小田和正、aiko、ENDRECHERI、KIRINJI、アイルネ……各作品から感じる“エバーグリーン”な魅力

 小田和正、aikoのニューシングルから、J-POPカバーを続けてきたアイドルネッサンスのベスト盤まで、様々な世代による新作を紹介。エバーグリーンな佇まいを備えた楽曲、そこに込められた音楽的意図やメッセージを感じ取ってほしい。

小田和正『この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景』

 小田和正のニューシングル、『この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景』。クラシカルなピアノを軸にしたミディアムバラード「この道を」、軽快なメロディと華やかなストリングスが朝の日差しを想起させる「会いに行く」、ノスタルジックな旋律とともに切なくも愛おしい青春時代を振り返る「坂道を上って」、<きっと僕は 君の心の/小さな風景に 気付かなかったんだ>というラインが心の琴線を揺らす「小さな風景」に共通しているのは、すべての音、すべての言葉に一切の無駄がないということ。年齢、性別、音楽の好みを問わず、リスナーの個人的な記憶や感情を呼び起こし、忘れていた何かを取り戻させてくれるーー小田和正の普遍的な魅力は、楽曲を構成するすべての要素を精査、研磨し続ける冷徹なスタンスによって担保されているのだと改めて気付かされる。

aiko『ストロー』

 1曲のなかで<君にいいことがあるように>と10回繰り返す表題曲「ストロー」は、切なさ、爽やかさ、愛おしさが入り混じる“これぞaiko!”なポップチューン。この曲に関して彼女は「『小さいけどなんか前向きになれる嬉しい事が好きな人にたくさん起こったらいいな』と思って作りました」とコメントしているが、その根底には“明日も好きな人と一緒にいられるとは限らない。だから、せめて今日はいい日であってほしい”という切なる願いが込められている。この無常観は、aikoの表現の源泉であり、彼女の楽曲が強く支持され続ける理由につながっていると思う。独特のブルーノート感を軸にしたaikoらしさをきちんと保ちつつ、ハッと耳を引かれるフレーズを随所に詰め込んだOSTER projectのアレンジも冴え渡っている。

aiko『ストロー』music video short version

 KinKi Kidsの堂本剛のソロプロジェクト・ENDRECHERIの新作『HYBRID FUNK』。山下達郎がギタリストとして参加した「HYBRID ALIEN」、トライバルなビートを軸にした「END RE CHERI」、Sly & The Family Stone直系のアッパーチューン「MusiClimber」、80年代のブラックミュージックを想起させる「YOUR MOTHER SHIP」、華やかなパーティムードに満ちた誕生日ソング「おめでTU」、日本的な抒情性と濃密なソウルネスが溶け合うバラードナンバー「シンジルとウラギル」など、多彩な歌詞の内容、さまざまな音楽要素を取り入れたサウンドメイクを含め、まさにハイブリッドなファンクアルバムに仕上がっている。“鋭利なアナログサウンド”と呼びたくなる音像も印象的だ。

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