嵐『Sakura』特典映像は“非ヲタ”向けの総括的作品? 青井サンマが本音レビュー
さぁ嵐の2015年第1弾シングル『Sakura』がリリースされましたよ! 昨年のアルバム『THE DIGITALIAN』が意欲作だっただけに、今年の嵐はどう来るかと期待が高まる1枚です。この表題曲で嵐は初めてメンバーが出演しないドラマの主題歌(生田斗真・小栗旬主演『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』)を担当。相葉くん曰く「アーティスト感ある」曲提供です! 誰だバーターだなんて言うのは!
収録曲についての音楽的なレビューはリアルサウンドの豪華執筆陣におまかせして、ただの嵐ヲタである筆者は、基本的にはヲタしか入手できない(予約開始後まもなく売り切れる)初回限定盤に収められたビデオ・クリップ(以下通称でMVとします)とメイキング・ビデオ周辺のレビューをしたいと思います。
その前に。正直なところ、この曲の第一印象は「あれ?また?」でした。既視感と既聴感。ジャケ写は嵐5人がつっ立ったモノクロ写真の中央にタイトルロゴがあり、初回盤はカメラ目線で通常盤は目をそらしているというところまで、2013年のアルバム『LOVE』にそっくり。曲調は「truth」以来のシリアス路線を踏襲した佐々木博史アレンジで、「Believe」っぽい。MVも暗い背景で桜が咲き乱れる……「Lotus」みたい。なんだろうこれ。セルフパロディ……?
昨年のデビュー15周年を経た“次の一手”を期待していた者としてやや残念ではありましたが、きっとこれは「総括」なんだと筆者は受け取りました。昨年のシングル『誰も知らない』で“死”という究極のテーマにたどり着き、そこで終わるかと思ったこの路線をここでまとめあげてみせた、と。そう思えば今までのおさらいのようなジャケ写・曲調・MVも、色々ふまえて「売りにきている」感じがします。タイトルもJポップ定番の“桜”ですし、一般(非ヲタ)受けしそう……!
とはいえ、歌詞にはひとひねりあって、舞い散る桜を見てあはれあはれと言うだけではないのが嵐らしいところ。絶望から希望への再生のイメージや世代を受け継いでいくイメージを、散ろうとも次の春には花を咲かせる桜に託しています。MVもそれを映像化したもので、荒れ地の大きな老木の前で歌う各メンバーのワンショットから始まり、それが2ショット3ショットと増え、最後は5人が揃い、咲き乱れる桜のプロジェクションマッピングを背に決意の表情で歩み出すというもの。すごく美しいです。一般向けのプロモーションビデオとしては満点だと思います。
しかし、これは初回限定盤として売っている商品でもあるのです。入手できるのは熱心なファンのみ。しかも映像をチラ見せすることもなく「シングル出します初回盤はMVつきます」という情報だけで数十万枚の予約を取っているわけで、そんなファン向け商品としてどうかと言われると首をかしげたくなるところ。
理由のひとつは先にあげた既視感。似ているMVは「Lotus」だけではありません。決められた演技や振付なしで歌うと、指を立てたり何かをつかもうとしたりする、メンバーがそれぞれに得意とする手の振りが出てくるので、微笑ましい“あるある”を通り越した「またいつもの」感が。そろそろバリエーションをいただけませんか……。そしてもうひとつの理由が“踊っていない”こと。年末の激務を思えばMV撮影までに振りをつけている時間などなかったのかもしれませんが、「ダンサブルな」という宣伝文句に期待して予約したファンには肩透かし。踊らないから余計に画が似てきちゃう。先週金曜の『ミュージックステーション』で披露したクールなダンスがMVにも入っていたらファンは大喜びだと思うのですが……。
とは言え、もちろんヲタ的な見どころはあります。たとえば、2番では2ショットを多用しているところ。コンビ萌えの方には嬉しいですね。歌い手が移り変わっていくパートでは、それに合わせてカメラが横移動してフレームインフレームアウトしていくという粋な演出もありました。
また、二宮くんの存在感にも注目です。手の振りも控えめに、この曲のテーマの「光と影」すなわち絶望と希望を顔の表情と佇まいで表現しきっています。メイキング・ビデオではセットを「Coccoっぽい」と評してナレーションで茶化されていますが、世界観をしっかりと捉えていることが伝わるコメントでした。