「インドア系ならトラックメイカー」など歌うnicamoqが“ライブ配信者”としてブレイク中 稀有な活動スタンスを取る理由を本人に聞いた

ネットレーベル界隈や日本のトラックメイカー周辺だけでなく、TikTokでもバイラルヒットを果たした「インドア系ならトラックメイカー」。同楽曲でボーカリストを務めているnicamoqは歌手やBPM15Qのメンバーとしても活動しているが、ここ最近はライブ配信者としてもブレイクしている、という事実を知っているリスナーは多くないだろう。ライブ配信では、様々で好実績を残しているのだ。
リアルサウンドテックは今回、nicamoq本人に音楽とライブ配信を跨いだ現在の活動について取材する機会を得た。彼女の話や活動スタンスからは、まったく違うジャンルへ飛び込み、そこで結果を残すことができる理由の一端を垣間見られることだろう。
「また下積みから頑張ってみたい」気持ちで始めたライブ配信

ーー自分自身はシンガーやBPM15Qの活動を追っていましたが、ここ最近はライバーとして大活躍していることを知り、とても驚きました。しかも片手間などではなく、かなり強く配信にコミットしているようにも見えます。どうしてここまで本格的にライブ配信を始めようと思ったのでしょうか。
nicamoq:お話しいただいたように、歌手やユニットとして継続的に活動していたんですが、自分のなかでは音楽活動における「下積み」みたいな時期が、一旦終わったような認識なんです。ある程度アーティストとしての形ができたからこそ、もう一度「何かをまた下積みから頑張ってみたいな」という気持ちが湧いてきたんです。そんなことを友人に話していたら「TikTok LIVEが向いてると思うよ」と言われ、それならと始めてみたのがきっかけです。
ーー端から見れば順調そのものでも、あえて大変な下積みをもう一度やり直そう、頑張ってみたいというのは「自分を高めたい」というマインドが強かったんですね。
nicamoq:なんか、このまま何もせずに過ごして行ったら多分ろくでもないな、みたいな思いがどこかにあって。自分にはまだ何かできるはずだと本気で思ったんです。端的に言うと……生きがいがほしかったんでしょうね。
ーー数あるライブ配信プラットフォームの中で、なぜTikTok LIVEを選んだのでしょうか? 以前から他の人の配信などを客観的に見ていて、どう見えていたのかも気になります。
nicamoq:プラットフォームによって特徴が全然違うなとは思っていたんですけど、TikTok LIVEに関しては全然調べずに飛び込んだんです。ただ、TikTokを選んだ大きな理由の一つとしては、自分が音楽で成功し始めたきっかけの一つがTikTokだったんですよね。だから、またその場所に戻りたいな、という気持ちもありました。配信自体は、少しやってみたいなという気持ちはずっとあったんです。それまではインスタライブを自分でちょっとやっていたくらいでした。ただ、最初は全然うまくいかなくて……。まあ、それを望んでいるところもあったので、大きなモチベーションにもなったんですが(笑)。
ーーYouTube LIVEやインスタライブと、TikTok LIVEなどのライブ配信プラットフォームでの配信は全くの別物ですよね。最初はうまくいかなかったとのことですが、どんな壁にぶつかったのでしょうか?
nicamoq:最初は自分の音楽活動を応援してくれているファンの方にも見てもらおうと思っていたんですが、やってみたら全然性質が違うなと痛感しました。これまで応援してくださったファンの方には申し訳ないのですが、ここでは全く違うやり方で、イチから新しいリスナーの方を増やしていかないといけないと思い、この場所では「配信者としてのnicamoq」のファンを獲得していく、というスタンスに切り替えたんです。
ーー現在はプロフィールにも「出すのは声とスコアだけ」とあるように、ご自身の顔出しは基本的にしない方針ですが、そのスタイルに行き着いた経緯を教えてください。
nicamoq:実は、最初は普通に顔出しで配信していたんです。でも、うまくいかない原因の一つが「顔が出ていること」なんじゃないかと思い始めていて。うまくいっている人はちゃんとうまくいっているんですけど、私の場合は毎日同じことの繰り返しになっている気がして。見た目や服装を褒められて、それを返したらまた次の日も別のリスナーさんと同じ会話があって……という、当たり障りのない会話が続くだけの状態だったんです。
ーーそれがどう変わったのでしょうか?
nicamoq:ちょうどその時期に体調を崩してしまって、アレルギー反応で顔が腫れ上がってしまったんです。どうしても顔が出せないから、仕方なくカメラをオフにして配信した時に「あれ? なんか普通に会話ができているぞ?」と気づいたんですよね。
ーー顔を出さないことで、リスナーさんからの質問ややりとりの内容が変わったと。
nicamoq:そうなんです。顔を出している時の質問って、ほとんどが見た目に関することなんですよ。「今日の髪の毛可愛いね」とか「その服可愛いね」とか、「どんな人が好きなの?」とか。ただ、顔を隠した途端に「なんで配信やってるの?」といった本質的な質問が増えたり、良い意味で距離感の近いコメントが増えたりしたんです。
ーー見た目の情報がなくなったことで、リスナーさん側が言及する際も内面や人間性そのものに関するものが増えたんですね。面白い。
nicamoq:私自身もそういった方向性の質問に答えたり、お返事をしているのが面白くて、会話のラリーも続くようになって。「これはずっと顔を隠した方がいいかも」と思い、そこからガラリとスタイルを変えました。
ーー現在もそのスタイルは継続されていますが、顔出しとバーチャル的な姿の使い分けはどのように考えていますか?
nicamoq:元々画像の方が面白いとは気づいていたんですけど、しばらくは顔出しと画像の両方をやる「二刀流」みたいな感じでやっていました。でも、ある程度ランクが上がったタイミングで顔を出さない方に振り切った形ですね。とはいえ音楽活動のnicamoq名義では顔出しをしているわけなので、表彰式のようなオフラインの場には普通に参加しますし、顔出しの方とコラボする時には隠さないようにもしています。あくまで配信のスタイルとして、顔出しをしない形が会話が上手くいくからそうしている、というスタンスです。
ーーご自身の中で「明確にファンがついたな」「ライバーとしてのコツを掴んだな」と感じたタイミングはいつ頃でしたか?
nicamoq:正直、今もまだ模索中ではあるんですけど、ちゃんとうまくいき始めたなと実感したのは昨年の秋くらいですかね。それこそ、顔出しはしないという方向に完全に絞ってからだと思います。
音楽とライブ配信は「自分とファンの関係性の形が違う」
ーーライバーとして実績を残し、年間を通した大きなアワードでも上位に入るなど明確な結果が出たことで、モチベーションやマインドの変化はありましたか?
nicamoq:私、自分がやろうと決めたことに対しては、ある程度結果が出るようになるまでやり切るタイプなんです。なので、昨年秋以降は「自分の描いていたシナリオにやっと乗ってきたな」という感覚がありましたし、そこに楽しさを見出していましたね。
ーー顔出しする・しないの判断もかなり早かったようにも思えますし、自分で上手くいかない理由を分析して改善するスピード感も素晴らしいですよね。スタイルを変えたこと以外に、ここまで短期間で成功した要因はなんだと思いますか?
nicamoq:配信のことで誰かに相談したことってあまりなくて。全部やってみて、ダメだったことはダメだと見切りをつけて、成功する可能性があるものは全部やり尽くしたからかもしれません。たとえば、ライバーは“頑張っている姿”を見せることで応援していただける職業だとも思っているのですが、それをわかりやすく証明するのは「毎日配信すること」だと思うので、それは1年間しっかりと続けました。そのうえで、いつまでも下積み的に頑張る姿を見ていただく段階は終わったと思うので、ここからはステップアップしていく姿をリスナーのみなさんに見せていきたいです。
ーー毎日長時間の配信を長期間続けるというのは、コンディション管理も含めて非常に難しかったのではないでしょうか?
nicamoq:配信中はずっと同じ姿勢で動かないので、三半規管がおかしくなっちゃったりしましたね。ライバーって簡単なようにも見えるんですが、意外とそういった身体への負担はあるんだなと驚きました。ただ、「自分のコンディションとも向き合いながら、トップライバーを目指さなければいけないな」と思って必死にやっていました。
ーーそこまでして頑張れた原動力は何だったのでしょうか?
nicamoq:リスナーの方から、だんだんギフトを投げていただけるようになったことは大きいですね。ギフトは有償のものでもあるので、自分自身もその重みもわかりますし、投げていただけているのだから「辛いけどやり抜かないとダメだな」と思いましたし、「応援してくれている人の気持ちに応えられるように頑張らなきゃいけない」という気持ちで乗り越えられました。
ーー先ほど音楽活動のファンの方とライバー活動のファンの方は性質が違う、といったニュアンスの話がありました。具体的にはどう違って見えるのでしょうか?
nicamoq:ファンの性質というよりも、自分とファンの関係性の形が違うという感じですね。アーティスト活動って、自分の発信をどう受け止めてもらうかという片方向的な矢印があって、そこに対してリアクションをいただく、という構図だと思うんですが、ライバーの場合は毎日話す人も出てくるようになって、家族や親のように近い距離感に思えるんです。自分の人生に関わっている人、という繋がりの深さを感じるというか。
ーーそうなってくると、nicamoqさん自身の価値観や人生観にも変化が生まれそうですね。
nicamoq:実際に変化はありましたよ。今まで人に頼ることってあまりなかったんですけど、リスナーさんと接するようになって、頼らせてくれる人がいることのありがたさを感じましたし、自分も背中を任せられる人が増えた感覚です。それ以外にも人生の学びが多いなと感じる日々ですね。
ーー音楽活動とライバー活動の「両立」についてはどうお考えですか?
nicamoq:最初の1年間は完全に配信の方に集中して、今年からは両方をうまくやっていく感じで動いています。今はまだ別物だと考えてやっていますが、今年から来年にかけて、うまくそこが混ざり合っていくと面白いですよね。実際に配信がきっかけで音楽のライブに来てくれる人は増えましたが、アーティスト活動のファンの方はまだ配信のほうにはあまり慣れていないようにも感じるので、そこは今後の課題かもしれませんね。
「ライブ配信業界のイメージを覆していきたい」
ーー今後の目標や、nicamoqというプロジェクトをどのように広めていきたいかについて教えてください。
nicamoq:一度TikTok経由でブレイクしているものの、今度はライブ配信と音楽を含めて「TikTokから出たアーティスト」と認知されるようになりたいですね。楽曲とライブ配信の両方で「人の人生を変えられるアーティスト」になりたいです。
ーー音楽活動とTikTokといえば、最近BPM15Qの「はくちゅーむ」がバズっていますよね。10年前の曲がこのタイミングで盛り上がるのは、nicamoqさんの直近の活動も影響しているような気もするのですが……。
nicamoq:いやいや、とある女子高生の子たちが2人で踊ってくれたのがきっかけだと思いますよ。ただ、今後はライバーとしてブレイクしたから曲を出すというだけではなくて、これまで何度も楽曲がバズってきたクリエイター・シンガーが、本職として楽曲をリリースするというスタンスなので、そこはほかのライバーさんとの差別化にもなると思います。
ーーライバーとしての目標はありますか?
nicamoq:ライブ配信業界自体、まだまだエンタメ業界のなかでは若干下に見られているところがあると思っていて。エンタメ業界のなかで活動してきた人間としては、そこのイメージを少しずつ覆したいなという気持ちがありますし、その価値観を覆していく人たちの代表として先頭に立ちたいと思っています。
ーー例えばですが、ライブ配信業界の代表として、テレビなどの他メディアへ顔出しで出演していく、といった動きもしてみたいと思いますか?
nicamoq:まさにそうですね。バラエティ番組とかにも出ていきたいです。あとは『KUNOICHI(『SASUKE』の女性版)』とか。
ーーまさかの『KUNOICHI』。トークではなく体を張る方向ですか?(笑)
nicamoq:普段は配信で身体を張ってますから(笑)。よく「座ってるだけ」と言われたりもしますが、それがどれだけ大変かを証明するために『KUNOICHI』に出たいです(笑)。
ーーなるほど(笑)。ここまでお話を伺ってきて、アーティスト活動とライバー活動、リアルとバーチャルを行き来する現在のスタイルは、ご自身の本来の姿を表現する場として機能しているように思えますが、どうでしょうか?
nicamoq:私自身、これまでも音楽だけではなく、 X(旧:Twitter)での自由な発言やインスタライブでのよくわからない行動がバズったこともあったので、自分が音楽だけの人間だとは思っていなくて。そこで表現していた・バズっていた「素の自分」がライブ配信という活動形態と相性が良かった、ということなんだと思います。なので、表現者としての自分は音楽で、素の自分はライブ配信で、それぞれ愛してもらえると嬉しいです。






















