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池脇千鶴の若菜役は『道』のジェルソミーナに通じる 『ごめん、愛してる』規格外の登場人物たち

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 先週から始まったTBS日曜劇場『ごめん、愛してる』。登場人物たちが囚われているのは、題名の通り「愛」であり、「過去」でもある。過去を想い、現在を生きる人々が、どう前に進んでいくのか。初回だけでも怒涛の展開だったが、彼らの行く末がどうにも気になる。そしてなによりこのドラマの一番の魅力は、ど直球の「王道恋愛ドラマ」のキャラクターに当てはめるには規格外ではないかとまで思ってしまうほどの個性的かつ未知数な部分もあるキャスト陣だ。

 韓国ドラマ『ごめん、愛してる』のリメイクであり、ドラマ『純情きらり』『八日目の蝉』『大奥』などの浅野妙子が脚本を手がけている。初回の半分は韓国が舞台だったこともあり、異国情緒も含め、実にドラマチックで壮大な物語が繰り広げられている。

 不遇な環境で孤独に過ごしてきた長瀬智也演じる律は、ある日事件に巻き込まれ、被弾する。その時に脳内に残った銃弾が律の命を奪う時限爆弾さながら、生き別れた母親を追い求める彼を急きたてる。一方、吉岡里帆演じる凛華は、坂口健太郎演じるピアニスト・サトルのスタイリスト兼お世話係をしながら、他の女性に恋するサトルを一心に愛している。全く別の世界で生きてきた律と凛華は、韓国で律が凛華の窮地を救ったことがきっかけで出会い、律の生き別れた母親が、凛華の想い人であるサトルの母親(大竹しのぶ)だったという偶然によって再会することになる。

 ドラマは、律との出会いを反復し、思い出の場所に花を手向け涙する凛華の姿から始まる。転んだ彼女に差し伸べられる手、自転車、屋外の簡易ベッド。それは、これから進行する物語における「現在」にとっては未来の出来事であり、未来を現在進行形で生きている彼女にとっては「現在」なのであるが、彼女の過去への固執は、これからその「過去」を見ることになる視聴者に、その過去をより輝かしく、鮮烈な光景として印象づけさせる。

 場面が変わって、凛華に出会う前の律が、家のベンチに座って自分を捨てた母親の唯一のプレゼントである指輪を、お守り袋から取り出して眺めている。それもまた、冒頭の律と出会った過去を反復する凛華と同じく、自分のことを想って置いていっただろう指輪という過去を通して、自分の記憶にはない母親の愛を確かめる行為に他ならない。その2つの連続した、現在から過去を反芻する行為が、その後の登場人物たちの行動の理由に「過去」を伴わせる。サトルのことを「24年間好きでい続けてきた」凛華、律を捨て、サトルを溺愛し、何らかの事情でピアノから遠ざかっているピアニストである麗子、律の父親と六角精児演じる秘密を握る男との関係。

 そして、なにより印象的であるのが、池脇千鶴演じる河合若菜と息子の魚の存在である。児童養護施設で律と共に育った若菜は、律が養子にもらわれ施設を去った後、律に似た子供を追いかけて交通事故に遭う。その結果、脳に障害が残ってしまい、幼い頃のままの知能で止まっているという。そのことを養護施設の園長から聞いた律は、思わず自分の後頭部、銃弾が残っている部分に触れる。それは、自分と同じく事故がきっかけで脳に問題を抱える若菜に共通するものを感じたのか、自分を思い続けていた若菜と母を思い続けている自分がリンクしたのか、恐らくその両方なのだろう。若菜と魚が、窓際で並んで外を見つめている場面は、それまでのただひたすらにドラマチックでロマンチックな王道恋愛ストーリーに、ハッとするようなリアリティを持ち込んだ。彼ら2人もワカナとサカナという名前からしておとぎ話のような存在だが、その純粋さは切なく愛おしい。そのリアリティは、身体障害者であるジョゼと青年の恋を描いた傑作映画『ジョゼと虎と魚たち』でのジョゼ役や、数々の映画賞を受賞したのも記憶に新しい、居場所のない男女の恋を描いた『そこのみにて光輝く』の千夏役など数多くの女性を演じてきた池脇千鶴の演技力ゆえである。若菜というインノセントなキャラクターは、フェデリコ・フェリーニ『道』のジェルソミーナよろしく、このドラマになくてはならない存在となるだろう。

      

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