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世田谷エリア発の16人組、KANDYTOWNの「スマートなヒップホップ」はシーンをどう変える?

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 KANDYTOWN。ラッパー/DJ/トラックメイカー/エンジニア/フィルムディレクターなど、様々な職能をもった16人で構成されるヒップホップクルー/グループである。喜多見や経堂、二子玉川といった世田谷エリア出身の幼馴染たちで構成される彼らは、これまでグループとして『BLAKK MOTEL』や『KOLD TAPE』などの作品をリリースすると共に、メンバーも個人としてフリーダウンロードやアルバムなどのリリースといった形で膨大な数の作品をリリースしてきた。その意味では、11月2日にメジャーよりリリースされた『KANDYTOWN』は、改めて彼らの存在を音楽シーンに宣言する待望の作品となるだろう。

 約一年前、KANDYTOWNがストリートアルバム『Kruise』をリリースした際に、筆者はWEBメディア『NeoL』にてインタビューを行ったが、時間が深夜だった事もあり、16人という大人数を収容できるインタビュー場所が見つからず、カラオケボックスで話を訊くことになった。当然スムーズにインタビューが始まる訳もなく、彼らはいきなりカラオケを始めたのだが、そこで全員が合唱していたのは、ラップ曲ではなく、オリジナル・ラヴ「接吻」と山下達郎「蒼氓」だった。その意味では、山下達郎やオリジナル・ラヴといった、メロウネスを感じさせるポップミュージックを、20代前半のメンバーたちが共有概念として持っていることが、非常に興味深かった。

 そして彼らのメジャーデビューアルバムとなる『KANDYTOWN』。このアルバムから想起されるイメージや感情はもちろんリスナーによって様々だろうが、サウンドは現在のUSシーンで言えばJoey Bada$$をはじめとするブルックリン発の若手クルー・Pro Era勢に見られるような、90’sのNYヒップホップ的なサウンドアプローチ、サンプリングを基調としたサウンドプロダクションが中心線となっている(ただし、Pro Eraもそうなのだが、決してKANDYTOWNは90’s的なヒップホップの復古を目指している訳ではないし、サンプリング絶対主義のような意識もないだろう)。

 そして、そういったプロダクションに同時に込められているのが、先程書いたような、ポップなメロウネスやソウルフルさといった感覚だ。それはKANDYTOWNのメンバーであるRyohuが楽曲に客演参加しているSuchmosなどの20代でありながらメロウさやアーバンなサウンドを奏でるグループとも近い感覚を覚えるし、その共時性は非常に興味深い。そしてアーバンさやメロウネスを「教養」といった形で取り込み表出させるのではなく、もっと「身体的」に、「快楽的」に取り込みながら、それを形にすることで、ベタに言えば「ダンサブル」に形に出来ていることが、彼らの音楽的な強度を担保している(それは世田谷エリア出身であったり、メンバーの多くが自由な校風で知られる和光学園出身で、ズットズレテルズにも参加していたメンバーがいるなど、自然に得られる情報量/文化資本の高さにもよるだろう)。

 また、彼らの歌詞にも他のヒップホップグループと同じようにストリートが描かれる部分があるが、そのストリートのあり方が、例えばハスラー・ラップが描いてきたようなハードな都市の「暗部」であったり、暗闇の中でギラつくネオンサインやLEDとも違う、ロマンティックな夜の闇に溶け込むような「品」を感じさせる部分があり、その意味でも非常にスマートな感覚を全体的に感じさせる。

 都市文化の突端に登場したといってもいいKANDYTOWN。彼らの描き出すクールさを湛えた「スマートなヒップホップ」は、現在の音楽シーンの潮流とも重なる部分が強いだろうし、これまでの都市型の音楽シーンが何を生み出してきたかということの一つの幸福な証明である。この感覚がどこまで音楽リスナーに届くのだろうか、そしてこの彼らの存在は音楽シーンをどう変革させるのか、興味は尽きないし、それだけ期待させられる存在であり、作品だ。

(文=高木 "JET" 晋一郎)

■リリース情報
『KANDYTOWN』
発売:2016年11月2日
価格:¥2,500(税抜)
〈収録曲〉
1. Intro – Prod: Neetz
2. R.T.N – Prod: MIKI and YUSHI / Rap: Ryohu, IO, MASATO, Dony Joint, BSC and YUSHI)
3. Twentyfive – Prod: Neetz / Rap: Neetz, YOUNG JUJU, KIKUMARU, Dony Joint
4. Get Light – Prod: Neetz / Rap: YOUNG JUJU, MUD, DIAN, IO
5. Just Sink – Prod: Neetz / Rap: MUD, Ryohu
6. Evidence – Prod: Neetz / Rap: IO, DIAN, Dony Joint, YOUNG JUJU
7. Good Die Young – Prod: Neetz / Rap: Ryohu, YOUNG JUJU, KIKUMARU
8. Beautiful Life – Prod: MIKI / Rap: GOTTZ, Dony Joint, DIAN
9. Round & Round – Prod: Neetz / Rap: Neetz, GOTTZ, YOUNG JUJU, Dony Joint
10. Ain’t No Holding Back – Prod: Ryohu / Rap: KIKUMARU, Ryohu, GOTTZ, YOUNG JUJU
11. Amazing (Interlude) – Prod: Neetz
12. Feelz – Prod: Neetz / Rap: IO, GOTTZ, Ryohu, KIKUMARU
13. Song in Blue – Prod: Ryohu / Rap: Ryohu, MUD, DIAN
14. Scent of a Woman – Prod: MIKI / Rap: MUD, IO, BSC, DIAN
15. Paper Chase – Prod: MIKI / Rap: MUD, YOUNG JUJU, DIAN
16. A Bad – Prod: Neetz / Rap: BSC, HOLLY Q, GOTTZ, DIAN
17. The Man Who Knew Too Much – Prod: MIKI / Rap: MUD, Dony Joint, YOUNG JUJU, GOTTZ
18. Against – Prod: Neetz, MIKI / Rap: Neetz, IO, Dony Joint
19. Rainy Night – Prod: Neetz, Minnesotah / Rap: BSC, Ryohu, MUD

■ツアー情報
『KANDYTOWN 5CITY TOUR POWERED BY CARHARTT WIP』
11月1日 東京 SOUND MUSEUM VISION
11月18日 福岡 graf
11月19日 広島 BACK BEAT
11月22日 大阪 心斎橋SUNHALL
11月23日 名古屋 club JB'S

■オフィシャルサイト
http://kandytownlife.com/

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