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青龍『AO-∞』リリース記念対談

Ryu☆×kors kがbanvoxと考える、“音楽ゲーム”からしか生まれないダンスミュージック

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「最近のボス曲はただ物量的に難しいではなく、なんらかのギミックを使う」(kors k)

ーーボス曲というのは、「どこまで難しくできるか」に重きが置かれていますが、あまり詰め込みすぎると音楽として成立しなくなってきますよね。その線引きはどういう風にされているのか気になります。

kors k:僕はとにかく音数が多くて、1曲で100トラック以上になるときもあって。それをまとめるとなると叩けない音も出てきちゃうので、ゲームのロングノート(長押し)とかバックスピンスクラッチ(『beatmania IIDX17 SIRIUS』より実装された操作方法)とか、新しい要素を混ぜて、ただ物量的に難しいというものではなく、なんらかのギミックを使うことを意識して作りますね。

Ryu☆:最近、一時期よりビーマニ界隈の楽曲におけるBPMが下がってきてるんですよ。早い刺激に飽きたのかどうかはわからないですが、そういうギミックを使ったアイデア勝負になってきている部分もあります。

ーーなるほど。単押しだけではない、システム側での工夫が増えてきたからこそ、ボス曲にも多様性が生まれてきたと。

Ryu☆:長押しをいかに面白くいれるかを考えるようになりましたね。高速で長押しを入れると、すごく鬱陶しいんですよ(笑)。その中でBPM128でゆったりと存在感のあるものを鳴らしてあげたほうが気持ち良い。3000〜4000曲あってやり尽くされたところもあるのですが、banvoxさんの曲にもハッとさせられる部分があったので、上手く参考にさせてもらえればと思いますね。僕、耳を安定させるためにいくつかリファレンストラックを持っていて、制作の合間に聴いているんですが、そのなかにbanvoxさんの曲もあります。音圧が凄まじいんですよね。自分が持っているなかで一番すごいんじゃないかと思う。

kors k:僕も気になっていました。どうやってマスタリングしているんですか?

banvox:Ozone(iZotope社のマスタリングプラグイン)ですね。マスタリングというよりは、Mixに重きを置いていて、この段階で音作りをするという部分はあります。だいたいマスタリングって全部書き出してから波形でやっていくんですけど、僕は最初にマスターを差しちゃって、崩れないように1プロジェクトの中でMixしていく。

ーーゴールから作っていくという感じですね。

Ryu☆:プロジェクトに「Finalizer」(マスタリングツール)を突っ込んでMixするというパターンは、今の世代の定番ですよね。自分たちのときはそれがダメだったんですよ。昔はフェーダーで赤がつけないように、マスターでも赤がつかないようにと別工程でやっていて、当時もローが足りないとは感じていました。Mix段階でやったほうが中低域が綺麗に出るんですよね。

kors k:まあ、音楽ゲームはパラデータで出さなきゃいけないという点もあるから、それが難しいところもありますよね……。

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ーーbanvoxさんの新作『Take No Defeat』は、ビート周りを含め、ゆったり目に作ってある印象を受けました。コンセプトも「banvox ≠ club music」とのことですが。

banvox:普通にクラブミュージックを作るだけだとつまらないし、面白いものが作りたいなと思ったんです。BPMもクラブユースではないものにあえてしてみたり、家で聴くものが作りたいなと。

kors k:そうなんですね。意外です。ハードコア界隈だと「Watch Me」や「Summer」ってめちゃくちゃ掛かるんですよ。だからこのアルバムの中からもそういうアンセムが出てくるんだろうなとワクワクします。ブートもみんな作ったりするので。あの2曲は一晩に1回は聴くくらいぶち上がりますからね。さっき Ryu☆さんが「音ゲー曲には驚きがないと」って言ってたんですが、「Summer」はベースの使い方がこれまでの音楽ゲームになかったアプローチで。『beatmania IIDX』シリーズだと、ベースって普段はボタンにアサインされるんですけど、この曲の場合はスクラッチが当てられてるんですよ。そういう意味でもかなり斬新なんですよね。新時代を感じる。

ーー楽曲として音楽ゲームにはない新鮮な部分があると。

kors k:僕らの考える“ハッピーハードコア”って、「NEXUS」を使うとか「SuperSaw」(少しずつピッチのズレたSAW波形を同時に並べて作る音色)系でメロディを奏でるという風に、ある程度フォーマットが決まってるじゃないですか。そんな中から聴いたことのないベース音が出てくるとワクワクしますよね。

Ryu☆:あと、今の子たちはヘッドフォンやイヤホンで曲を聴くから、筐体(ゲームマシン)で聴いて「おっ」と思うことが大切。コンポもプレイヤーもなかったりするので、腰や全身で感じるゲーセン鳴りの音は大事ですよ。banvoxさんの場合、キックとベースで作るボトムのグルーヴがワールドスタンダードなんですよね。その秘訣が知りたいです。

banvox:秘訣といえるかどうかわかりませんが、元々HIPHOPがやりたくて、HIPHOPのトラックメーカーの方が「FL Studio」を使っていたのを見て使いはじめたこともあり、ビート感はかなり自分の中で重要視していますね。

Ryu☆:海外で何かやろうとすると、そこが一番聴かれるところですからね。日本とは判断するポイントが違う。美味しいと思う帯域も。自分はJ-POPなどの日本の音を吸収してできたフィルターと感性からアウトプットしているので、そこが難しいときもあります。

kors k:僕らはユーロビートから入っていることもあり、メロディに重きを置く傾向がありますからね。

Ryu☆:SoundCloudでフックアップされる方も、基本的にはビートがしっかりしている人たちなんですよね。banvoxさんは洋楽をずっと聴いていたんですか?

banvox:HIPHOPは海外のものも日本語ラップも幅広く聴いていて……本当はラッパーになりたかったんです。

Ryu☆&kors k:ええー! そうなの!?

banvox:トラックがないから自分で作ろうと思ったら、いつの間にかこうなっていたという。

Ryu☆:耳がそういう風に形成されているんですね。ゼロから生み出すことって不可能に近いので、自分のフィルターを通して消化して出す。そのフィルターが人それぞれだから面白い、というのがクリエイターごとの違いだと思うんですよ。

kors k:banvoxさんをはじめ、若い子たちはとにかくセルフのミックスが上手いという印象なんですよね。海外でどうこうよりも、元から聴いているものがハイファイだからということなのかも。banvoxさんはモニター環境どうしてますか?

banvox:最初からパソコンに付いてるものだけで完結させます。ヘッドフォンも使わないんです。慣れた環境じゃないと作れないんです。

kors k:ツアーで外に出ずっぱりのときは?

banvox:『ESQUIRE MINI』(HARMAN)という、自宅のモニタリング環境と似たような音が出るものを(中田)ヤスタカさんから教えてもらったんです。携帯の充電器にも使えたりするので(笑)。

Ryu☆:モチベーション上げたいのですぐ買います(笑)。ちなみに、今日絶対訊こうと思っていたのですが、banvoxさんが曲を作るうえで、モチベーションになっているものって何なのでしょう?

banvox:なんでしょう……好きだから、ですかね。作らずにはいられないというか。

Ryu☆:すばらしい。僕らはもう……歳を食ってひねり出すようになってしまったから(笑)。

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