泉まくら、DJみそしるとMCごはん・・・「文化系女子ラッパー」の新しさとは? 

 JPOPシーンでラップ/ラッパーという存在が市民権を得てもうずいぶんと経った。ここに来て女性ラップシーンが大きく動いているように感じる。

 これまで日本のラップシーンに登場した女性ラッパーは決して少なくはない。だが、例えば男性グループのスチャダラパーやRHYMESTERのように、長きにわたって活動している人というと実は意外と少なかったりする。いわゆるヒットチャートを騒がせた人という意味で言えば、BENNIE K、HALCALIらが思い出されるほかは、倖田來未やAIが時たまラップ調の楽曲をリリースしているイメージ。そしてどういうわけか、皆さん、セクシーなお姉さん系ばかりが思い浮かぶ(HALCALIはちょっと違うが)。

 そんな中、今年にわかに注目を集めそうなのが、彼女たちとは一線を画すビジュアルや歌詞世界が印象的な、いわば“文化系女子ラップ”なアーティストたち。ここからはその代表選手たちを見ていきたいと思う。

 まず、“文化系女子ラップ”界の急先鋒として注目なのが泉まくら。福岡在住の彼女のキャッチコピーは「ラップをしちゃう普通の女の子」だ。年齢、素顔はすべて非公表。CDジャケットもPVも大島智子の描く女の子たちのイラストで制作されている。女の子の日常の記憶を込めたリリックは、切なくもあり、どこか不安定で危うくもあり。なんとなく下北沢あたりに住んでそうな女の子の姿を想像してしまう。自身も小説を書いているとあって言葉のチョイスにもどこか文学少女めいた匂いが漂い、さながらラッパー版やくしまるえつこといった印象のアーティストだ。

泉まくら 『candle』 pro.nagaco

 続いて昨年のフジロックフェスティバルにも出演したDJみそしる&MCごはん。“&”がついているが女性ひとりユニットで、キャッチコピーは「くいしんぼうHIPHOP」だそう。その理由は「マカロニグラタン」「ピーマンの肉詰め」といった楽曲のタイトルから。しかも、作り方をそのままリリックにするというかなり強引かつ斬新な手法が特徴だ。それもそのはず彼女、女子栄養大卒業の肩書きを持ついわば専門家。トラックがいい意味で素人っぽくあるのも好感が持てる。

DJみそしるとMCごはん『ピーマンの肉詰め』

 意外なバックボーン繋がりだと、現役OL二人組によるエレクトロヒップホップユニット・Charisma.comもじわじわと人気を集めている。彼女たちが得意とするのは「OLの不条理」。完全に同性代の女性をターゲットに見据えているあたりが潔い。力強いリリックとポップなサウンドは、デビューしたばかりとは思えない安定感。ユニット名のとおりOLたちのカリスマとしてヒットチャートを騒がせる日も遠くないかもしれない。

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