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市川哲史『逆襲の〈ヴィジュアル系〉-ヤンキーからオタクに受け継がれたもの-』発売記念 PART.3

LUNA SEAの“ROSIER”はまさに〈VISUAL SHOCK〉だった 市川哲史×藤谷千明〈V系〉対談

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 80年代半ばのV系黎明期より、誰よりも近い距離でシーンのアーティストを見つめてきた音楽評論家・市川哲史による書籍『逆襲の〈ヴィジュアル系〉-ヤンキーからオタクに受け継がれたもの-』が、8月5日に発売される。X JAPAN、LUNA SEA、GLAY、PIERROT、Acid Black Cherry……日本独自の音楽カルチャー〈V系〉を築いてきた彼らの《伝説》を振り返りながら、ヤンキー文化からオタク文化へと受け継がれたその《美意識》の正体に迫った一冊だ。

 ゴールデンボンバー・鬼龍院翔の録り下ろしロング・インタビューほか、狂乱のルナフェス・レポ、YOSHIKI伝説、次世代V系ライターとのネオV系考察、エッセイ漫画『バンギャルちゃんの日常』で知られる漫画家・蟹めんまとの対談、hideに捧ぐ著者入魂のエッセイなどなど、痛快な文体と愛情溢れる眼差しで書き切った584頁は、まさに市川哲史の集大成といえる。

 編集を手がけたリアルサウンドでは、本書の発売に先駆けてコンテンツの一部を抜粋して掲載。『鬼龍院翔が語る、V系への目覚め「中2の頃に“音楽性の高さ”でハマった」』『私が〈hide〉と 呑み倒してた日々ーー市川哲史が濃密な10年間を振り返る』に続き、今回はリアルサウンドでも執筆中のV系ライター・藤谷千明との、世代を越えた“V系対談”の一部を掲載。V系が一大ブームとなった90年代後半から、インディーズシーンが興隆した00年代について語り合った。(編集部)

田舎少女はなぜV系に惹かれたのか

市川:現役バリバリのV系ライターさんである藤谷さんに、オールドスクール以降、いわゆる00年代以降のV系について教えを乞う私です。そもそも藤谷さんがV系にハマってしまったのはいつ頃 になるんですか。

藤谷:94年です。当時田舎の中学生だった私は、毎週欠かさず観てた『CDTV』であんなものに 出くわしたんです。具体的に言うと、LUNA SEAの“ROSIER”と黒夢の“ICE MY LIFE”です。夏休みの前、7月の20日の週の発売でした(←ハイスパート早口)。

市川:情報量が過剰です。

藤谷:こういう仕事をしていると、訊かれるのでもうね、もうね、この話、これまでにもう5回く らいしてるから流暢にいくらでも喋れますよ!

市川:......手短かによろしく。

藤谷:同じ週の発売だったから、黒夢が10位で LUNA SEAが3位だったんですね。あの番組って、 トップは結構長めにPVが流れるじゃないですか! 50位とかだと1秒以下ですけど (←ウル トラハイスパート早口)。

市川:どーどー(←および腰)。

藤谷:それで当時のPVはとてもお金が懸かってるし画は綺麗だし豪華だし、明らかに他のジャンルのアーティストと全然違うじゃないですか! 夏休み前だし土曜の夜だし夜更かしもできるから観ていたら、「コレは超カッコいい!」と衝撃を受けて、翌日の日曜日に“ROSIER”を買いに行きました! 山口県のド田舎なので10km先のCD屋までチャリで(苦笑)。

市川:大丈夫、V系ファンの80%は地方在住者だから(微笑)。にしても、最初の遭遇が“ROSIER” だとはわかりやすい。

藤谷:まさしく〈VISUAL SHOCK〉でした。

市川:ちなみに思春期真っ只中の藤谷さんは、V系に御自分のどこを摑まれたんでしょう。

藤谷:もちろんさっき言ったようにPVや写真の豪華さや美しさもありますが、特に LUNA SEAと黒夢のそれは顕著だったと思うんですけど、シングル曲はポップなのにそのカップリング曲は凄 くマニアックだったり過激だったりしますよね? さっきの“ICE MY LIFE”は切ないメロディー でポップですけど、c/w曲の“S・A・D”はもうパンキッシュで歌詞も過激だし。“ROSIER”はもはやV系ソングの雛形ってくらいキャッチーなのに、c/w曲の“RAIN”はいきなりレゲエっぽいリズムで始ま――。

市川:息継ぎしなさいよ。

藤谷:(全然無視)次のシングルの“TRUE BLUE”がオリコンチャートで、ノンタイアップなのに1位獲ったじゃないですか。でもアレのc/w曲って、よりにもよって“FALLOUT”ですよ!? 辞書で引いて意味を知った時はびっくりしましたよ! 「え 」って。

市川:〈死の灰〉だからね。しかもそれ以前になぜか6/8拍子だし、ヴォーカルのエフェクトはバリバリで生声感ゼロだし。

藤谷:そういう〈驚き〉が、田舎の女子中学生にとっては新鮮だったのだと思います。「リリース の度に知らない言葉があるぞ!」的な。勿論、メンバーが恰好いいとかはありますけど。

市川:やはり日本の女子は遺伝子学的に、美しいものが好きだからね。

藤谷:ええ。ただ当時はまだまだブーム前だったので、中学のクラスでも家庭でも風当たりが強かったです。「男の人が化粧するなんてぇ」みたいな感じで、まだまだ特殊でした。だから下敷に黒夢やLUNA SEAの切り抜きを入れてようものなら、クラスの男子から「オカマだ!」と嫌がられました。ふふ。

市川:そんなあくまでも〈特殊な趣味〉だったはずのV系が、いつの間にかメインカルチャーの座を摑んじゃいました。当時〈現役〉だった藤谷さんの実感として、V系が市民権を獲得した潮目っていつ頃でしたかね。

藤谷:実体験としては、96~97年だと思います。来たるべき〈V系ブーム〉の予兆としてGLAYの“グロリアス”やラルクアンシエルの“flower”あたりがスマッシュヒットした96年には、じわじわとV系バンドが周知されるようになってたと思います。翌年には河村隆一のソロ・デビューとSHAZNAのメジャー・デビューが重なったこともあり、この時期になるとやたら周囲から「V系の雑誌の切り抜きをくれ」とか「あのバンドのCD持ってる?」と、よく声をかけられるようになったのを憶えています。

市川:あーやっぱ隆一とSHAZNAかぁぁぁぁぁ(失笑)。たしかに私が個人的にV系の天下統一 の瞬間を自覚したのも、TVのモノマネ番組で河村隆一が真似されてたのを観たときで、衝撃的な 光景だったの。バンドブームの頃ですら、どこのバンドも物真似なんかされなかったのに。

藤谷:そういう意味で、97年がまず「変わったな」と思った年です。

市川:「自分だけのものだったのにぃ」的なジェラシーは涌きませんでしたか、学校を筆頭とする世間の唐突な掌返しには。

藤谷:結構複雑でした。まあ当時のV系ファンの大半は複雑だったと思うんですけど(苦笑)。特に世に出てきたときからキラキラキラキラしてたSHAZNAはともかくとして、河村隆一のソロ自体がどうしても当時は許容できなくて(←きっぱり)。

市川:ぎゃはは。そうだろうなぁ。

藤谷:「は? 『LOVE』?」みたいな(凍笑)。 97年当時LUNA SEA全員がソロを演ってましたけど、私はJやSUGIZOのソロ作品が好きだったので、だから申し訳ないですけどLUNA SEAのアルバムでは『SHINE』がピンと来なくて……。

市川:わかる。〈河村隆一 with LUNA SEA〉的なアルバムだったからね、アレは。

藤谷:文句を言いながら聴くタイプのファンっているじゃないですか。私、それです。

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