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『この世界の片隅に』が日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞に輝いた意義とは

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 第40回日本アカデミー賞授賞式が3月3日、グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで行われ、各部門の最優秀賞が発表された。庵野秀明総監督による『シン・ゴジラ』が最優秀作品賞、最優秀監督賞ほか7冠を達成する一方で、大きな注目が集まったのは新海誠監督作品『君の名は。』と片渕須直監督『この世界の片隅に』がノミネートされた「最優秀アニメーション作品賞」の行方だ。

 2016年は、映画興行収入約2305億円のうち、洋画が占める割合は全体の30%程度にとどまり、邦画の興行収入が前年度比123.5%の約1480億円を記録するなど日本映画が圧勝の1年だった。興行収入240億円を超える大ヒットを記録した『君の名は。』と、キネマ旬報ベストテン第1位に輝いた『この世界の片隅に』。2016年の日本映画界は、興行面でも作品的評価としても、この2作品を中心としたアニメーション作品が席巻した1年だったといえる。

 今回の日本アカデミー賞では、『この世界の片隅に』が『君の名は。』、『聲の形』を退け最優秀アニメーション作品賞に輝いた。片渕須直監督は「6年以上かかった作品。諦めなくてよかったです。途中で諦めていたら、みなさんの中にすずさんの姿が宿ることはなかった」と感謝のコメントを寄せている。クラウドファンディングによる資金集め、そして片渕須直監督をはじめとしたスタッフが6年の歳月をかけて完成させた『この世界の片隅に』。異例のロングランを続けているが、今回の受賞をきっかけに、さらに観客数を伸ばしそうだ。

 映画評論家のモルモット吉田氏は今回の受賞結果を受けて次のように語る。

「他の映画賞と比べて、興行的側面が評価される傾向にある日本アカデミー賞なら、『君の名は。』が選ばれるのではと思っていました。これまでも大手4社(東宝、松竹、東映、角川)のアニメばかりが受賞していましたから。『この世界の片隅に』が受賞したことで、数館規模で公開した作品が、公開規模を拡げて、こうした形で評価されるケースも今後は出てくると思います」

 今年は神山健治監督『ひるね姫 知らないワタシの物語』、新房昭之監督『打ち上げ花火上から見るか下から見るか』(岩井俊二監督作品のアニメーション化、脚本は大根仁)など注目のアニメーション作品が公開される。吉田氏は、実写とアニメの関係の変化に注目し、以下のように述べた。

「一昔前までは実写の映画監督が、アニメーションに総監督、監修などで携わっても、名義上のことが多く実質的にはアニメのスタッフが現場を動かしていました。『打ち上げ花火〜』には大根仁監督が脚本として参加していますが、岩井俊二監督が自身の『花とアリス』を自らアニメ化したり、CGの活用もあって『STAND BY ME ドラえもん』の様に、実写の映画監督がアニメーションへ本格的に参加する機会が増えていくのではないでしょうか。一方で、アニメを手がけてきた神山健治監督が『シン・ゴジラ』の脚本に携わったり、庵野秀明監督がアニメの方法論を『シン・ゴジラ』に持ち込んだりと、作り手側にとっては、実写を撮るのもアニメを作るのも、境界がなくなってきていますね。観客の方が、実写とアニメを分けて考えすぎているかも知れません。『君の名は。』が日本アカデミー賞で脚本賞を受賞したように、アニメが好きな人は今回ノミネートされた他の実写作品を、実写が好きな方は『君の名は。』『聲の形』なども観て、実写とアニメを同じ土壌で評価すべきなのか、分けて考えるべきなのか、考えてみると面白いと思います」

 今回の日本アカデミー賞における『この世界の片隅に』や『君の名は。』『聲の形』への注目と評価は、アニメーション作品の新しいあり方を後押しするのかもしれない。2017年はどんな作品が日本映画界を彩ってくれるだろうか。

(文=石井達也)

■公開情報
『この世界の片隅に』
全国上映中
出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、澁谷天外
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
公式サイト:konosekai.jp

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