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成馬零一の直球ドラマ評論『ゆとりですがなにか』

ゆとり世代はどうすれば大人になれる? 『ゆとりですがなにか』第六話で描かれた悪戦苦闘

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 未熟な青年は、何を成し遂げれば大人になれるのだろうか。『ゆとりですがなにか』第六話では、ゆとり第一世代の坂間正和(岡田将生)たちが、仕事と向き合うことで自分自身を変えようと悪戦苦闘する姿が描かれた。

「ゆとり教育を受けた結果、子どもたちはどうなったと思う」
「馬鹿になった!」
「正解です」
「え~」
「学力が低下して社会問題になりました。おまけに社会に出たら使えない。覇気がない。ガッツが無い。言われたことしかやらない。ライバル意識がない。危機感がない。緊張感がない。予期せぬアクシデントに対応できない。全部言いがかりです。国が勝手に土曜日休みにして教科書薄~くして、それでテストの成績下がったからってポンコツ扱いしてるんです。僕たちを」
「でもね。ゆとり世代にも長所はあるんです。他人の足を引っ張らない。周囲に惑わされずベストを尽くす。個性を尊重する」

 学習障害の大悟に対して、授業が遅れるから別のクラスにしてほしいという保護者からのクレームが入る。山路一豊(松坂桃李)たち小学校の教師たちは算数の授業だけ大悟を個別授業にする。そのことを子どもたちに説明するために、ゆとり教育について説明したのが上記の台詞だ。真摯に子どもたちと向き合い教鞭をとる山路の姿は『3年B組金八先生』シリーズ(TBS系)に出てきてもおかしくない立派なものである。

 計算ができない大悟に対し「電卓を使えばいい」という意見が子どもたちから出てくる場面は微笑ましいものの、そこから目が悪い人が眼鏡をかけるような感覚で学習障害のある人間は電卓を使えばいいという意見につながっていく流れには唸らされる。そんな子どもたちの意見に同意した上で、今はそれができないから、大悟が個別授業を受けなくてはいけないという、厳しい現実を山路は教える。

「大悟が電卓を使っていい時代がそのうち来ると思う。それが本当の平等。本当のゆとり教育だと、先生は思います」

 脱ゆとり教育へと向かう現在のムードが、弱者切り捨てに直結しているのではないかという危機感が、しっかりと伝わってくるやりとりだ。

 宮藤官九郎の前作『ごめんね青春!』(TBS系)でも主人公の高校教師が生徒たちに対して、押しつけがましくならないように配慮した上で、真面目に語りかける場面が何度も登場したが、宮藤も含めた番組スタッフが真摯に「ゆとり世代」というテーマと向き合っているからこそ出てきた場面だろう。山路と子どもたちの関係を筆頭に、第六話は、大人になるために下の世代と向き合う姿が繰り返し描かれた。

 妹のゆとり(島崎遥香)が道上まりぶ(柳楽優弥)に妻子がいることを知らずに付き合っていることを知った坂間は、まりぶの家に向かう。父が不倫して離婚したことや母からのプレッシャーといった自分の不遇について語るまりぶに対し「いい年して親離れできないモラトリアム」と言い「関係ねぇし! そんな奴いっぱいいるし。だから妹に手ェ、出していいってことになんねぇから」と、坂間は説教する。

 そして、ゆとりと別れることをまりぶに同意させるのだが、就活中の妹を気づかって、就職が決まるまではフラれたと気付かせずにメールや電話で応援してほしいと気づかうところがしっかりしている。面白いのはこれ以降、まりぶが下手に出るようになって、坂間とは兄弟のような関係になっていることだ。被害者意識に凝り固まっていたまりぶが今後どのように変化していくのか注目している。

      

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