『ワルキューレは裏切らない』レポート
ワルキューレは決して期待を“裏切らない” 3rdライブで見せた『マクロス』シリーズの伝統
TVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』から生まれた戦術音楽ユニット・ワルキューレの3rd ライブ『ワルキューレは裏切らない』が、2月24日、25日に神奈川・横浜アリーナで行われた。
アニメの声優および歌唱パートを担当する歌手が実際に同ユニット名義で作品リリースやライブ活動を行い、2016年4月のTVアニメ放送開始と同時に大きな反響を巻き起こした彼女たち。アニメ放送終了後の2017年も横浜アリーナでの2ndライブを成功させ、音楽フェス『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』に出演するなど、ワルキューレ旋風が止むことはなかった。そして2018年、彼女たちは現在公開中の映画『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』と、その挿入歌を収めたニューシングル『ワルキューレは裏切らない』を携えて横アリに帰ってきたのだ。そう、ワルキューレはファンの期待を決して裏切らないことを実証するために。
今回の公演でとりわけ特徴的だったのが、『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』を中心にアニメ作品とのシンクロを意識した演出だろう。ここで『マクロスΔ』という作品世界におけるワルキューレについて説明すると、彼女たちはヴァールシンドロームと呼ばれる謎の奇病を歌の力で鎮静・予防することができる戦術音楽ユニットという存在。一方で敵対するウィンダミア王国には、そのヴァール発症者を操ることのできる“風の歌い手”ハインツ王子がおり、アニメ内ではその両陣営による争いが描かれる。
それらの設定を踏まえた上で展開されたのが今回のライブだ(筆者が観覧したのは25日の公演)。開演と同時にどこからともなく流れてきたのは、ハインツ王子が劇中で歌っていた「風の歌」。聴き手のヴァール化を促すその歌声に反応するかのように、会場にはスクランブルのブザーが鳴り響き、ステージ後方の巨大スクリーンには、ワルキューレのメンバーがバルキリーに乗って出撃する3DCGアニメーション映像が映し出される。そして5人の<Welcome to Walküre World♪>というハーモニーが会場の熱気を高めると、ステージを覆ったスモークが一気に晴れ、颯爽と並んだ5人が登場。アニメ第1話の挿入歌でもあった「恋!ハレイション THE WAR」で華々しく幕を開けるという演出は、アニメの登場シーンさながらの興奮が味わえるものだった。
ワルキューレのメンバーは、美雲ΔJUNNA、フレイアΔ鈴木みのり、カナメΔ安野希世乃、レイナΔ東山奈央、マキナΔ西田望見といったように、アニメ内の役名と演者の名前が並べて表記されるのだが、これは彼女たちがあくまでもアニメのワルキューレありきで活動を行っていることを象徴した表記だろう。実際に今回のライブでは、アンコールを除く本編のMCはすべてメンバー各自がキャラクターになりきって演じる形で行われ、“5人が歌を届けることによって会場のヴァール発生危険率を下げる”という目的のもとステージは進行していった。
そういったアニメとのシンクロをさらに強調したのが、3曲目に歌われた「チェンジ!!!!!」だ。『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』の劇中歌で今回がライブ初披露となるこの新曲において、彼女たちはなんと劇場版のライブシーンを忠実に再現したパフォーマンスを披露。立ち位置を次々と入れ替える複雑なフォーメーションと、ハイタッチなどを取り入れた5人の絆を感じさせる振り付け、歌の主線とコーラスが入り乱れてスイッチしていく高難度なボーカルワークを、映画さながらのクオリティで見事にやりきってみせた。そういう細かな作品愛の積み重ねがライブへの没入感を高めているところは、アニメ発のコンテンツならではの魅力だろう。
ステージに神秘的な星空が投影されるなかでフレイアΔ鈴木みのりと美雲ΔJUNNAがエモーショナルに歌い継いだ「風は予告なく吹く」を挿み、次の「NEO STREAM」では5人がそれぞれトロッコに乗ってステージを飛び出して客席へ。こういったアクティブな見せ方も、戦場を飛び交いながら歌を届けるアニメのワルキューレを思い起こさせるものだ。さらに言うと、この日のライブはバンドマスターの西脇辰弥(キーボード、ハーモニカ)を筆頭に、佐野康夫(ドラムス)、BOH(ベース)、外園一馬(ギター)という腕利きのプレイヤーが演奏でサポートしていたが、彼らはステージ端のあまり目立たぬ場所に陣取っており、アニメと同様になるべく演奏者を意識させないような気配りがなされていたようにも思う。