、加賀恭一郎という主役を生み出した本シリーズは、8年にわたり多くのファンを獲得し続けてきた。

 リアルサウンド映画部では、8年にわたり加賀恭一郎を演じた阿部寛にインタビューを行った。本シリーズが自身に与えた影響から、完結編となる『祈りの幕が下りる時』の見どころ、共演した松嶋菜々子の魅力までじっくりと語ってもらった。

全く演じたことがないタイプの役だった

ーー阿部さんにとって、『新参者』シリーズで演じた加賀恭一郎はどういう存在ですか?

阿部寛(以下、阿部):8年前、『新参者』(TBS系)で初めて日曜劇場で主役をやらせてもらいました。『新参者』の刑事・加賀恭一郎役は、犯人や容疑者の外見だけではなく、心の動きを敏感に感じ取る刑事の役なので、彼らの持つ感情の動きに対しての目に見えない心の反応を、目に見える芝居にどう反映させていくかは意識していました。それまではどちらかというと自分が一人で突っ走っていくようなエキセントリックな役が多かったので、むしろ“動かない刑事”加賀へのアプローチはそれまでとはちょっと違いました。

ーー加賀恭一郎はこれまでの刑事ドラマには出てこなかった独特なキャラクターだと感じます。

阿部:『新参者』シリーズを通して、僕としては、加賀を演じることは、手足をもがれたみたいな感覚がありました。8年前は色々な役を演じるにあたって、その時々の方法でその役を“捕食”しようと思ってましたけど、加賀の場合はほとんど動かない、何を考えているのかもわからない不思議な男。なので、相手と向きあって、自分の心の中に沈めていくという芝居だったと思うんです。自分がそういう役を演じることになり、しかも主演という物語においてもっとも重要な人物だった。全く演じたことがないタイプの役でしたし、なおかつ加賀は悪役だったり尖がったところのある人間じゃなくて、人の心をちゃんとくみ取って沈めていって、自分の血と肉にしていく人です。そういう深みのある人物だったので、最初は手探り状態で役を模索していましたが、普通に喋るような素振りで何かを聞き出したり、核心をついても決して表情に出さない、そんな加賀を徐々に自分の中で確立できるようになったと思います。

ーーそもそも、なぜ加賀の役を引き受けようと思ったのでしょうか?

阿部:ドラマ『新参者』の話をもらった時、僕ももう45歳くらいになっていたので、そろそろ本格的な刑事役にも挑んでみたいと思っていました。昔でいうと『特捜最前線』(テレビ朝日系列で1977年~1987年3月26日まで放送された刑事ドラマ)などの作品を観ていて、やっぱり刑事は背中で何かを示せるような、深い人間じゃないと難しいなと思っていたのですが、この年齢で逃げても仕方がないなと。さらに東野圭吾さんが描く加賀恭一郎はすごく魅力的な役柄だったので、いい機会だなと思ってやることしました。

ーー当時、役作りの上で意識していたことは?

阿部:最初にドラマ『新参者』がスタートする時は、“刑事の怖さ”を出すのが一番のテーマでした。小さい頃、別に捕まるような悪いことをしたわけじゃなかったと思うんですが、近所で何かあったみたいで、警察の方に聞き取りをされたことがあったんです。「あそこの家の人見たか」とか「いつ見たか」とか。その時は親がいなくて、玄関の前で僕が4~5人の刑事と相対しました。優しくて物腰は柔らかで静かなんですが、雰囲気はものすごく怖い。そんな印象があったから、同じような印象を視聴者が持ってくれたらいいだろうなと考え、加賀のキャラクター作りにも反映させました。

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