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SMAPは日本映画界に何を残したか? 宇野維正が振り返る「SMAPの映画史」

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realsound-smapth_.jpg(C)タナカケンイチ

 先週8月14日未明に発表されたSMAP年内解散の報を受けて、(情報の出どころがあやふやなゴシップだけでなく)これから様々な側面から、彼らの足跡や功績が振り返られることになるだろう。数多くの名曲を残した音楽グループとして、90〜00年代という「テレビドラマの時代」を牽引した5人の演者として、アイドル・バラエティのパイオニアとして、タレントを起用した広告のあり方そのものを変えた存在として。

 そんな中で、「日本映画におけるSMAP」というのは、なかなか位置づけが難しいテーマである。自分はSMAPを、ジャニーズのアイドル・グループであるという以上に、楽器演奏こそしなかったものの、たとえばクレイジー・キャッツやザ・ドリフターズやザ・スパイダーズといった、日本の戦後芸能史を彩ってきた音楽とお笑いを横断する陽性のエンターテインメント・グループの末裔としてとらえてきたところがある。メンバー個々がそれぞれ特異な個性を持ったタレントであるのはもちろんのこと、5人が並んだ時にそこに生じる圧倒的な「ハレ」の感覚。「国民的アイドル」だとか「日本を元気にする」みたいな物言いはあまり個人的には好まないのだが、彼らは間違いなくそういう存在であった。それも、大々的にブレイクしてから数えるだけでも、20年以上もの長きにわたって。

 しかし、プログラムピクチャー・システムの中でグループとして多くのコメディ映画に出演してきたクレイジー・キャッツやザ・ドリフターズやザ・スパイダーズのような歴史は、もちろんSMAPにはない。映画『ウエスト・サイド物語』を見て感動した野球チームの子どもたちによって結成されたという逸話を持つ「ジャニーズ」がルーツであるジャニーズ事務所の運営方針は、映画よりもミュージカル/舞台に主軸を置いてきた。つまり、映画『ウエスト・サイド物語』は、「映画」としての面ではなく「ミュージカル」(の映画化作品)としての面において重要なきっかけであったということだ。ジャニーズのグループのコンサートは、基本的にグループのメンバー(SMAPの場合、2006年までは中居正広、2008年からは香取慎吾)が構成を担当するのが決まり事となっているが、それは「舞台演出の延長線上にコンサート演出がある」というジャニー喜多川氏の哲学によるもの。そうした事実をふまえると、歴史的にジャニーズが映画という表現フォーマットに対して淡白であったことにも納得できる。あれだけたくさんの人気グループがいた/いるのに、グループでの主演映画は、SMAPに限らず思いのほか少ないのだ(意外にも「グループ映画」が一番多いのはシブがき隊だ)。

 そんなSMAPにも、『シュート!』というグループとしての主演映画が1本だけある。Jリーグが創設された翌年の1994年、Jリーグ・ブームのどさくさの中で生まれたような、サッカー映画としては付き焼刃的な作品ではあったが(原作は高校サッカーを描いた人気マンガでアニメ化もされている)、ファンならばご承知の通り、この作品には森且行を含む6人のSMAPの姿が刻まれている(つまり、5人になってからのSMAP映画というものは存在しない)。また、V6結成前の井ノ原快彦と長野博がチームメイトとして、さらにまだCDデビュー前のKinKi Kidsの堂本剛&堂本光一や、男闘呼組が活動休止となった直後の前田耕陽が友情出演しているなど、ジャニーズ史的にも貴重な瞬間をとらえた作品と言えるだろう。

 その『シュート!』以前から、映画俳優として注目すべき活動をしていたのは稲垣吾郎だ。テレビドラマ『二十歳の約束』が人気を集め、メンバーの中で最初に「役者」として頭角を現していた稲垣吾郎は、1990年に『さらば愛しのやくざ』で映画デビュー、1993年には『プライベート・レッスン』(シルビア・クリステル主演のアメリカ映画のリメイク)でSMAPのメンバーとして最も早いタイミングで映画初主演をはたしている。いずれの作品も監督は和泉聖治。ピンク映画界、Vシネマ界で作品を量産した後、近年は『相棒』のメイン演出家として活躍している一癖も二癖もある演出家だ。映画通としても知られている稲垣吾郎が、本格的に映画俳優として開眼したとされているのは、鮮烈な悪役ぶりで注目を集めた2010年の『十三人の刺客』。その監督の三池崇史も、和泉監督より一世代下ではあるが、同じように「質より量」の80〜90年代Vシネマ界を持ち前のバイタリティで支えてきた演出家。現状、SMAPの中で唯一、継続的に「主役だけでなく脇役もこなしている」稲垣吾郎の名バイプレイヤーとしての資質は、そんな個性の強さと職人肌を合わせ持つ監督たちとの仕事によって培われてきた。

      

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