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『5th ANNIVERSARY SILENT SIREN LIVE TOUR 2017『新世界』』日本武道館公演

SILENT SIRENが“軌跡”をたどって起こした“奇跡” 『新世界』ツアー日本武道館公演

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 SILENT SIRENの過去最大規模となった全国ツアー『5th ANNIVERSARY SILENT SIREN LIVE TOUR 2017『新世界』』が11月13日、14日の日本武道館2daysをもって終幕した。

 6月よりスタートした本ツアー。キラキラしていて、ポップで、キュートなガールズバンドーー。そんなパブリックイメージの奥底に秘めた飽くなき音楽探求、貪欲さ、野心……、ロックバンドとしての本懐が見えたツアーだった。ライブハウスを中心とした前半。それから『SUMMER SONIC』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』など夏フェスへの出演、自ら主催する『サイサイフェス』、海外ツアーで得た手応えを持ち込んだホール中心の後半。オールタイムベストでもあり、いつになくライブ映えする楽曲が集められたセットリストに彼女たちの“攻め”の姿勢が伺えたし、ライブを重ねるごとに細かい変更、調整などがなされ、万全の構えで武道館2daysを迎えた。

 2日目の11月14日。2012年のメジャーデビューからちょうど5年の日である。前日ラストに演奏された「フジヤマディスコ」ではじまった。そのとき、“奇跡”は起きた。SILENT SIREN、6年目への突入の瞬間であった。

 「“軌跡”をたどって“奇跡”を起こすーー」まさにそんな言葉が相応しい2日間であった。「~軌跡~」と「~奇跡~」、それぞれ掲げられたタイトルが表すようにこの2日間は異なる内容だった。

 2015年1月、初となる武道館公演に向けて書かれた楽曲「KAKUMEI」ではじまった1日目「~軌跡~」。それを受けて、アンコールを求める声は会場目一杯に響いた「KAKUMEI」の大合唱だった。この日のためだけのライブが展開され、この日だけの景色を確かに見ることができた。しかし、終わって感じたことは「もっとやれるのではないだろうか」という気持ちだった。演奏も歌もセットリストも、悪いところなどなかった。むしろ、ここ最近の攻めの姿勢がよく出ていた良い演奏だった。ただ、前回の武道館や2度の東京体育館、横浜アリーナ……、といった節目の大舞台を観た後に感じることができたような充実感は得られなかった、というのが正直なところだ。

 そうした複雑な心境もある中、迎えた2日目「~奇跡~」。客電が落ち、SEとナレーションが響く。「サイレントサイレン号は出航5年目の真っ最中ーー」巨大な帆船を模したステージに4人のシルエットが映し出される。昨日と同じオープニングだ。それぞれの配置についた4人が、解き放たれる閃光と共に己の存在を知らしめるかのごとく、一斉に音を鳴らした。

ゆかるん

 放たれた音は明らかに昨日と違っていた。そう思ったのも束の間、小気味なカッティングギターが場を制すと、「フジヤマディスコ!!」の大号令とともに会場の空気を一気に掌握した。サウンドと出音、なにより4人から発せられる気迫が凄まじい。どこかもの足りなさを感じてしまった昨日の印象は、このオープニングの一瞬で払拭されてしまった。

 「吉田さん」「BANG!BANG!BANG!」とアッパーチューンを畳み掛ける。いや、畳み掛けると言うより悠々とライブを楽しんでいる、という表現のほうが正しいだろう。その4人に全力で乗っかっていくピンク色に染まった客席のサイサイファミリー。「この景色が見たかったんだ」と、心の底からそう思った。

 巨大帆船の真っ赤な甲板には上手より、ゆかるん(Key)、すぅ(Vo&Gt)、ひなんちゅ(Dr)、あいにゃん(Ba)が横一列に並ぶ。それはフラットな4人の関係性を表すと同時に、誰でも主役になれる強さを持っているという自信の表れでもあるのだ。4人を乗せた船は前方へと動き出し、客席に迫っていく。突き抜けるような「爽快ロック」、最後の一音を叩き終えたひなんちゅのスティックが大きく弧を描きながら宙に舞った。

 子供から大人まで、さらには安田大サーカス・クロちゃんも混じっての“あわあわダンサーズ”に場内が沸いた「あわあわ」。皆が思いっきりタオルを振り回した「ぐるぐるワンダーランド」。両曲ともキャッチーなメロディにポップな歌詞という可愛らしい印象を持つ楽曲だが、前曲はミディアムテンポでずっしりとしたリズムのUSオルタナティブロックナンバーであるし、「ぐるぐるワンダーランド」は予期せぬ楽曲展開が詰め込まれた怪曲ですらあるように思う。だが、そう感じさせないのは、すぅの表情豊かな明るい歌声と、譜割りにとらわれず言葉遊びを放り込んでくる彼女の作家性だろう。

ひなんちゅ

 1日目、ひなんちゅが出会って間もない頃のすぅの印象を「すげぇサイコパスだなって。柔らかい物腰なのに考えていることが深い」と評していた。二人が同じ雑誌で読者モデルをしていた時代、ありえない勘違いをするすぅの姿を見て「すごく素朴な子」であると思ったという。しかし、バンドを組んで彼女がはじめて書いた詞は、周りの動きに取り残された自分を問い、〈目に映るもの全て偽りなの?ねぇ、教えて!〉と痛切に叫ぶ「チラナイハナ」だった。

 インディーズ時代のSILENT SIRENは、マイナー調のメロディにどこか内向的な詞をのせたクールなロックナンバーが多かった。ガーリーでカラフルなポップロックチューンが増えたのはメジャーデビュー以降のことである。ただ、そこにいわゆる外部プロデューサーの関わりや外部提供曲などはない。元メンバーであるサウンドプロデューサーのクボナオキとメンバーによる制作スタイルは結成当初から現在に至るまで変わっていない。

すぅ

 「バンド始めた頃は17歳とかだったんだけど、“あれやだ、これやだ、こっちがいい”って、本当に小生意気で」ひなんちゅの話を受けてか、ライブ終盤にすぅが語りだした。関わってくれる人たちが増えるぶん、自分のわがままだけで音楽はできないと思ったこと、みんなの意見を取り入れながらサイサイらしさを作ろうとやってきたこと、良い意味で丸くなったこと……。そして、本ツアーの裏テーマが「初心に戻る」ことだと明かした。「あの頃の尖っている自分たちに戻ってもいいんじゃないかと。……だって、バンドマンだもんっ!!」満面の笑顔でそう高らかに叫んだすぅの姿はたまらなくカッコよかった。

 はじめて4人だけで演奏した「チラナイハナ」は紛れもなく1日目のハイライトだった。2015年の武道館公演ではクボナオキをステージに迎えて5人で演奏した。あの頃はライブサポートギタリストの“みっちー”(michirurondo)がいた。その後、2015年末からのSILENT SIRENは、大きく変化する。

あいにゃん

 正真正銘4人だけでライブを行うようになった彼女たちは、強靭なバンドアンサンブルを見せるようになった。張りとしなやかさを兼ね備えたひなんちゅのドラムと、大きくうねりを上げながら突き抜けるあいにゃんのグルーヴを土台に、巧妙に組み立てられるリズムアレンジは今やバンドの大きな武器だ。めまぐるしい展開と転調を繰り返す「milk boy」、移籍という節目に新たな可能性を見出したディスコナンバー「フジヤマディスコ」しかり。スリリングなリズム運びで一気に引き込んでいく「八月の夜」は、今回新たな導入部が付け加えられ、これまでとは少し違う躍動美で魅了した。

 そうした武器をさらに研ぎ澄まし、ふんだんに装備させたのが最新シングル「ジャストミート」だろう。王道サイサイ節ともいえる曲調だが、サウンドとアレンジに新しい息吹を感じる。手グセで弾かないリフ、歌いながら弾くことが難しそうなギターのバッキング、メリハリを効かせたリズムが楽曲のキャッチーさをさらに色濃くする。同曲ではじまった2日目のラストスパートの流れで、彼女たちのロックバンドとしての生き様を魅せた。

 万華鏡さながらの色彩が映し出された「Kaleidoscope」は、そんな絶妙なアンサンブルとインディーズ時代を思い出すようなクールな側面がドラマチックに絡み合う、現在のSILENT SIRENだからこそ生まれた楽曲であると思う。かと思えば、「DanceMusiQ」は彼女たちのコメディセンスが炸裂しながらなだれ込む。そして、あたかもデジタルビートであるかのような加速を見せていく。「チェリボム」が放つ、目映いくらいのハッピーオーラはこの4人でないと絶対に生まれないものだ。カッコよさと可愛さ、そして面白さを振りまきながら、観るもの聴くものを巻き込んでいく楽しさ。この日のひなんちゅの言葉を借りれば、「サイサイのライブはみんな一緒に楽しむエンターテインメントスポット」なのだ。

      

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