GON主催の『VALORANT』カスタムで再認識、我々は“2022年のZETA DIVISION”に囚われている——そろそろあのときを超える熱狂を

9月28日、元FENNELのGONが『VALORANT』のカスタムマッチを主催した。題して「2022 ZETA vs 2025 FENNEL」。
集まったのは、2022年に世界3位へ駆け上がったZETA DIVISIONからLaz、crow、Dep、SugarZ3ro、TENNNの5人。対するは2025年のFENNELから、GON、Aace、Hals、MrTenzouEz、nethの5人である。異なる時代を象徴する2つのロスターが、公式戦では決してあり得ない組み合わせで対峙した。見届け人として、『VALORANT』シーンを長く実況してきた岸大河とyukishiroが神視点配信を担当した。
色あせても決して忘れられないZETA DIVISIONのシンデレラストーリー
トロフィーも、昇格も、契約もかかっていない。それでもこのカードが注目を集めたのは、日本の『VALORANT』シーンがこの4年で積み上げてきた時間の層を、一度に見せてくれるからだろう。
なぜ、この2つのロスターがこれほど特別なのか。そもそも『VALORANT』が日本でeスポーツタイトルとして根強い人気を獲得したのは、なぜだろうか。
多くの人が、その理由として2022年のZETA DIVISIONを挙げるだろう。国際大会『VALORANT Masters Reykjavík 2022』での世界3位。日本eスポーツ史に残るあの快挙が、日本におけるこのゲームの位置づけを決定的なものにした。
ZETA DIVISIONはそれまでも国際大会への出場経験はあったが、プレイオフ突破には及ばなかった。2021年のMastersで大敗を喫したあと、配信インタビューでLazは「最悪の結果でした」と振り返っている。続く大会への出場権を得られないどころか、世界の壁をまざまざと見せつけられたすえの言葉には、我々が想像できないほどの悔しさや屈辱感が交ざっていただろう。
翌2022年、既存のLaz、crowを主軸に、Dep、SugarZ3ro、TENNNが加わった。当時国内屈指の評価を受けていたデュエリスト2人とコントローラーが合流し、誰しもが「ドリームチームだ」と思ったはずだ。堅調に国内を制し、再び世界へと挑んだ。ところがその道のりは、いきなり出鼻をくじかれる。立ちはだかる韓国の強豪DRXに、大敗を喫したのだ。誰しもが「このドリームチームをもってしても世界の壁は超えられないのか」と肩を落とした。
ところが後がないNinjas in Pyjamas(NIP)戦、相手にマッチポイントを取られながらも、ギリギリの大逆転を見せた。その後は覚醒したようにTeam Liquid、DRXとのリベンジ戦、Paper Rexといった名門チームを次々と撃破するシンデレラストーリーをみせた。当時優勝したOpTic Gamingに敗れてベスト3で幕を下ろしたものの、そのドラマは多くのファンを、いやZETAや『VALORANT』のファンですらなかったゲーマーたちをも魅了した。アイスランドでの開催で時差もあるなか、Riot Gamesが日本から見やすいようにと試合の前後を入れ替える計らいを見せるほど、その熱狂は現地にも届いていた。
タイミングも良かった。パンデミックによる巣ごもり需要でPCゲーム市場が伸び、ストリーマーやVTuberにも視線が注がれた。とりわけ『VALORANT』は『Apex Legends』流行の流れを汲み、バトルロイヤルに次いで5v5の爆弾シューターを多様な層に浸透させた。
SHAKAやk4sen、StylishNoob(現在の関優太)といった人気ストリーマーによるウォッチパーティ、急遽開催されたパブリックビューイング、そしてテレビ番組での報道。競技シーンの外側にいた層にまで、あの熱狂は届いていた。
あれから4年が経ち、当時のロスターでZETA DIVISIONに残っているのはSugarZ3roのみである。DepとTENNNは別のチームへ移籍し、Lazとcrowは現役を退いた。
おそらく「メンバー」という意味において、あの5人を超える布陣は、いまだ存在していない。いっときの夢のようだった、と言ってしまえばそれまでだが、その表現が的外れでないほどに、あの年は特別だった。
「あの頃」が同じ画面に並ぶ
一方の2025 FENNELは、『VALORANT Challengers Japan』の人気を支えたチームである。『VCT Pacific』を経験したneth、屈指のエンターテイナーとしての顔を持つGON。彼が最後にプロとして過ごしたチームだ。
残念ながら、いずれも年を締めくくる戦いで敗れ、世界への挑戦権を手にするには至らなかった。それでもFENNELは、チームが主催するクラブのような雰囲気を持つ唯一無二の「チアリングパーティ」をはじめとしたブランディングで多くのファンを獲得し、国内『VALORANT』シーンの人気を支えたチームのひとつであることは間違いない。
ここまで語れば、この2つのロスターが日本の『VALORANT』シーンにおいて重要な存在であったことは、理解いただけるだろう。今回のように「あのとき」が再び集結するきっかけを作ったGONには、感謝したい。
もっとも、「あの頃」といえば、ベスト3のZETA DIVISIONを破ったNORTHEPTIONや、Dep在籍時のREJECTなど、ほかにも多くの名ロスターが存在する。なにかのきっかけでまた集まってくれたら嬉しい。
老人ホームと、夫婦漫才
試合そのものは、FENNELが圧倒する内容となった。スプリット、サンセットと連取し、勝負を決めている。
ZETA側は初戦のスプリットで、2022年当時の構成をそのまま採用した。当時Team LiquidやPaper Rexを撃破した、あの並びである。結果としては振るわなかったが、随所で光るミクロの連携や、互いの動きを把握しているような信頼感は健在だった。
そして何より、この5人が和気あいあいと『VALORANT』をプレイしている姿。そこにJUNiORとXQQの両コーチがツッコミを入れる様は、まるで夫婦漫才のようだった。当人たちも冗談めかして「老人ホーム」と呼んでいたが、その気安さこそが、4年という時間の証明でもある。
一方のFENNELは、至極真面目だった。2022年の世界ベスト3に勝つという、明確なプライドを感じさせる戦いぶりである。GONはいまやエンターテイナーとしての振る舞いで、『VALORANT』とは異なるコミュニティからも支持を得ている。しかしこの日は、味方のプレイにきちんとリアクションを返しながらも、指示の場面では声のトーンを切り替える「真面目モード」。配信で見せる姿とのこの対比も、また面白い。
最終マップのヘイヴンは、勝敗が決したあとのマップだったにもかかわらず、接戦となった。10-9の場面でLazがニューラルセフトとサイバーケージを組み合わせてトリプルキルを奪い、同点に追いつく。そこからZETAが連取して13-10。2022年を思わせるスロースターターと意地を見せる形で幕を閉じた。
花はしばらく咲かずとも
繰り返すが、2022年のZETA DIVISIONの快挙とその熱狂には、噛み合いもあった。日本が『VALORANT』に熱い視線を注いでいた時期や、パンデミックの巣ごもり需要など、多くの要素が重なった結果でもある。しかしそれが、日本の『VALORANT』という畑を耕し、水をやり、草木を茂らせ、花を咲かせた。これに囚われている人々を責めることはできない。
日本チームは、公式大会において久しく国際大会の舞台へ戻れていない。最後の出場は2023年9月の『Champions LA』である。奇しくもこのときのZETA DIVISIONは2022年と同じロスターであり、これがこの5人で挑む最後の国際大会となった。
ところが『VALORANT』の盛り上がりは健在だ。国際大会では万を超える視聴者数を保持し、2025年に日本で行われた『Pacific Finals』もチケットが完売し、「LaLa arena TOKYO-BAY」を大きな歓声で満たした。これも、土壌が豊かであることを示す証拠だ。
しかし、そろそろZETA DIVISIONの世界ベスト3を超えるインパクトが欲しいというのが、コミュニティの正直なところではないだろうか。願わくば数年後、「あの頃のメンバーが良かった」と言われるような素晴らしいロスターが、さらに生まれてほしい。
花がしばらく咲かなくとも、その蕾は実っている。再び、いや、あの感動を超える熱狂を生み出すことができるのか。Riot Gamesと『VALORANT』コミュニティが、次の渦をどう作っていくのかを見守りたい。



























