GRAPEVINE、移籍後初シングルで掴んだ“新しい感触”を語る 「理想のバンド像に近づいている」

「“何も考えずにやさぐれてる”感じにしたかった」(西川)

――やはりレコード会社の移籍はバンドにとっても大きな出来事だったんですね。

田中:そうですね。あと“せっかくこういうタイミングなんだから”って自分を焚き付けてるような感じもあったと思います。この状況を逆手に取るっていうわけでもないんですけど、関わる人が変わったら、いろいろと変化も生まれるだろうし。自分たちだけで籠って作るのとは違いますよね、やっぱり。

西川:活動の環境自体はあんまり変わってないんですよ、正直言って。今回のシングルも僕らの作り方でやらせてもらったし。ただ、移籍先が決まるまで2~3か月くらい時間があったから、そのブランクの間にそれぞれ考えたことはあると思いますけどね。

――活動の方法については、いろんな選択肢があったと思うんですが…。

西川:そういう話もしましたけどね。僕らはずっと同じマネージャーといっしょにやってきたんですけど、「ぜんぶ任せきりだったんだな」ということも露呈してきて。そういうことも影響してるんじゃないですかね、今回の曲に向かう気持ちとしては。

亀井:リスタートというか、仕切り直しみたいな感覚もありましたからね。

――そのブランクの間も、曲作りは続けてたんですか?

西川:いや、何もしてなかったです。個別には何かやってたかもしれないけど、バンドとしての作業は完璧に停止してたので。

――不安はなかったんですか?

西川:なくはないですけどね。心境しては、昼間、公園をブラブラしてるおじさんみたいな感じです(笑)。「この人、昼間から何やってんだろう?」っていう。メンバーやマネージャーとたまに喫茶店で会うだけですからね。

田中:そうね(笑)。ミーティングする場所もないから、喫茶店に集まって。

西川:「これじゃダメだ!」みたいなことを言う人もいないので、みんなでお茶を飲んでるだけなんですけど(笑)。

――ものすごく無責任な言い方ですけど、こちらから見ると「GRAPEVINEみたいにライブが良いバンドは、絶対大丈夫」みたいなところもあるんですよね。

西川:どうなんですかね? 僕らだけではやれないので…。支えてくれる人がいる限りは続けようと思いますけどね。

――では、シングルの話に戻って。2曲目の「KOL(キックアウト ラヴァー)」はギターのアレンジが斬新ですよね。

田中:この曲も「Empty song」と同じ時期に作ったんですよ。

西川:ガレージっぽいイメージのロックが作れないかと思ったんですよね。欠落しているがゆえの破壊力というか、何も考えずにやさぐれてる感じにしたくて。なかなか欠落してる感じが出なくて、苦労しましたけどね。どうしてもちゃんとしちゃうんですよ(笑)。

亀井:“抜き”の感じがおもしろいですよね。以前は音を足していきがちだったんですけど、ここ何年かで、ようやく音を抜くっていう感覚がわかってきた気がします。

――新しさという意味では、「Empty song」よりもこちらのほうが強いような気もしますが。

田中:そう、僕はどちらかというと「(シングルには)こっちがいいんじゃないか」って推してたんです。ありそうでなかった感じの曲だし、わりと明るいので。まあ、その判断はレーベルに任せようと最初から思ってたんですけどね。

――そして3曲目の「吹き曝しのシェビィ」はダークな雰囲気のミディアムチューン。ロードムービー的な雰囲気の歌詞を含めて、これもGRAPEVINEらしさだな、と。

田中:自分っぽいなとは思います。曲のストーリーも歌詞の書き方も、個人的に好きな感じなので。

――自分の思いを歌うよりも、情景を描くほうに興味がある?

田中:そっちのほうがグッとくるんだと思いますね。その明確な理由はわからないですけど、まあ、好みじゃないですか(笑)。

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