kōkuaは「プロ集団」の枠を越え「有機的なバンド」となった 柴那典のツアー最終公演レポート

kōkuaは有機的なバンドになった

 「ありがとうございました! またやるぜ!」

 スガ シカオはライブの最後で、こう告げた。結成から10年を迎えて1stアルバム『Progress』をリリース、初のライブツアーを行ったkōkua。6月24日、その最終公演としてNHKホールでのライブが行われた。「アルバムデビューしたばかりの新人バンドです」とスガは言っていたけれど、メンバー全員そうそうたる実績を持つ面々だ。リハーサルやレコーディングでも、最も大変だったのは全員のスケジュールを合わせることだったとか。でも、ステージを見て強く感じたのは、単なる「プロフェッショナル集団」ではなく、5人が一つの「バンド」として有機的な結びつきを生み出していたことだった。

 kōkuaはNHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』をきっかけに結成されたバンドだ。最初は番組主題歌の「Progress」という曲を生み出すための、一度きりの企画モノとしての位置づけも強かったに違いない。しかし、そこから10年の年月を経て、kōkuaというバンドのアイデンティティが育っていった。あえてそれを言葉にするなら、スガがMCでも言っていた「大人のロック」というキーワード。リラックスしたムードと卓越したプレイで、洗練と迫力を併せ持つ空間を作り上げていた。

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 ライブは「BEATOPIA」でスタート。まずは武部聡志(Key)、小倉博和(G)、根岸孝旨(B)、屋敷豪太(Dr)によるセッションで会場を沸かせ、拍手に迎えられてスガ シカオ(Vo)が登場。まず披露したのは「Progress」だ。

 アルバム収録の「幼虫と抜け殻」に続けては、「オバケエントツ」「愛について」とスガシカオのソロ曲を続ける。印象的だったのは、kōkuaというバンドが演奏することで、普段以上にシンガーとしてのスガ シカオの魅力がクローズアップされていた、ということ。

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スガシカオ

 スガ シカオは、これまでライブでのサポートメンバーに「Shikao & The Family Sugar」や「FUNK FIRE」という名を付け、意図的にその存在をフィーチャーしてきた。ソロ名義でのライブでは、彼はただ歌うだけでなくバンドの生み出すグルーヴ全体を統括するような役割も果たしてきた。しかし、kōkuaではあくまで5分の1としての存在に徹している。それゆえに、終盤に披露した「コノユビトマレ」や「午後のパレード」も含めて、彼の歌い手としての魅力がストレートに伝わってくるような感覚があった。

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根岸孝旨
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武部聡志

 そして中盤は各メンバーが作曲を手がけたナンバーを演奏するパートへ。屋敷豪太作曲の「1995」はゆったりとしたビートが印象的なノスタルジックなバラード。根岸孝旨の「黒い靴」はダークな渋みを持ったロックナンバー。小倉博和がメインボーカルもつとめた「道程」はアメリカン・ロックを彷彿とさせるヌケのよい一曲、そして武部が作曲した「kokua's talk 2」では、インストゥルメンタルのセッションにあわせてスガがラップを見せる。

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