>  >  > アイドル「メジャー回帰」の流れに新たな潮流?

香月孝史『アイドル論考・整理整頓』 第十九回:アイドルシーンの「現場」と「クリエイティブ」

アイドルの「現場重視」と「メジャー回帰」のバランスに新潮流? NGT48の挑戦を読む

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 昨年頃から、女性アイドルシーンの傾向について語られる際、ファンの行動に関して「メジャー回帰」というフレーズが時折聞かれた。字義通りに受けとるならば、ライブアイドルや地方アイドルと称される規模のアイドルのファンである層が、より全国区のメジャーなグループへの関心を強くする、あるいは主な消費の場をメジャーグループへ移すことを意味する言葉である。もっとも、そうした語りで想定されている「メジャー」とは多くの場合、乃木坂46・欅坂46の「坂道シリーズ」を指していたし、またファンの消費行動が「回帰」に合致するかどうかも判然とはしないため、「メジャー回帰」という枠組みを素直に採用することは難しい。そもそも、このジャンルが包摂する範囲が広がっている現在、女性アイドルシーン全体を貫くような潮流を見出すことはますます困難になっている。

 その中で、乃木坂46が積み重ねて手にした成熟と、デビューして間もない欅坂46の初速のインパクトが重なり、アイドルファンのみならず世間に向けての坂道シリーズの存在感が巨大なものになったのが2016年だった。そうした状況を女性アイドルシーン内から眺めたときの気分を示すフレーズとして、「メジャー回帰」はあったのだろう。

 ところで、女性アイドルをめぐる2010年代前半の議論の中では、テレビなど既存のマスメディアではなく、ライブイベントなどの「現場」の重要性が語られることが多かった。「現場」で生じる一回性、あるいはSNSを前提としたコミュニケーションなどを代表的な特徴として2010年代のアイドルシーンを捉えることは、今日に至るまである程度適切な見立てといえる。坂道シリーズもまた、その例に漏れるものではない。

 一方で、女性アイドルシーンが順調に社会に定着し、その裾野が広がったことで、「現場」のもつ一回性という性質自体は現在、いわば当たり前のものになった。もちろん、ライブイベントなど毎日どこかで生起している「現場」は、それぞれ複製のできない貴重な瞬間の連続としてある。ただし、その「一回性」を持つ現場が無数に生まれるような環境を、現在のアイドルシーンは有している。これは、グループを中心とした女性アイドルというジャンルが世に根付きはじめたことの副産物でもある。

 その中で、近年の坂道シリーズが「メジャー回帰」というフレーズの象徴になりえたのは、「メジャー」ゆえのグループの体力を、そうした一回性とは異なる方向に注いできたためだ。すなわち、秋元康プロデュースのグループでありながらも「現場」の象徴たる常設劇場を持たない坂道シリーズにとって、映像やCDジャケット等に代表されるプロダクト単位での物語性・世界観の構築は重要な柱になってきた。そして、乃木坂46に始まるその蓄積が対世間的に一気に花開いたのが、欅坂46「サイレントマジョリティー」のMVだった。ジャンルを超えて世の中に届くということは、現場に足を運んで「一回性」を体感する層の外側にまでリーチすることにほかならない。このとき、一貫して視覚表現の機会を多く積み上げてきた坂道シリーズには、一日の長があった。

欅坂46 『サイレントマジョリティー』

      

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