BiSHはBiSの最初期と最末期が混在しているグループだーー初ライブ現場を体当たり評論

 私はライヴ中、初めてBiSを見た2011年2月27日のことを思い出していた。BiSのライヴがまだ4回目程度であったあのとき、ステージに立ったプー・ルイ、ナカヤマユキコ、ヒラノノゾミ、ヨコヤマリナによるダンスは壊滅的なものだった。一方で、当時のBiSは「ステージにいるだけで面白い」という異様なグループだったことも思い出す。特にヒラノノゾミの「異物感」とでも呼ぶべき存在感には、頭を鷲掴みされて激しく揺さぶられたかのような衝撃を受けたものだ。

 それに対してBiSHは、容姿もダンスもすでにある程度のレベルにまで達しており、そうした意味では最初期のBiSのような「面白さ」、つまり異物感をデビュー・ライヴで見つけることはできなかった。元研究員=清掃員の盛り上がりは、BiS解散前の末期をトレースしているかのようで、あの頃のような大騒ぎをする「口実」を元研究員たちが見つけたかのようにも感じられた。

 せいぜい客が10人程度だった最初期のBiSに比べれば、BiSHは注目度が高すぎる。メンバーもそれに釣りあうようにした結果、最初期のBiSのような「穴だらけ」の存在でないことに、贅沢な話ではあるが一抹の寂しさを覚えたことも事実だ。5月31日には中野HEAVY SICK ZEROでのワンマンライヴ「THiS iS FOR BiS」が予定されているが、キャパシティ80人ほどの会場は即座にソールドアウトするだろう。その後のBiSHが、彼女たちなりの「面白さ」で見返してくれることに期待したい。

 BiSHのファースト・アルバム「Brand-new idol SHiT」は、隙のなさにBiSの2011年のファースト・アルバム「Brand-new idol Society」を連想した。一方でサウンドは、「BiSのサード・アルバムを松隈ケンタ率いるSCRAMBLESのみで制作していたらこういうアルバムだったのではないか」と考えるような、パラレルワールドのような作品なのだ。

 BiSの最初期と最末期。その両方が混在しているかのようなグループがBiSHだった。

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