楠田亜衣奈×こだまさおり 1stシングル『ハッピーシンキング!』リリース特別対談
楠田亜衣奈×こだまさおりが語り合う、以心伝心から生まれる作詞術
楠田亜衣奈が、シングル『ハッピーシンキング!』を4月25日にリリースした。
本作の表題曲は楠田も出演するイラストアニメーションムービー『レディスポ』(TOKYO MX)のテーマソング。こだまさおりが手がけるリリック、山崎真吾によるメロディとアレンジともに、アニメの内容に寄り添うかのように、底抜けにブライトで少しストレンジな、楠田曰く「王道のようで王道じゃない/王道じゃないけど王道」な仕上がりになっている。
なお「ハッピーシンキング!」は2015年にソロアーティストデビューを果たした楠田が満を持して放つ第1弾シングルとなる。今回リアルサウンドでは、このシングルリリースを記念して、楠田と作詞家・こだまの対談をブッキング。自らも作詞する楠田の考えるこだまリリックの魅力や、こだまの思うボーカリスト楠田亜衣奈像はもちろん、これまでアルバムを作り続けてきた楠田が今シングルをリリースする意味など、幅広い話題について大いに語ってもらった。(成松哲)
楠田「こだまさんはエスパーなんです!」
ーーこだまさんが楠田さんに詞を提供するのは今回の「ハッピーシンキング!」が初めてではない。ソロデビューミニアルバム『First Sweet Wave』(2015年)の表題曲の作詞を担当なさってます。
楠田亜衣奈(以下、楠田):デビュー以来ずっと書いていただいてます。
ーーですよね。初のフルアルバム『Next Brilliant Wave』(2016年)では収録全曲の作詞をなさっていて、次のフルアルバム『カレンダーのコイビト』(2017年)でも14曲中11曲の詞を手がけている。楠田さんの考える“こだまさおりリリック”の魅力ってズバリなんなんでしょう?
楠田:私にとってこだまさんはエスパーなんです!
ーーエスパー?
楠田:はい。1stミニアルバムを作るときにはまだお会いしたことがなかったのに、こだまさんから届いたのはまさに「私の気持ちを書いてくれてる!」っていう歌詞だったんです。すごくすんなり受け入れられるんだけど、私の中から出てくるボキャブラリーには絶対にない言葉が入っている。それで「私には書けない私の気持ちを書いてくれている」「これこれ!」って驚いて。なのでそれ以来、CD制作のお話が持ち上がると必ず「歌詞はこだまさんにお願いしたいです」ってお話をさせていただいてます。
こだまさおり(以下、こだま):面と向かってなんてうれしいことを……(笑)。
楠田;とんでもないとんでもない。スタッフさんもみんな「こだまさんの歌詞はくっすん(楠田の愛称)に合ってるよね」って、満場一致って感じで言ってますし。
こだま:ありがとうございます!
ーーただ、こだまさんは残念ながらエスパーではないですよね?
こだま:ではないですね(笑)。
ーーでも、面識のなかった楠田さんの気持ちをドンピシャで言い当てられた。
こだま:なんでなんでしょうね(笑)。「First Sweet Wave」は1枚目のCDのタイトル曲だから楠田さんとファンの方のこれからに向けて、「これからみんなで楽しいことしようね」というメッセージを込めたいなとは思ったんですけど……。
楠田:でも私も本当にそういう気持ちでいましたから。
ーー「ソロアーティストデビュー」というものの捉え方が図らずも通底していた、と。実際に対面したのはいつ頃なんですか?
こだま:そのあとのライブ(2015年11月7、8日『First Sweet Wave』)ですよね。
楠田:そうですね。ただそのときはご挨拶させていただく程度で、“お仕事”として会ったのは、こだまさんが作詞なさったキャラクターソングのレコーディングのときだったり、今回の「ハッピーシンキング!」のレコーディングのときだったり。そのときくらいですよね、ちょっと長くおしゃべりしたのって。
こだま:半日くらいご一緒したのは「ハッピーシンキング!」のレコーディングのときだけですね。
楠田:だから、こだまさんはいまだに私にとってエスパーなんです(笑)。
ーーデビューから足かけ3年、ほとんど同席することはないのに楠田さん好みの歌詞を書き続けている、ということ?
楠田:そうですそうです。
ーーたとえば『カレンダーのコイビト』のこだまさん作詞曲というと、ロールキャベツのレシピを歌った異色の「ロールロールロール!」や、王道クリスマスソング「クリスマスキャロルの街角で」とバラエティに富みまくってますけど、いずれも楠田さんの注文通りのリリックだった?
楠田:私、「きっとこだまさん困ってるだろうなあ」と思うくらいざっくりとしたテーマしかお渡ししてないのに、本当に素敵な歌詞をいただけたなって思ってます。「ロールロールロール!」であれば、最初にお話させていただいたのは「私、料理を作りたいです」「得意料理はロールキャベツです」っていうことだけですし(笑)。
ーー謙遜かと思ったら、ホントにざっくりしてた(笑)。
楠田:「私、プロフィール上では『得意料理:ロールキャベツ』っていう体になっているので、それでお願いします!」って言ってみただけですから(笑)。しかもその後、ロールキャベツってそんなに難しくないというか、歌詞にするにはレシピが短すぎることに気づきまして……。
こだま:なので「トマト味ですか? コンソメ味ですか?」って質問させていただきました(笑)。
ーーまさに“ベース”からしっかり歌詞を組み上げよう、と(笑)。
楠田:なのに私は「いつも普通にレシピどおり、コンソメ味のロールキャベツを作ってます」という、ほとんど丸投げみたいなお返事をしてしまい……。
こだま:そして私は「わかりました!」と(笑)。
楠田:そうしたら本当に面白いし、でもかわいらしい歌詞ができあがってました(笑)。
ーーそれは確かにエスパーだからなせる業ですね。
楠田:そうなんですよ! そして今回の「ハッピーシンキング!」では、ついに私からはなにもオーダーをしていないという。本当にタイアップしているイラストアニメーションムービー(『レディスポ』)の企画書とデモテープをスタッフさん経由でこだまさんに送っていただいただけなんですけど、またも素晴らしい歌詞が“できあがってました”(笑)。
こだま:あはははは(笑)。
楠田:一応、あれこれ注文しすぎると、むしろこだまさんを困らせてしまったり、歌詞の世界をこじんまりとさせてしまったりするかもしれないし、それなら楽しく書いていただいたほうが私も楽しく自由に歌えるかな? という目論見もあったんですが、とはいえ本当にガッツリお任せしてしまって(笑)。
こだま:でも楽しかったですよ。レーベルの方からは「楽しい曲調なんで、歌詞も楽しい感じで」とだけ伺っていて、しかも『レディスポ』が「宇宙戦争が終わったあと、平和が訪れた世界での平和な戦い」みたいなストーリーだったから「これは楠田さんが愛と平和の親善大使になって宇宙を守っちゃえばいいんじゃない?」と思いつつ、すごく壮大なことをスキップしながら言っちゃう歌詞を作らせていただきました(笑)。