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兵庫慎司が傑作アルバム『葡萄』を再考

サザンは2015年の「みんなのうた」を作ったーー『葡萄』が日本レコード大賞最優秀アルバム賞に輝いた意味

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兵庫慎司
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 サザンオールスターズが今年2015年3月31日にリリースしたニューアルバム『葡萄』が、第57回日本レコード大賞の最優秀アルバム賞を受賞した。レコード大賞は2000年のシングル『TSUNAMI』で受賞しているが、アルバムでの受賞は初。もちろん、アルバムを出せば1位が当然、ツアーはスタジアムクラスで全公演即完、という状態がずっと続いているのがサザンだし、周知のとおり今作は桑田佳祐が療養から復帰して初めてのサザンのアルバムだった、ということもあるが、やはり受賞には特別な意味があるように思う。さらに言えば、サザンとしては10年ぶりで通算15枚目、デビューから37年で初の受賞というこのアルバム自体、長いサザンの歴史においても、これまでになかった内容と位置付けの作品なのではないだろうか。

 正確に言うと、僕が最初にそのことを意識したのは、このたびの最優秀アルバム賞受賞の発表の時ではなく、ツアー『おいしい葡萄の旅』を観た時だった。このツアーを6月13日のナゴヤドームで観たのだが、始まって10曲目くらいの時に、「早く『葡萄』の曲をやってほしいモード」「1曲でも多く『葡萄』の曲を聴きたいモード」で観ている自分に気づいて驚いた。サザンのように長いキャリアがあって、1回のライブですべて網羅するのは不可能なほど多くのヒット曲や代表曲を持っているバンドの場合、まずは長く親しんできた過去の曲を聴きたいという人は多い。それこそストーンズだろうが誰だろうがそうだ。でも、僕個人の実感は「早く『葡萄』の曲を聴きたい」というものだったし、「アロエ」「ピースとハイライト」「東京VICTORY」「栄光の男」などの『葡萄』収録曲のイントロが始まった時の客席の沸き方は、やはり驚くべきものがあった。

 思い起こせばその直前、このアルバムのリリース前後、収録曲全16曲のうち8曲にCMやドラマ等のタイアップが付き、テレビで流れまくっていたが、その曲たちのいわば「耳にこびりつき度」や「つい口ずさみ度」からして、おそるべきものだった。過去のサザンや桑田ソロのアルバムもタイアップがいっぱいついているという点では同じだが、『葡萄』の曲たちはそのどの時期とも違う格別の響き方をしていたと思う。

 なので、改めて考えてみたい。『葡萄』は、これまでのサザンのアルバムとどう違ったのか。そして、『葡萄』の何がそんなに、我々聴き手に刺さったのか。

「みんなのうた」を取り戻す。サザンが、桑田が『葡萄』で目指したのは、そういう音楽なのではないかと思う。

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