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太陽とシスコムーンはハロプロ音楽の“原点”だった? 『ひなフェス』での再結成を機に検証する

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 毎春恒例のハロー!プロジェクトのライブイベント『Hello! Project ひなフェス 2018』が3月31日・4月1日の2日間、パシフィコ横浜 展示ホールA/Bにて開催される。モーニング娘。’18を始めとした全ハロプログループが一堂に会するほか、ゲストも豪華だ。

 1日目の昼公演は『Hello! Project 20th Anniversary!!プレミアム』と銘打たれており、モーニング娘。1期メンバーの中澤裕子・飯田圭織・安倍なつみ・石黒彩・福田明日香、太陽とシスコムーンの信田美帆・稲葉貴子・小湊美和(オリジナルメンバーのRuRuは欠席)がゲスト出演する。同日の夜公演は『モーニング娘。20th Anniversary!!プレミアム』という名称で、モーニング娘。OGメンバーの矢口真里・吉澤ひとみ・高橋愛・藤本美貴・道重さゆみ・田中れいなの6名が登場する。

 娘。OGメンバーと現メンバーが同じステージ上で共演するということになり、どんなパフォーマンスが繰り広げられるのか今から楽しみだが、本記事ではそちらではなく、太陽とシスコムーンのほうに注目してみたい。

太陽とシスコムーンのベストアルバム『太陽とシスコムーン/T&Cボンバー メガベスト』(zetima)

 1999年2月に結成された太陽とシスコムーンは、モーニング娘。と同じく『ASAYAN』(テレビ東京系)から生まれたグループ。元オリンピック体操選手の信田美帆・元大阪パフォーマンスドールの稲葉貴子・中国遼寧省出身のRuRu・民謡小湊流家元の小湊美和という、異色の経歴を持つ4人が集まった女性ボーカルグループだ。つんく♂プロデュースによる楽曲は黒人音楽/クラブミュージック要素をふんだんに盛り込んだ高クオリティのJ-POPで、2000年10月の解散までに数々の名曲を残した。

 わずか1年8カ月という短い活動期間ではあったが、その影響は現在のハロプロの中にもところどころに見え隠れしている。ハロプロに受け継がれた太シスの遺伝子について検証してみよう。

楽曲中でのアクロバット披露

 ソウル五輪への出場経験もある信田美帆。太シスのシングル曲「宇宙でLa Ta Ta」では、間奏でバク転や側宙などのアクロバットを披露するのが恒例だった。ちなみに同曲は、今年1月放送の『SWITCHインタビュー 達人達(たち)』(NHK Eテレ)でのつんく♂×マツコ・デラックス対談において、マツコがフェイバリットとして挙げたことにより注目度が上がっている楽曲でもある。

 近年のハロプロ楽曲だと、モーニング娘。’17「弩級のゴーサイン」の振り付けにアクロバットが取り入れられている。そもそもメンバーの生田衣梨奈は2011年の加入当初から特技としてハンドスプリングを挙げており、以降もライブなどの場で披露し続けてきた。2016年5月の鈴木香音卒業コンサート@日本武道館での4連続バク転は名場面だった。

 実は信田は、数年前から現ハロプロメンバーのアクロバット指導をしている。YouTube番組『GREEN ROOM』では2015年夏ハロコン、『ハロ!ステ』では娘。’16春ツアーのリハーサル映像がアップされており、コーチとしての信田の姿が確認できる。

『GREEN ROOM #15』Hello! Project 2015 SUMMER 〜CHALLENGER〜 アクロバット+ダンスコーナー リハーサル編(43:24〜)
『ハロ!ステ #162』モーニング娘。’16アクロバット練習(38:59〜)

 

歌詞に日本語以外の言語を導入

 「宇宙でLa Ta Ta」の冒頭では、RuRuによる中国語の語りパートが設けられている。太シスの他の楽曲では、アルバム『TAIYO & CISCOMOON 1』収録の「Be Cool Down」のコーラス部分や、「Interlude 3 〜我想你〜」にてRuRuの中国語が聴ける。

 ハロプロ楽曲における日本語以外の歌唱といえば、モーニング娘。8期留学生メンバーのジュンジュンとリンリンがいた時代のものがまず思い出される。2009年発売のアルバム『プラチナ 9 DISC』収録の「雨の降らない星では愛せないだろう?」は地球規模のスケールを持つバラードソングで、曲終盤のジュンジュン&リンリンによる中国語歌唱パートが一際盛り上がる。次作アルバム『⑩ MY ME』では同曲の全編中国語バージョンもレコーディングされた。

 同時期の2008年、台湾の現地メンバーで結成されたハロプログループとしてアイスクリー娘。がいる(デビューは2009年)。唯一のミニアルバム『1st最高!』で聴けるオリジナル曲「デビュー! 〜恋する角には福来る〜」は、中国語Ver.と日本語Ver.の両方が収録されていた。同盤には他にも「モーニングコーヒー」「恋愛レボリューション21」などのモーニング娘。曲の中国語カバーVer.を収録。

 モーニング娘。’15のシングル曲「One and Only」は、全世界向け音楽番組『J-MELO』(NHKワールドTV他)のエンディングテーマとして作られた、全編英語詞の楽曲。帰国子女で英会話に長けているメンバー野中美希が活躍した一曲でもある。

 こういったワールドワイドな歌詞の先駆けとなったのが、太シス時代のRuRuの活動だったと考えることもできるだろう。

モーニング娘。’15「One and Only」

 

カバーされ続ける太シス楽曲

 太シスのシングル全8曲のうち、5曲は他のハロプログループによってカバーリリースされている。

 まずは2003年、ZYXのデビューシングル『行くZYX! FLY HIGH』のc/wで「ガタメキラ (ZYX Ver.)」としてカバー。カントリー娘。に紺野と藤本 (モーニング娘。)も、シングル『先輩 ~LOVE AGAIN~』『シャイニング 愛しき貴方』それぞれのカップリング曲において、「丸い太陽 (2003 Ver.)」「DON’T STOP 恋愛中 (2004 Version)」としてカバーしている。

 松浦亜弥の2004年シングル『奇跡の香りダンス。』のカップリング曲では「宇宙でLa Ta Ta」をカバー。これは元メンバーの稲葉とのデュエットによる「松浦亜弥 with 稲葉貴子」名義での歌唱だった。

 Juice=Juiceの1stアルバム『First Squeeze!』では過去のハロプロ楽曲を6曲カバーしており、そのうちのひとつとして「Magic of Love (J=J 2015 Ver.)」が取り上げられている。同カバーはJ=Jのライブに欠かせない定番曲だ。

 この他、Berryz工房が2015年の活動停止時にリリースしたベストアルバム『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』には、レアトラックとして「丸い太陽 (Unreleased Cover Ver.)」が収録された。清水佐紀・夏焼雅・熊井友理奈・菅谷梨沙子の4人歌唱によるこのカバーは、以前にレコーディングされたがお蔵入りになっていた音源だ。

 シングル曲以外のケースもあって、℃-uteの2006年デビューアルバム『キューティークイーン VOL.1』収録の「ENDLESS LOVE 〜I Love You More〜」「YES! しあわせ」の2曲は、太シスのアルバム曲のカバーである。

 太シス楽曲がこれだけカバーされる機会が多いということは、それだけ完成度が高かったことの証左といえるだろう。ハロプロ初期を彩った楽曲たちが時を経て再度輝きを放つ様は感動的ですらある。

太シスはハロプロ音楽の原点だった?

 その他、細かい点を列挙していくと、RuRuが1999年に日本国籍を取得した際に芸名を「本多ルル」に改名したのだが、その名付け親はつんく♂だった。これはハロプロエッグ1期メンバーだったストューカス・ロビン・翔子が2006年にTHE ポッシボー(現チャオ ベッラ チンクエッティ)に加入した際、「岡田ロビン翔子」とつんく♂に芸名を名付けられたケースの先駆けである。

 太陽とシスコムーンは、活動後期にグループ名を「T&Cボンバー」に突如改名したことがあった。ハロプロでグループ改名といえば、スマイレージ→アンジュルムへの変更が思い出される。厳密にはハロプロ外だが、THE ポッシボー→チャオ ベッラ チンクエッティというケースもある。

 2000年のシャッフルユニット企画の一曲である青色7「青いスポーツカーの男」では、メンバーに選抜された小湊のこぶしを効かせた民謡風歌唱が、デジタル・パンク的な曲調の中に挿入された一節がある。こぶしファクトリーの2016年シングル曲「桜ナイトフィーバー」での、メンバー井上玲音が演歌風に歌うパートを聴いて「青い〜」を連想した古参ファンはどれだけいるだろうか……。

 こういった細かい部分はさておくにしても、太シスが後のハロプロへ与えた影響は決して少なくないのではなかろうか。前述の『SWITCHインタビュー 達人達(たち)』の番組中、マツコがつんく♂へ「太シス活動時の心境」を訊ねた際、こう返答している。

「太陽とシスコムーンは、本当に俺がどこまで勝負できるか、それを考えたの。シャ乱Qってバンドだったので、俺のしたいことだけでなくメンバーの好みも入ってなんとなく薄まって世の中に出てたので。まあ、そういう葛藤もあってヒットに繋がったのはあるとして それはそれで その時期を経験した俺が次の時代でどんな音楽を作れるか。本当の音楽評論家たちが認めるような音楽を作れるかみたいに葛藤してた時期なの」

 これは太シスだけではなく、その後のハロプロ全体へとつながっていく信条でもあるはずだ。その入り口が太シスで、同時期のモーニング娘。やタンポポへもフィードバックしていったということなのだろう。

 これまで太陽とシスコムーンは、2009年に10周年記念ライブ、2013年にハロプロカウントダウンライブへのゲスト出演と、何度か再結成の機会を得ている。今回のひなフェスでまた久々にライブを観ることができるわけだが、はたしてどんなステージを披露してくれるのか。本記事の検証部分からいくつか予想できそうなコラボレーションも期待できるが、まずはハロプロ音楽が持つ「こだわり」の原点ともいえる太シスのオリジナル楽曲たちを楽しみたい。

ピロスエ
編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主催。

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