9nine、武道館公演で見せた「ガールズポップの本質」とは? 自由奔放なユニットの個性を追う

9nine

 

 2014年現在のガールズポップスシーンを語る上で、もっとも難しい設問の一つは「9nineの魅力を一言で的確に表現せよ」ではないだろうか? 結成から9年、幾度かのメンバーチェンジを経て、グループとしてはベテランの域にさしかかろうとしている彼女たちだが、昨今の活動はファンの想像を越える部分もあり、さまざまな憶測や議論を呼んでいた。

 昨年11月には、なんと新聞広告の一面を使って、9か月以上も先に行われる初の武道館公演を告知。「大箱をやるという目標を掲げて勢いをつける必要がある」と、その大胆なプロモーションを評する声がある一方、「いくら"9"年目のアニバーサリーイヤーだからって無謀では?」と、急速に見えるスケールの拡大を心配する声もあった。しかしその後、ヒットドラマ「リーガルハイ」のオープニング曲となった『Re:』、そして話題のTVアニメ「マギ」のエンディング曲となった『With You / With Me』と続けてリリースし、自己のシングル売り上げを更新。4月に行われた中野サンプラザのライブチケットも完売し、シースルースクリーンを使用したステージングが喝采を浴びるなど、着々と武道館公演へ向けて勢いを増していた。

 もっとも印象的だったのは、2014年上半期ガールズポップスアルバムとしては最大の実験作にして野心作『MAGI9 PLAYLAND』の発売である。9nineはこれまでも積極的にEDM的なエレクトロサウンドを楽曲に取り入れてきたグループではあったが、あくまでトッピング的な使い方で、良質なガールズポップスにイマドキ感を加えるという感じだった。しかし『MAGI9 PLAYLAND』では、確信犯的にそうした9nineサウンドの構造を逆転させ、EDM的なサウンドストラクチャーの中でどう9nineを表現するのかに注力している。ある意味では非常に実験的な、コンセプトアルバムのような色合いをもったアルバムに仕上がっているのだ。楽曲は全て、OZO氏と101氏という2人のクリエイターだけで制作。つんく♂氏とモーニング娘。、あるいはブレイク直前の前山田健一氏とももいろクローバーZ、そして中田ヤスタカ氏とPerfumeといった、ガールズポップスアーティストと楽曲制作者の強力なタッグによってブレイクスルーを果たしたグループを連想させる制作体制といえよう。実際、9nineの楽曲の質感は明らかに激変している。

 これらの流れを統合すると、9nineは明らかにこれまでとは異なる形態へとメタモルフォーゼしようとしていることが伺える。世界最初のアイドルグループといえるTHE BEATLESが、実験作「ラバーソウル」によってアーティストへと変貌していったように、9nineもまた「知る人ぞ知る良質ガールズポップスの担い手」という曖昧な立ち位置から、野心作『MAGI9 PLAYLAND』によって成長し、より強い「表現者」として自らのあり方を再定義しようとしているように見えるのだ。そうした変化を予感するに足る出来事が、彼女達には起こっていた。

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