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成馬零一『世界の終わりのいずこねこ』映画評

いずこねこ主演映画が描く、2.5次元のリアリティ 荒唐無稽ながらも生々しい物語を読む

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今回の映画を最後に「いずこねこ」プロジェクトを終了する茉里。

 10月24日。渋谷PARCOパート1にあるソーシャルTV局「2.5D」のサテライトスタジオにて、『世界の終わりのいずこねこ』のワールドプレミア上映がおこなわれた。

 いずこねこは、サクライケンタの楽曲を茉里が歌うことで、グループアイドル全盛の中で異例の盛り上がりを見せたソロアイドル。そんな、いずこねこの世界観を映画にするという目的ではじまった企画だったが、今年の3月に活動終了を発表したことで、結果的に「いずこねこ」プロジェクトを締めくくる映画となった。

 監督は、神聖かまってちゃんやうみのてのライブ動画をYOUTUBEに次々と投稿することで注目された竹内道宏。脚本はマンガ家の西島大介。

 本作は伝染病と隕石の衝突によって滅亡寸前の日本を舞台に、ネットアイドルとして活動する女子高生のイツ子(いずこねこ・茉里)の姿を追った物語だ。サクライケンタの歌詞の中にあるディストピア観はもちろんのこと、脚本を担当した西島大介のSFテイストの世界観とかわいいキャラクターたちの世界が、実写映画の中で展開されている。

 00年代にセカイ系と言われた『ほしのこえ』や『最終兵器彼女』を思わせる、少し懐かしい物語だ。そこに東日本大震災以降の廃墟のイメージと、盛り上がりを見せるアイドルカルチャー、そして、ニコニコ動画やユーストリームといった動画配信を接続することによって、2010年代前半の空気をビビッドな形で体現している。

 ほとんどの出演者が演技未経験だったが、主演の茉里を筆頭に、うまい具合に物語にハマっている。壮大なスケールの作品だが、商業映画としては、低予算で作られた映画である。しかし、無駄な要素は極力排し、無理のない俳優の見せ方と、街や廃墟の美しいレイアウトによって高い完成度を保っており、竹内監督の演出力の高さに驚かされる。
 
 本作は基本的には、いずこねこの飼い主(ファン)に向けて作られたアイドル映画だ。劇中の茉里は女優として魅力的で、サクライケンタによる劇伴は切なくも美しいものに仕上がっている。その意味で、飼い主を満足させるという課題は100%クリアしている。

 しかし、ファンでない人が「自分には関係ない作品だから見る必要がない」と考えているのだとしたら、それはあまりにも勿体ないことだと思う。実は本作は、アイドル映画という器の中に、様々な文脈が混在する奥行きのある作品なのだ。

     
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