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乃木坂46が新アルバムで示したグループの今ーー『それぞれの椅子』の“輝き”に迫る

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 1stアルバム『透明な色』からおよそ1年半、乃木坂46は、紅白以降の勢いを逃すまいと早くも2ndアルバム『それぞれの椅子』を5月25日にリリースした。アイドルシーンにおいても、J-POPという広い枠組みで見ても、現在の乃木坂46の勢いは徐々に無視することのできないものになっている。本稿では、そんな最中に出来上がった1枚が、どのような装いになっているのかを紐解いていきたい。

「生きること、前進すること」乃木坂46の次の一歩

 前作にあたる1stアルバム『透明な色』は、デビューからの約3年間でリリースした10枚のシングル表題曲や、カップリング人気投票の上位10曲から収録曲を選んだこともあり、当時のベストアルバム的な側面があった。それから4枚のシングルを挟んで発売される『それぞれの椅子』は異なる4パターンの収録ラインナップとなっている。共通して収録されているのは、11thシングルから14thシングルまでの表題曲、新たなグループの代表曲である「悲しみの忘れ方」、多くのライブのラストを飾る「乃木坂の詩」、そして卒業する深川麻衣を除いた14th選抜メンバーによる新曲「きっかけ」と「太陽に口説かれて」、1期生の14thアンダーメンバーによる「欲望のリインカーネション」、以上の9曲だ。

 これらの楽曲を並べたとき、「生きること、前進すること」にフォーカスした楽曲が多いことに気づく。「太陽に口説かれて」は、暑苦しいホーンとベタベタのベース、チリチリハイハットが特徴的な、奇をてらうことなく直球勝負したサマーソング。歌詞においては、サビで夏に弾ける男性が女性を誘うものの、それに戸惑いつつも終始冷たい目線を送る女性、という双方のせめぎあいが面白い(そんな彼女にこそ「夏のFree&Easy」を聴いてもらいたいものだ)。

 R&B・HIP-HOP期以降の安室奈美恵を彷彿とさせる英詞で始まる「欲望のリインカネーション」は、2期生こそいないものの、これまでのアンダー楽曲の流れを踏襲しているといえる。タイトルのリインカネーション=転生という意味で、12thアンダー曲「別れ際、もっと好きになる」以降の“重い女シリーズ”はまだ継続中のようだ。そんな重い詞でも癖になるのは、フックのある英詞、そして大胆な80年代ディスコ風アレンジの力だろう。

 そして今回のアルバムの中でもキーとなるのが、今年の紅白で披露された乃木坂46の代表曲「君の名は希望」を手がけた杉山勝彦・有木竜郎ペアによる新曲「きっかけ」だ。「君の名は希望」に並ぶ代表曲「制服のマネキン」も手掛けている杉山勝彦は、自身がギターを担当するユニット『USAGI』でも有木竜郎と頻繁にタッグを組んでいる。そんな気心知れた二人は、乃木坂46の”今”を示す大事なアルバムでそれに即した1曲を作ってくれた。いつだって彼らが作る曲のピアノは優しく胸を打ち、それに寄り添うアコースティックギターの音色もまた楽曲を支える。最近の乃木坂46は四つ打ちをリズムの中心に据えた曲が多かったが、この曲では生ドラムが用いられている。「君の名は希望」でも「羽根の記憶」でもそうだが、彼らの作る楽曲はリズムパターンが面白い。1曲の中で様々なリズムを多用し、フィルも時に激しいのだが、美しいメロディーを邪魔することはなく曲を盛り上げ変化をつけていることは、複雑なリズムパターンにもかかわらずメロディの良さを殺さない「君の名は希望」を聴けばわかるだろう。「きっかけ」もサビとそれ以外でリズムを使い分け、サビ前のフィルでは羽が生えたかのごとく、曲を解き放ってくれている。グループ最年長でファンからの人気もメンバーからの信頼も厚い深川麻衣がついにグループを去る、その事実は多くのメンバーに自分の将来を考えさせることとなっただろう。だが、そんな不安も飛び越えて彼女たちが次の一歩を踏み出せると確信させてくれる、力強いメッセージの込められた一曲だ。

タイプごとに彩られたグループの魅力

 今回、全てのタイプに16曲を収録し、うち7曲がタイプごとに異なる楽曲となっている。Type-Aは通常盤と同じ収録曲であるため、おそらく一番多くの人に聴かれることを想定しているだろう。その新曲には白石麻衣、橋本奈々未、松村沙友理、高山一実、衛藤美彩による「空気感」と、西野七瀬の自身5曲目となるソロ曲「光合成希望」を収録。前者は、深川麻衣が抜けたことで選抜最年長となった92年組の4人と、2ndシングル収録の「偶然を言い訳にして」からお姉さんメンバー曲に参加している高山を組み合わせたもの。イマドキ女子の熱くも冷めてもいない、うまく表現できないけれども確かに幸せ、という雰囲気が歌詞にも曲にもそのまま乗っかっている。後者は西野のソロ曲としては初のアッパーチューン。今まで自身の切ないキャラクターに合わせた曲が多かったが、その確立されたイメージを覆す本当の(?)西野七瀬を表現する楽曲となった。爽やかなサウンドスケープはもちろんのこと、西野に当てられた秋元康の詞と、西野の耳心地の良い歌声に惹きつけられてしまう。そして、その他の収録曲も、人気ユニット「からあげ姉妹」による「無表情」、次の乃木坂46を担う「星野みなみと齊藤飛鳥のダブルセンター」による「あらかじめ語られるロマンス」、94年組を中心とする「『他の星から』ユニット」が歌う「隙間」、白石・橋本・松村の「御三家」の「急斜面」、前述した杉山勝彦・有木竜郎による「羽根の記憶」と、今の乃木坂46を網羅するようなラインナップになっている。

 Type-Bは生田絵梨花、堀未央奈、星野みなみ、齋藤飛鳥といった10代の選抜メンバーがフィーチャーされている。『NOGIBINGO!』(日本テレビ系)の人気企画「妄想リクエスト」にも登場した堀、星野、飛鳥の3人で歌う新曲は「Threefold Choice」。タイトルは三者択一という意味で、年下ながらSっ気のある3人の中から1人を選べと先輩男子に迫るという詞が、スカサウンドでコミカルかつ可愛らしく表現されている。もう1曲の新曲は生田絵梨花の2曲目となるソロ曲「低体温のキス」。1stアルバムに収録された「あなたのために弾きたい」でみせたピアノの優しい音色から一転、ひずんだギターと手数の多いドラムによるエモーショナルなバンドサウンドに仕上がっている。料理と絵画以外は何でもこなしてしまう天才・生田絵梨花は、たとえこれまでのソロ曲と180度方向性が変わろうとも、見事に歌い上げ自分のものにしてしまうからまた恐ろしい。その他にも、生田がセンターを務めた「遙かなるブータン」、星野・飛鳥による「制服を脱いでサヨナラを…」、星野をセンターに据えた「憂鬱と風船ガム」など10代メンバーの魅力がギュッと詰まっている。

 そしてType-Cは、活躍の場を全国へ広げているアンダーメンバーにフォーカスされた1枚だ。共にアンダーメンバーとして活躍する乃木團(乃木坂46によるバンド)のフロントマン、中元日芽香と能條愛未による「失恋したら、顔を洗え!」はシンプルなロックナンバー。曲を聴きながらギターをかき鳴らす川村真洋、1音1音堅実に押さえる中田花奈、細い腕で華麗にスティックを操る齋藤飛鳥など、演奏する彼女たちの姿が浮かんでくる。果たして彼女たちが再集結し、この曲を演奏する日は来るのだろうか。そしてもう1曲は、最終オーディションから約3年の時を経て実現した2期生曲「かき氷の片想い」。堀未央奈以外がアンダーということや、彼女が12、13thアンダー曲でセンターを経験したことから、Type-Cに収録されたのだろう。2期生メンバーのハツラツとした感じが音になるのかと思いきや、今回は切ない片想いソング。メンバーの活動辞退や長かった研究生期間を乗り越えたくましく成長してきた彼女たちには、もはや初々しさ全開の曲というより、アンダー楽曲で歌い続けてきた切ない路線のほうが板についているように思う。リズムは単調だが、だからこそ哀愁ただようクラシックギターの音色と歌詞の世界観をどのようなパフォーマンスで表現してくれるのかという点にも期待したい。その他の楽曲には初のアンダーユニットとなったサンクエトワールによる「大人への近道」と11thシングルから14thシングルまでのアンダー楽曲を収録。11thシングル以降でアンダーメンバーは一新され、3度のアンダーセンターを務めた中元日芽香や、グループで唯一表題曲とアンダー曲のセンターを務めている堀未央奈、この1年でじわじわ力をつけている北野日奈子・寺田蘭世などがその中心となった。そんなアンダーライブ全国ツアーを盛り上げていく楽曲が、この形態には詰まっている。

 Type-Dには10th以前の楽曲の中でも特にライブで欠かすことのできない「ハウス!」や「シャキイズム」といった、既存の人気曲を多く収録。きたる『真夏の全国ツアー2016』に向け、新規のファンにもライブを楽しんでもらえるようなラインナップになっている。新曲は生駒里奈、伊藤万理華、井上小百合による「環状六号線」と、女子校出身の仲良し4人組、桜井玲香、若月佑美、中田花奈、秋元真夏による「口約束」だ。前者の2人は漫画、ファッション、戦隊ヒーローなどなど恋愛よりも趣味に没頭する女子というイメージがあるが、今回そんな3人が歌うのは可愛らしい恋模様。3人の歌声が引き立つようなアレンジに高いグロッケンの音色が曲の可愛らしさを増し加えている。一方後者で歌われているのは女性同士の友情だ。歌詞は一見すると女子校あるあるに思えるが、4人の現在や未来の姿にも通ずる部分があるような気もする。上品なピアノの音色に加えて、16ビートのドラムとシンセサイザーが疾走感を加え、一気にサビを盛り上げるのは爽快。この4人のユニゾンの気持ちよさもこの曲の大きな魅力だ。

      

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