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裏方に徹さず表に出る場所を作るべき? Void_Chords 高橋諒と考える“音楽作家の在り方”

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 NEWSやBOYS AND MEN、Mrs. GREEN APPLEらの楽曲を手掛けるなど、音楽作家として活躍する高橋諒が、自身のプロジェクト・Void_Chordsを結成。第一弾作品として、MARUをボーカリストに迎え、アニメ『プリンセス・プリンシパル』のオープニングテーマを表題曲に据えたシングル『The Other Side of the Wall』をリリースした。リアルサウンドでは高橋にインタビューを行ない、彼が音楽作家を志した理由や自身の作る楽曲の特徴、プロジェクトを立ち上げたきっかけや、今期音楽作家として引っ張りだこの現状まで、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「『どこか暗くなってしまう』のがコンプレックスであり武器」

ーー高橋さんは元々、NEWSや下野紘さんなどの楽曲を手掛けるクリエイターというイメージだったのですが、最近は『装神少女まとい』や『ACCA13区監察課』、今期に関しては『天使の3P!』のオープニングテーマ、『ようこそ実力至上主義の教室へ』の劇伴、そして今回リリースした『プリンセス・プリンシパル』のオープニング&エンディングと、アニメ方面での大活躍が目立ちます。これだけ多岐に渡って色んなものを手掛けているので、そもそも高橋諒という音楽家を作り上げた要素が何なのかが気になるのですが。

高橋諒(以下、高橋):音楽を聴き始めたころから色んなものが好きで、一つの音楽のスタイルにハマることがなくて。だからこそ、色んなスタイルに興味があって、勉強もしていたんです。その知識や好奇心が活かせるということもあって、アレンジャーとして活動していくことになりました。

ーー元々バンドマンだったわけですが、どうして音楽作家への転身を?

高橋:バンド時代はバンドの曲だけを書いていましたが、自分の作る曲のジャンルが異なりすぎて、アーティスト性が定まらないというのがネックで。解散した後は、自分の音楽的欲求を「色んな人に歌ってもらえばいいんだ!」と思うようになり、作曲家・編曲家として活動し始めました。

ーー改めてこれまで作った楽曲も掘り下げさせていただいたんですけど、まさにそんな感じで……どれが高橋さんの核なのか分からないというか。そんななかで『ACCA13区監察課』の主題歌を手掛けたONE III NOTES(高橋、Foggy-D、PONによるユニット)やVoid_Chordsの楽曲を聴くと、ダーティーな音像が共通しているように感じました。これは作品に寄せたテイストなのか、それとも高橋さんの名前を表に出すものとして、ようやく我を前面に打ち出したということなのでしょうか。

高橋:両方ですね。僕自身、作る音楽がキラキラしきれないというか、どこか暗くなってしまうというところがコンプレックスでもあり、武器にしていきたいという部分なので。ずっとJ-POPのお仕事をしてきたなかで、大衆性を意識すると「どこまでキラキラさせられるか」が大事になってくるんです。けど、自分はどう意識しても影が付いてしまうという気負いがあって。方法論で解決できるものなのかと悩みつつ、出すべき所に自分の名前で、それを増幅させて押し出してしまえば、何か変わるんじゃないかと思ったんです。

ーーその影の部分は、どのあたりの音楽ジャンルが強く影響しているのでしょう?

高橋:マニアックな音楽が好きだからどうこうとか、ジャンルがどうこうというわけではないような気がします。人間性というか。一つだけ言えるのは、ノイズ・ミュージックやミュージック・コンクレートが大好きだったんですけど、友だちと話が出来なくて暗くなっちゃったというエピソードくらいですかね(笑)。

ーークリエイターとしてのあり方を変えていこうと思ったきっかけは?

高橋:徐々になんですけど、色んなことをやってみたいという音楽的欲求が高まってきていて。それを自分の作家仕事の中で整理するだけでは収まりきらなくなってきたんです。アレンジャーとしてそのアイデアにハマる依頼が来た時に、溜めていたものを使う、という感じだったんですけど、自分で初めて「ここはこうする」というチャンネルを作ったほうが、引き出しや音楽的好奇心を整理するツールにもなるのかなと考えました。

ーーONE III NOTESはユニットとして活動していましたが、今回のVoid_Chordsは高橋さんによるソロプロジェクトなんですよね。今回歌唱を担当したMARUさんはあくまでゲストボーカルで、曲に応じて歌い手を変えていく、高橋さんのやりたい音楽を表現するものと捉えてもよいのでしょうか。

高橋:そうですね。音楽家として色んなチャンネルがあるなかで、核になっていくものがあると、自分のスタイルもクリアになっていくんじゃないかなと思っていたんです。で、今回『プリンセス・プリンシパル』のお話をいただいて、まさにその世界観と自分の表現したい音楽がリンクしていたので、タイミングが良かったんですよ。

ーー自分自身を見つめ直した時期と、依頼のタイミングがマッチしたと。それはやはり『ACCA13区監察課』でオープニング、エンディング、劇伴とトータルで手がけたことが大きかった?

高橋:そこがまさに転換点ですね。作品世界全体をトータルで担当させていただくにあたって、全部が自分の音楽で、劇伴作家として、アーティストとしてというチャンネルを明確に分けていたなかで気付いたところでもあります。

ーーそれぞれのチャンネルを1つの作品で切り替えることは大変でしたか。

高橋:いえ、僕の中ではすごくシームレスで。方法論は変わってくるんですけど、作り手としてのスタンスは変わっていなくて。向き合っているアニメの世界は一つで、そこに合わせて切り替えているだけなので、むしろ作品世界の枠組みを用意していただいたぶん、やりやすさすら感じています。改めてアニメと自分の相性がいいんだなと思わされました。

ーー『プリンセス・プリンシパル』のコンセプトは「スパイ」「スチームパンク」「女子高生」。劇伴は梶浦由記さんによるクールなサウンドで、オープニングの「The Other Side of the Wall」はその世界観をしっかり拡張するようなMARUさんの力強いボーカルが特徴的です。楽曲はThe Prodigyに近いビート感と、ラウドロック・ジャズの要素が混ざったキメラ的なサウンドが面白いです。冒頭のシャウトも「Omen」っぽかったり。

高橋:まさに、The Prodigyです(笑)。最初に「スパイ」「スチームパンク」「SF」というテーマをいただいたときに、「スパイ」に関してはジャズを取り入れるべきだけど、ほかのテーマは音楽スタイルが限定されないなと思ったんです。どれもニュアンスでしかないから。最初に出てきたのはSF感を重視したデジロック、ビックビート的な音作りで、そのあたりからThe Prodigyを意識しつつ、チョップしたドラムやブレイクビーツっぽいビートを入れて、曲が始まったらクラッシュ(シンバル)で刻むと。で、そこにエッセンスとしてジャズ的なアプローチを乗せていったりして。ハイテンションな感じを出すために演奏は激しめにしてもらってパッケージングしました。

ーーアニメの90秒版だと、どちらかというとデジロック感の強い曲に聴こえるんですけど、フルサイズだと間奏がジャズのインプロっぽいアプローチの応酬で。

高橋:そうです、色んなオマージュも入れ込んでいたりして(笑)。最初に90秒を作ってから、間奏でスパイ感を強くしようと思って、ジャジーなところを強めた結果、Dメロを含めてかなり我の強い感じになりました。

      

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