『藍井エイル Special Live 2018 ~RE BLUE~ at 日本武道館』
藍井エイル、強く美しい魂の帰還ーー再会の“約束”果たした日本武道館公演を見て
生命の輝きを見たライブだった。全編にわたり、ありとあらゆる感情が、ありとあらゆる衝動が、希望となって会場全体を照らし出していた。これほどまでに美しく魂を燃やす人がいるのかと、見惚れ、慄き、尊んだ。
2018年8月16日。1年9カ月前に暫しの別れの場所となった日本武道館は満員の観客で埋め尽くされ、青いペンライトの光がアリーナから3階席まで塗り尽くしている。公演タイトル『RE BLUE』を象徴するような光景だ。ステージ上のビジョンには青い光がどくんどくんと胎動のような音に呼応して明滅し、時折蝶を模したエンブレムが現れて、客席から歓声が上がるなど、開演前から物凄い熱気が渦巻いていた。
客電がふっと落ち、わっと歓声が上がる中、真っ白なロングドレスを身に纏った藍井エイルが登場。再会の挨拶として選ばれた曲は「約束」。〈誰よりも近くで見ていてくれた 君が側にいるから/もう一度立ち上がって 新しい季節を探しにいける〉というフレーズが、観客の一人一人に手紙のようにそっと差し出される。それに応えるように青い光が静かに揺れる。大袈裟でもなく、距離があるわけでもなく、久しぶりに会えた大切な人とふっと笑い合えたような心地よい感覚が会場を包み込む。曲終わりに青いドレスに早着替えし、一気に距離を詰めるかのように「IGNITE」へ。特殊効果の花火がドン!と打ち上がり、それが合図だと言わんばかりに青い光が激しく波を打つ。続く「AURORA」では宙空を指しながら凛と立つ姿が、あまりに鮮烈で目を奪われた。
「みなさんこんばんは! そしてただいまー! 藍井エイルです!」
第一声に大きな拍手と復帰を祝う声で会場中が応える。
「もうすでに最高の声を聞かせてくれていますけど、今日は最後までひとつになって、思いっきり盛り上がって行きましょう!」
短いMCを挟んだ後はヘビーなギターが炸裂する「アヴァロン・ブルー」、壮大なシンフォニーが映えるデビュー曲「MEMORIA」、焦燥感とそれに抗う葛藤が胸を打つ「アカツキ」を立て続けて披露。「アカツキ」では床に倒れこみ、叫ぶように歌う場面が圧巻で、歌い手としての表現の進化を感じさせた。
ここでドレスのスカートがまた短くなり、よりアクティブな印象に。
「このライブは約1年9カ月ぶりで、その期間中はずっとやりたかった一人旅をしてみたり、自然溢れるところで自然と触れ合ったりとか、ゆっくり過ごしていたんですけど、でも、せっかくだから自分自身が音楽で成長できる機会にしていけたらいいなと思って、新しいチャレンジをやってたんです。次の曲ではそのチャレンジのひとつをお見せしたいと思います」
そこにローディーが黒いテレキャスターを運んできて会場が沸く。
「このギター可愛いでしょ? いろんなものが青いから、あえて黒にして青が映えるようにしてみました」
そうして藍井エイル本人がギターを奏で「KASUMI」がスタート。がっしりとしたバンドサウンドが感傷的なメロディの歌をより支える。これまでもずっと藍井エイルのサポートとして支えてきたバンドメンバーと、ギターを通して連帯感をさらに高めているようだ。「アクセンティア」でフラッグを持ったダンサーが登場し、「レイニーデイ」ではアリーナに巨大バルーンを投入。一転してハードな「GENESIS」では黒い紗幕を波打たせて感情の揺らぎを表現したりと、多彩な演出でライブを盛り上げていく。「GENESIS」の最後で姿を消し、衣装チェンジしての「シューゲイザー」。黒の衣装にショートパンツと、さらにオフェンシブなスタイルで魅了し、このセクションは終了。ライブは後半戦へと突入する。
「次に演る曲は、決意がテーマになっています。日々生活していく中で、みんな色んな壁を乗り越えてきてると思うんです。壁にぶつかった時の悔しさだったり、苦しみとか悲しみとか、色んなものを抱えると思うんですが、そんな時には、自分の持ってる弱さと向き合わなきゃ前に進めないかなと思っていて……自分の弱さを認めて、噛み締めて、その後“自分にしかできないことは何だろう、自分にできることは何だろう”と考えて。そういった思いを込めて歌いました」
後半戦の口火を切ったのは「流星」。6月に発表された復帰第一弾となる楽曲だ。生きていく覚悟を表明したその歌を、大地を踏みしめ、天を射抜くように、戦士の如く歌い上げる。かと思いきや「ラピスラズリ」では流浪の旅人、「翼」では大空を飛ぶ鷲のように、歌ごとにイメージを変えて魅了してくる。まるで、自分の檻を打ち破って自由を獲得してきた過程を見せていくかのようだ。1曲ごとにアンロックされたエネルギーに「シンシアの光」で導火線に火をつける。間髪入れずに「INNOCENCE」へ。ステージ上を駆け回り、武道館の上から下までをアジテートし、会場全体を沸点へと導いていく。「もっとつなげていきましょー!」の一声から「ツナガルオモイ」。ステージと会場の想いが一線で繋がり、歓喜が最大風速で吹き荒れた。