s**t kingzが考える、J-POPシーンにおける振付の“重要性”

s**t kingzが考える振付の“重要性”

メンバーの振付スタイルを解析

――先ほど、話し合いで振り分けを決めると「こんな曲だったらサビはこの人」と一辺倒な感じになってしまうとおっしゃいましたが、ということは各々得意なテイストは異なるんでしょうか。

Oguri:俺らの中ではあまり意識してないけど、「こういうものならこの人が合いそう」っていうイメージは周りに持たれてそうですね。

――では、一人ひとりの踊りの特徴や振付スタイルを、改めて教えていただけますか?

shoji:kazukiは“大人おしゃれセクシー”。

kazuki:そういうイメージで依頼して貰えることは多いですね。「シンプルにしたい」とか「カッコいい仕草で魅せたい」とか。

――最近kazukiさんが手がけられたV6の「Can't Get Enough」も、大人向けの落ち着いた振りでカッコよかったです。

kazuki:あれはまさにそういうテーマです。V6の皆さんは本当に大人な方々なのでテーマもぴったりでした。

shoji : 同じ“大人セクシー”というテーマでも世代によって求められるものが違うこともあって面白いよね。

――続いて、AAAやDa-iCEの曲を多く担当しているshojiさんの振付の傾向は?

kazuki:shojiくんは“キャッチー”な振りを作るのが得意です。「振りを元にした“○○ダンス”っていう名前をください」って言われていることが多いイメージ。

shoji:うん、多い(笑)。僕自身も、わかりやすいものだったり誰が見ても楽しめるものだったり、キャッチーなものを作るのは好きです。あと、ちょこっと変な振りを入れるのも好き。そこだけ取り上げられるとカッコ悪いんですけど、流れの中にあえて違和感を感じさせて引っかかりを作ることはありますね。Oguriは……“グルーヴィ”がキーワードじゃない?

NOPPO:そうだね。

shoji:単純にダンスを見せたいというより、ミュージカルっぽい雰囲気のMVにしたいとか、アクティング(演技)系のものを入れたいっていうとき、Oguriに依頼が来ることが多い気がします。

――Oguriさんが長く関わっているDISH//のMVなどは確かにミュージカルっぽい側面がありますね。

kazuki:構成重視だよね。

Oguri:そうかも。みっちり振りをつけずに構成などで世界観を作りつつ、ポイントでダンスを魅せるという感じで作りますね。

NOPPO:shojiくんと正反対なんですよね。shojiくんは手振りをしっかり作るのに対して、Oguriは手の決まりはないようなノリの部分がけっこうある。

――実際にこれまで、ダンス初心者が混じっているグループもあれば、幼少期からバリバリ踊ってきた人で構成されているグループもありましたよね、きっと。

Oguri:そうですね。なので初めて振付をする時は、先にそこを見定めて全体の難易度を調整することが多いです。

shoji:一応理想値を作っておいて、振り入れしてて難しそうだったら少しわかりやすい振りに変えることはあります。メンバーの立ち位置によって、踊りではなく構成で良く見せることもあり、その辺りのバランスを取ることも、振付において重要視していますね。

――最後にNOPPOさんの踊りの特徴はどうでしょう。

Oguri:NOPPOは、総合的にうまいんですよ。

shoji:練習を通してもカッコ悪い瞬間は見たことがない。できてなくても何かしらのモノにはなってる。

――それはどうしてなんでしょうね?

shoji:子供の頃からダンスをやってるっていうのもあるかもしれないけど、自分のよく見える形を体が認識してるんだと思います。

kazuki:ダンスに限らない気がするね。スポーツとかも急にやってもできるんじゃない? センスがあるから。

NOPPO:あはは(照れ笑い)。お得(笑)。

shoji:自分で踊るとなんでも形になるから、その動きを他の人がした時に、カッコ良く見えるかどうかの線引きは難しいだろうなって思います。

NOPPO:そういう難しさはあるね。そういう場合はとにかく直接踊って見せたり動画を送ったりして、動きをキャッチしてもらいますね。

Oguri:NOPPOの動きは形よりも緩急を付けるのが大事だったりするので。振りを写すときも「ここは初速を付けて」とかポイントを言ってあげることが必要になってくるよね。

最近すごいと思った振付のJ-POPは……

――事前アンケートで、最近すごいと思った振付のJ-POPナンバーを挙げていただきました。どれも興味深いので1人ずつ解説をお願いします。

shoji:俺は「特になし」って書いたから全部にツッコんでいくね(笑)。

――まずOguriさんは、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」という回答でした。

Oguri:この振付は、人の心への残り方が強烈で、カラオケに行ったらみんな絶対踊るし、細かく覚えてなくても「なんとなくこうだった」で動けるし。自分のスタイルと真逆でキャッチーさが詰め込まれてると思います。

――2014年当時、あんなに国民的に広まるJ-POPの振付は久々でしたね。

Oguri:しかも、そういう狙いで作って狙い通りに広まったっていう、してやられた感。

shoji:これはパパイヤ鈴木さんだよね。去年、テレビ番組でパパイヤさんがこの振付を解説されてたんですけど、振りの中にソウルとかディスコのステップがいっぱい入ってるそうで。「こういう意味があってこの振付なんです」と説明してるパパイヤさんの横に、指原莉乃さんとかAKB48のメンバーが数人いたんですけど「全然知らなかった―!」って言ってたんですよ。それを見て、振付の意図を知らなかったとしても、結局のところわかりやすいものはみんな覚えるんだなって思いました。パパイヤさん的にはこだわりを持って作った振付だけど、メンバーは何も知らずに手をニギニギしてたら、お茶の間もニギニギして楽しんで。説明がなくてもいいという意味で究極にキャッチーですよね。

恋するフォーチュンクッキー / AKB48

――皆さんは振付に込めたコンセプトや思いをアーティストに伝えますか?

shoji:時と場合によっては伝えることもあります。例えばテレビやラジオで「実はこの振りにはこういう意味が込められてて……」みたいなことを言ってくださる方もいますね。僕らとしては、やっぱり曲にインスパイアされて作って、何かしらの意味は込めてるので、そう言ってもらえるのは嬉しいです。

――続いて、kazukiさんは欅坂46の「二人セゾン」。

kazuki:大知のダンサーとして出たテレビ収録で、この曲のパフォーマンスを2、3度見たんです。自分の発想にはなかった動きとか構成が、次から次へと来るから飽きないなって。センターの子がものすごく目立つ“1人対大勢”っていうバランスも、センターの子が頭振って激しく踊るパートも、「そんなにやっちゃっていいんだ」っていう驚きがあってめちゃくちゃ印象に残りましたね。

Oguri:急に列になって歩き出したり、画の作り方が創作ダンスみたいでとても面白いよね。

shoji:欅坂46の振付はどれもすごくいいですよね。曲と振付の外し方が絶妙に心地いいというか。そのギリギリのラインを攻めている感じが、振付されているTAKAHIROさんのうまいところだなと僕は思います。

欅坂46 『二人セゾン』

――NOPPOさんは星野源さんの「恋」を選ばれました。MIKIKOさんの振付にはどんな印象を持ってますか?

NOPPO:手で踊るキャッチーなダンスはアイドルグループの曲でもよくあるじゃないですか。MIKIKOさんの振付ってそれよりももう少しストリートダンス寄りな、でも一般の人に伝わる振付っていうイメージなんです。一度じゃ理解し切れないほど情報量があって、何回も見て掘り下げたくなる面白味のあるダンスだなっていつも思います。

shoji:MIKIKOさんのダンスのすごいところって、もちろんちゃんと全身を使って踊ってるんですけど、バストアップだけ切り取っても1ポーズ1ポーズ成り立つという点だと思います。それから、PerfumeとかBABYMETALとか人数の少ないグループの振付において、大人数グループではできない、3人だからこその画角みたいなものを熟知されてるんだろうなと感じます。

星野 源 - 恋

――今のJ-POPの振付の流行についてはどう感じていますか?

Oguri:大人数グループの、全体の構成を使った画で魅せる振付は見ていて楽しいですよね! 後は動きが面白くてちょっとクセになるという振付も流行ってますよね。

――振付する側にも、フォーメーションの組み方を含めた構成力が求められているんですかね。

Oguri:ホントそうだと思います。だから大人数グループの振付をする方はすごいなって。

kazuki:その中に歌割りがあるんだもんね。5人だったら1歩前へ出れば1列目になるけど、20人とかいたらそうもいかない。めちゃくちゃ速く移動したり、前に出ない代わりに後ろでも目立つ方法を作ったり、見せ方が何パターンもないとね。

――それに対してシッキンの振付スタイルを考えてみるといかがですか。

Oguri:「カッコいい」が大前提ですね。自分たちがカッコいいと思えるもの、人にもそう思ってもらえるものを意識してます。普段自分たちがシッキンのショーで踊るものと同じ感覚で振付を作ってる……よね?

NOPPO:うん、そうだね。

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