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”青さ”を掲げる2バンドの共通点と決定的違いーーFor Tracy Hyde×Balloon at dawn対談

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 ともに洋楽インディーを経由した音作りと、叙情的な日本語詞で聴くものの心を掴む、For Tracy HydeとBalloon at dawnの2組。彼らは互いのレコ発に出演したり、音やビジュアル、映像で“青”を表現するという共通点がある。今回リアルサウンドでは、2バンドによる対談を行ない、当事者同士が感じる2組の共通点や相違点、それぞれの新作『Film Bleu』と『Our finder』の印象、今後の方向性などについて、じっくりと語り合ってもらった。(編集部)

「インディーの人って2000年代のロックについて言及しない」(井口)

ーー先日はFor Tracy Hydeのレコ発ライブ大阪公演にBalloon at dawnが出演したりと、もともと交友のある2バンドですが、互いに共振するスタンスのようなものはあるのでしょうか。

夏bot(For Tracy Hyde/Gt.):まず思い浮かぶのは「青春というものへの執着」ですね。必ずしも明るい部分だけではなく、絶対に終わりが来るという有限性や無常さ、かつてそばにいた人が今はもういないという寂しさのような翳りのある側面。そんな部分にもちゃんと目を向けているというのが、個人的にはすごいシンパシーを感じるんです。先日読んだインタビューで、井口くんがBase Ball Bearの影響を公言していたんですけど。

ーー特設ページ(http://balloonatdawn.tumblr.com/ourfinder_interview)のインタビューですね。

夏bot:そうです。高校時代に『夕方ジェネレーション』や『HIGH COLOR TIMES』をめちゃくちゃ聴いていたところも共通しているのかと驚きました。洋楽インディーっぽいものの影響を受けているシーンだと、Base Ball Bearに影響されたというバンドはほとんどいないので。

ーーGallileo Gallileiからの影響も共通項としてあると思うんですが。

夏bot:そうですね。ただ、Balloon at dawnは最近「脱Gallileo Gallilei」というほどのことではないのかもしれませんが、その影響を認めつつ、ちゃんと独自のものを追求していこうという意志を感じます。Gallileo Gallileiはファンタジックな要素が終始つきまとっていた印象があって。そのなかでもリアリティのある部分は、20代半ばぐらいの人たちが共感できるようなものという感覚なんです。でも、Balloon at dawnはもう少し世代が若め、10代後半くらいのリスナーがシンパシーを感じるような部分が強いのかなと。

Mav.(For Tracy Hyde/Ba.):先日、渋谷系が大好きな外国人記者のインタビューを受けるという機会があったんですけど、そこで「シンパシーを感じるアーティストはいますか?」と訊かれたとき、真っ先にBalloon at dawnの名前が思い浮かんだんです。僕個人としては、少し雑な言葉かもしれませんが、洋楽インディーとJ-POPの両方をしっかりやるというバランス感覚において、最も近いところにいるのが彼らという気もします。

井口聖也(Balloon at dawn/Vo.):僕らも、全国各地で共鳴するバンドを思い浮かべた時に、For Tracy Hydeがすぐ思い浮かびますね。影響を受けたバンドが近いというのは最近知ったことなんですけど。あんまりインディーの人って2000年代のロックについて言及しないんですよね。あと、歌詞についても儚さや「何を美しいとするのか」という部分がリンクしているようにも感じていて。

上田翔汰(Balloon at dawn/Syn.Gt.):For Tracy Hydeの「渚にて」とか、とくに近しい感じがしますね。個人的にも歌詞の世界観が好きです。

夏bot:そういえば、『Our finder』の「One summer」は、歌詞の最後の行が「、」で終わっていて、「渚にて」も同じ終わり方だったのでびっくりしたんです。どちらもたぶん歌の中でひとつの時間が終わって、それでもまだ人生が続いてゆくという連続を表現するために「、」で歌詞を終わらせたと思うんですが、たまたま全くお互い知らず知らずのうちに似たような表現を使っていて面白かった。

ーーあと、2バンドの共通点としてはメンバーの交代・編成の変更で変化があったというのも大きいのではないでしょうか。For Tracy Hydeはボーカルがeureka(For Tracy Hyde/Vo.)さんに変わって、よりポップネスな要素が強まった印象があったり、Balloon at dawnはよりバンド然とした編成になったり。

夏bot:そうですね。前ボーカルの時は少しふわりとした声が活きるような、抽象性のある歌詞がハマっていたんですけど、eurekaはもっと歌い方がストレートなので、それに合わせて楽曲や歌詞もまっすぐな表現に変えていて。分かりやすくエモーショナルな展開を作ろうと意識するようになりましたね。

井口:僕らの場合はメンバーにマニピュレーターがいたことで、打ち込みの精度を高めることができていたんです。ただ、メンバーチェンジがあったことで大きく変わったかと言われればそうでもなくて、今回の『Our finder』を通して打ち込みもバンドサウンドもバランス良くできているという実感がありました。ライブに関しても、今の方が同期を使ったりと、音源により近い部分もあるかもしれないですね。ただ、ライブではちゃんとライブっぽさを出したいとも思っていて。

上田:マニピュレーターがいなくなったことで、3人がそれぞれの意見をすり合わせる時間は増えましたね。そういう面は音源に出ているような気がします。

ーーすり合わせたり、お互いにぶつけて削ぎ落とすことが増えたと。『Our finder』の中で3人のそれぞれのクリエイティブが1番入っていると思う曲はどれでしょうか?

井口:最後の「Girls around the gate」ですね。もともとはクリーンなギターが鳴ってるスーパーカーのような曲をイメージしていたんですけど、上田がWashed Outのアルバムを持ってきてくれて、アレンジの合間に聴いてたら「この要素を使った方がいいんじゃないか」という案が出てきて。ラストサビのエモーショナルな部分も、新しく入った小松がいたからこそできたと思いますし。

ーーFor Tracy Hydeはそのあたり、どういうバランスで作っていますか。

Mav.:メインの作曲をしている夏botと僕が宅録出身で、基本的には2人とも自分の中でカッチリ作り込んじゃいますね。1曲だけ共作している「あたたかくて甘い海」を除いては、基本的に自己完結ですし、アレンジにおいて全員ですり合わせることはゼロに近いかもしれません。あ、でもギターはU-1(For Tracy Hyde/Gt.)が提案してくれることも多いです。

U-1:僕はなんというか……基本的に夏botが作ってくるフレーズが弾けないことが多くて。その解決法として「こう弾いてみるのだったらどう?」と提案したら通った、という感じなんです。

ーーまーしーさん(For Tracy Hyde/Dr.)はどうですか?

まーしーさん:元が宅録の曲なので、再現にあたってどうしようかと思うことは頻繁にありますね。Balloon at dawnのドラムって小松さんが考えてるんですか?

井口:僕が打ち込んで、ライブのときは小松が人力でできるフレーズに直していますね。

上田:ドラマーが思いつかない、叩けないフレーズになってるときもあるんですよ。

小松マサヒロ(Balloon at dawn/Dr.):For Tracy Hydeのドラムは、The 1975みたいなUK感のあるフレーズや、ギターポップのようなテンポ感もありますよね。いろんな方向からドラムのフレーズを考えているように思うのですが、どうやって作っているんですか?

夏bot:サンプリング的にいろいろなジャンルのフレーズを使っている節はありますね。ドラムに関しては露骨に元ネタがある曲もありますし。

ーーまーしーさんの走りがちなドラムは、これまでのFor Tracy Hydeサウンドにおいてもひとつの特徴だったと思うんです。それが次第に打ち込みと生ドラムのバランスも変わってきているし、生ドラムの音源も正確さを重視しているような気がします。

まーしーさん:最近は、ライブでも同期演奏をするようになりました。

夏bot:確かに、聴く音楽の好みはThe 1975のようなものに変わってきていますね。あのバンドも打ち込みのような生ドラムの音を使うことも多くて。最近はインディーR&Bっぽいものにも興味を持ち始めて、今はHow To Dress Wellの新作を聴いたり、80sのポップスに強い関心を持つようになってきたりしています。Balloon at dawnはもともとドラムレスのバンドだったと思うんですけど、ある意味では我々が逆行していっているような部分もあったり。

ーーこのタイミングで2バンドの価値観がクロスしているのも面白いですね。先ほど話にも出ましたが、両バンドともに洋楽インディーと邦楽のバランスが絶妙で。最新作にはどのような作品からの影響が出ているのか、といった部分も聞きたいです。

夏bot:楽曲に関しては、The 1975とCaptured Tracks系のバンド、あとはWashed Outと90年代のシューゲイズですかね。邦楽は具体的な参照点はないんですが、Galileo Galileiの影響が全体的にあった上で、Base Ball Bearのような青春感も汲みつつ、アニソンの歌詞から受ける要素も強いかもしれません。メロディに関しては、逆に全く洋楽を意識していなくて、普通に自分から出てくるものをありのまま書いて歌詞もそれに合わせているという感じです。

井口:具体的にあげるなら、Washed Outと夏botさんに教えてもらったFuture Screensですね。Future Screensはシンセの感じが「One summer」の参考になっていますね。不協和音や独特のうねりなんかはまさに。メロディについては、自然発生するものをできるだけ採用しましたね。

上田:サウンド的には、マスタリングに向かう途中に聴いていた宇多田ヒカルのタイトな感じが表現されているような気もします。

夏bot:自分の場合は洋楽に興味はあっても古いものがほとんどだったんですけど、Galileo Galileiをきっかけとして、Washed Outなど現行の音源を知るようになりましたね。

井口:僕も尾崎(雄貴)さんがブログでBloc Partyなどの音楽を勧めているのを聴いてから、現在進行形の洋楽インディーに目を向け始めたんです。

     
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