EA買収で加速する“ゲーム大国”サウジアラビア 王族主導の投資戦略は業界をどう変える?

オイルマネーによって再編されるゲーム業界

 世界のゲーム市場の中心地が、サウジアラビアになる日も近いかもしれない。『Apex Legends』などでお馴染みのエレクトロニック・アーツ(EA)が、同国の政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)を始めとするコンソーシアムによる買収手続きの完了を報告し、大きな話題を呼んでいる。

 今回の買収は、少数株主としてEAに出資を続けてきたPIFが、米国の大手投資会社「シルバーレイク」や、ドナルド・トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏の投資会社「アフィニティ・パートナーズ」と組むことで実現したもの。買収後もEA本社の所在地などに変更はなく、会長兼CEOも引き続きアンドリュー・ウィルソン氏が務めるという。

 買収合意は2025年9月の時点で発表されており、同年12月にはEA株主特別総会で株主の承認を得ていた。その上で8月4日の発表によって、正式に買収完了が報告された形となる。(※)

EA、EVOへ広がるサウジ資本――背景にある「ビジョン2030」

 ここ最近では2026年2月にも、世界最高峰の格闘ゲーム大会「EVO」の買収にサウジアラビアの政府系ファンドが関わっていたことが話題を呼んだばかり。PIFの子会社「キディヤ・インベストメント・カンパニー」の傘下にあるRTS社が、「EVO」を共同で運営していた「ノッドウィンゲーミング」の持ち株を取得し、完全買収に至ったという流れだ。

 こうした一連のゲーム業界への投資の背景にあるのは、サウジアラビアが推進する国家改革戦略「ビジョン2030」。同国はこれまでの石油依存から脱却し、教育やインフラ、観光、スポーツ、エンタメなど、より多角的な経済活動を目指している最中だ。その一環として、eスポーツへの多額の投資が行われているのではないかと言われている。

“ゲーム大国”を動かす王族たちの投資戦略

 とはいえ「ビジョン2030」のことがあるとしても、ここまでeスポーツに比重を置いている要因としては、同国がゲーム大国であることも関係しているだろう。サウジアラビアは国民の約7割がゲーマーという説があるほどの国で、現在ゲームの市場としては世界最大級。そして何より王族も自他共に認めるゲーマーとして有名だ。

 たとえば今回EAの買収を行ったPIFは、サウジアラビアの首相でもあるムハンマド皇太子が管理する政府系ファンド。2021年に『THE KING OF FIGHTERS』や『餓狼伝説』といった格闘ゲームでお馴染みのSNKを買収したのも、ムハンマド皇太子が設立した財団の傘下にある企業だった。

 また2025年に『Pokémon GO』などを手掛けたナイアンティックがゲーム事業を売却したのも、PIF傘下にあるゲーム会社のスコープリーだ。

 さらにムハンマド皇太子は非営利団体「eスポーツ財団」を設立し、2024年より同財団が主催する世界最大規模のゲーム大会「eスポーツワールドカップ」を開催。eスポーツの中心地がサウジアラビアになりつつあるほどの勢いとなっている。

 なお皇太子だけでなく、サウジアラビアのeスポーツ連盟会長を務めるファイサル王子もゲーマーとして有名。2018年に開催された「EVO Japan」にお忍びで来場し、観戦していたことでも話題になった。

 まさに王族主導の国家事業として、eスポーツに多額の投資を行っているサウジアラビア。いわばオイルマネーによって、ゲーム業界の再編が進んでいる状況とも捉えられるだろう。この巨大なゲーム市場が、世界や日本国内のゲーム開発にどのような影響をもたらすのか。今後も注目していきたい。

参照

※ https://www.ea.com/news/ea-announces-completion-of-acquisition?isLocalized=true

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