『Weekly Virtual News』(2026年7月15日号)
仮面ライダー俳優・井上正大が“リベンジ開催”したVRライブ、夏のVket――注目のVRChatイベントを一挙にレポート
VTuber、XR技術、メタバース――様々な“バーチャル”に関するトピックは、日々多く生まれている。企業による巨大な施策から、個人によるマイクロだが熱気あふれる取り組みまで、その規模は様々だ。
連載「Weekly Virtual News」では、一週間のうちに起きた“バーチャル業界”に関連する様々な話題をピックアップ。ニュースとして紹介するだけでなく、筆者の独断と興味関心からフックアップしたいトピックも取り上げる。
今年は3Dモデルのおみやげが多め 夏の『Vket』会場をめぐる
少し前の連載でも取り上げていたVRChatイベント『バーチャルマーケット2026 Summer』が、7月11日からスタートした。企業主導の『VRChat』イベントでは定番かつ最大級として知られる展示即売会だ。
筆者はさすがにまだ全会場をめぐりきれていないが、企業会場は2つとも訪問を終えた。全体規模としてはほどほどで見やすい部類。ことしは多くの出展企業で「おみやげ」が用意されていたのが特徴的だ。
アンケートなどに回答すると、出展企業にちなんだオリジナル3Dモデルが入手できるところが多く、一通り集めるとアバター用衣装やワールド用アセットなどがかなりそろう。初心者のうちに訪問しても、ある程度のベテランになっても、企業公式アセットはどこかで役立ちそうだ。
力の入った出展コンテンツも見られる。一例として、青山商事は俳優・井上正大を監督・モーションアクターに招いたヒーローショーを開催。先々週の連載でも紹介したが、実際に出されたものを見てみるとなかなかおもしろい。
5分ほどの短い時間だが、精度の高いモーションはもちろん、光と闇のヒーローのどちらかを選んで応援することでエンディングが分岐。ヒーローも男女で選択できるため、何度か足を運ぶインセンティブが生まれる。おみやげは洋服の青山で実際に販売されているメンズスーツ/レディーススーツの3Dモデルだ。
他にも、なかなか現実では機会のない「火災報知器を押す」体験ができ、おみやげに火災報知器3Dモデルがもらえる能美防災、360度映像を用いたジェットコースター体験を提供し、夏にぴったりな3D衣装を2着も配布する富士急行などが個人的には興味を引いた。「会場を離れても意識させるものがある」施策は、VRの展示会でもやはり有効だろう。
俳優・井上正大のライブ再び トラブルなし、さらにパワーアップ
『バーチャルマーケット2026 Summer』にも関わった俳優・井上正大は、リベンジの舞台を迎えた。盛り上がったもののトラブルが多発した5月上旬のライブを、しっかり完遂することを目的に定めた、その名も『井上正大デバッグフェス』を7月12日に開催した。
5月のライブを見届けた身としてぜひ今回も見届けようと思い、筆者も現地に赴いた。前座にあたる公募パフォーマーのステージを経て、ライブは10分程度押しで開幕。結論を先に書くと、今回は一切のトラブルなしで無事に完走した。
完遂を目的に掲げてはいたが、実際には新たな曲の追加、有志と『VRChat』内で制作中の特撮映像作品の一部上映、それに連動する新規演出など、5月公演のアップデートとも言える内容に仕上がっていた。これらを一切のトラブルなく観覧してみると、『仮面ライダー ディケイド』から名を馳せた俳優が、『VRChat』の地でどんなことを成し遂げたいか、よくわかる流れになっていた。
そしてライブの終わり際には、秋〜冬に新たな大型フェスの開催を目指していることも宣言された。実は先日、筆者は『VRChat』内で井上正大本人と遭遇したのだが、わずかな会話からもやりたいことが尽きないパッションを感じられる人柄であった。その姿を見ていた身としては、実に納得の“第二章始動”といったところだ。次もぜひ期待したい。
『VRChat』ホーム空間が七夕仕様に 公式イベントも開催
『VRChat』公式では、予告されていた七夕期間が7月7日からスタートした。デフォルトのホームワールドが七夕仕様(やや“不思議なニッポン”テイストだったが)となり、事前公募されていた短冊が飾られた。七夕にちなんだ公式アイテムの販売もスタートしている。
これだけにとどまらず、「日本のコミュニティへ」と呼びかけて、アップデートされたホームワールドを舞台にした七夕イベントも開催された。特に7月11日には『VRChat』日本チーム主催のイベントとして、複数の会場が展開される大規模な交流イベントも開催されていた。その日の23時11分には花火の演出つき。このタイミングで日本地域の最大同時接続数も更新されたようだ。
🎋日本チーム主催イベント「VRCTanabata七夕」🎋
七夕テーマの公式ホームワールドを会場に、明日 7/11(土)22時〜24時で開催!
願いごとを書いたら写真を撮って投稿📸
23時11分にみんなで花火をみよう🎆協力:SpiceOfVRinks様
参加方法:Group+インスタンスにJoin第1インスタンス/配信あり… pic.twitter.com/V6bxLSeDqo
— VRChat 日本語公式 (@VRChat_JP) July 10, 2026
単なる空間設置だけでなく、イベントまで仕掛けているのは、今までの『VRChat』日本展開にはあまり見られなかったものだ。以前も触れたが、こうした細かな動きから『VRChat』がいかに日本へ注力したいかがうかがえる。
XR企業・STYLYが個人HMD向けアプリを配信停止注力項目を刷新
ほかに業界動向として目に留まったのは、XR事業を展開するSTYLYの動向だ。同社は7月8日、市場動向を踏まえ、ロケーションベースのコンテンツとスマートフォンARへ注力し、一方で個人向けヘッドマウントディスプレイ向けのアプリ配信停止・機能停止を発表した。
【STYLY提供サービスの変更および一部機能の終了に関するお知らせ】
この度STYLYは、近年のXR市場環境の変化を踏まえ、開発リソースを「#LBE(ロケーションベースド・エンターテインメント)」および「スマートフォンAR」領域へ集中させる決定をいたしました。… pic.twitter.com/QSVlnSe5b1— STYLY (@STYLY_XR) July 8, 2026
個人向けアプリ/プラットフォームとしてのSTYLYは、Webブラウザ、モバイルアプリ、VRヘッドセットなどからアクセスでき、専用ツールを使えばノーコードでXRコンテンツを制作・公開できる環境だった。長年多くのXR開発者が活用した場だけに、業界関係者からは一つの時代の終わりをさみしく思う声がいくつか見られた。
一方、コロナ禍がすっかり落ち着き、外出も問題にならない時勢となった2026年において、ロケーションベースXRコンテンツやスマートフォンARの需要はたしかに増加しているはず。ある程度は納得のいく方針決定として、同社の動向は引き続き見ていきたい。