東京ドーム6~8個分の広さに巨大カーサイロや約5万点の部品倉庫 フォルクスワーゲン車の「聖地」豊橋本社に潜入

フォルクスワーゲンの工場見学ツアー

 2026年6月、愛知県豊橋市にあるフォルクスワーゲン グループ ジャパン本社で、『ゴルフGTI』の誕生50周年を記念したファンイベント「GTI FAN FEST 2026」が開催された。

 全国から抽選で選ばれたGTIオーナーとその家族、友人ら約230組が参加し、歴代『ゴルフGTI』の展示やトークショー、試乗会など、GTIの魅力を体感できるさまざまな企画が実施された。

 そのプログラムのひとつとして用意されたのが、普段は一般公開されていないフォルクスワーゲン グループ ジャパン豊橋本社(インポートセンター)の見学ツアーだ。海外から日本へ運ばれてきたフォルクスワーゲン車が最初に到着する場所であり、納車前の最終点検や純正部品の物流を担う中枢施設でもある。

 筆者も実際に見学ツアーへ参加してきたので、GTIオーナーから「聖地」とも呼ばれる豊橋本社で見ることができた車両の品質管理や物流の仕組みについてレポートしたい。

普段は見られない納車前の品質管理を見学

ずらりと並んだ車の数々

 豊橋本社の敷地面積は約30万平方メートル。東京ドーム6〜8個分に相当する広さがあり、そのスケールにまず驚かされる。

 まず案内されたのは、海外から運ばれてきた車両が到着する専用埠頭だ。海外から運ばれてきた車両を積んだ船は月に4隻ほど入港し、1日あたり約1,500台を荷揚げできる体制を整えているという。現在はスエズ運河を利用できない影響もあり、日本へ到着するまでには20〜50日ほどかかるケースもあるそうだ。

点検の様子

 埠頭から運ばれた車両は、そのまま「TSC(テクニカルサービスセンター)」へと移され、日本のユーザーへ納車される前の最終点検が行われる。

 TSCではフォルクスワーゲンのほか、アウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ポルシェの5ブランドを取り扱っており、ブランドごとに細かな違いはあるものの、基本的には共通した検査工程を経て全国の販売店へ出荷される。

イベント用に展示された車
当日はイベントということで、同じグループのベントレー、ランボルギーニ、ポルシェのクルマも特別に展示されていた

 まず、輸送時に装着されていた白い保護カバーを取り外す。この保護カバーは廃棄するのではなく、「サーマルリサイクル」によって再利用されるなど、環境にも配慮した運用が行われている。

内部を確認

 続いて、スイッチ類やエアコン、パワーウインドウなどの電装系・各種機能を確認。その後は約20kmのテストドライブを実施し、段差のある路面で異音が発生しないかを確認するほか、時速80km程度まで速度を上げてブレーキ性能などもチェックするという。

 テストを終えた車両は洗車ラインへ進み、外観検査を実施。洗車に使用する水の約70%が再生水として利用されており、ここでも環境負荷の低減が図られている。外観検査では1台あたり約5分かけてボディ全体を確認し、小さな傷であればその場で補修。ライン上で対応できない場合は別工程で修理が行われる。

 さらに、日本国内で登録するために欠かせない「型式完成検査」も実施される。車体番号やエンジン番号、マフラーなどが日本の道路運送車両法に適合しているかを確認する工程だ。

 TSC内のほかのPDI(納車前点検)作業は外部委託スタッフが担当する一方、この型式完成検査だけはフォルクスワーゲン グループ ジャパンの社員が直接行う。品質管理の中でも、とりわけ重要な工程として位置付けられていることが分かった。

工場内の様子

サイロ内部を映したディスプレイ

 検査を終えた車両はバッテリーを充電した後、自動立体保管設備「カーサイロ」へ運ばれる。第1カーサイロは約3,500台、第2カーサイロは約1,300台を収容可能で、ベントレーやランボルギーニといった大型車にも対応。1時間あたり約120台を入出庫できる能力を備え、出荷指示に合わせて全国の販売店へ送り出されていく。

 残念ながら今回はカーサイロが実際に稼働している様子を見ることはできなかったが、巨大な設備を前にすると、日本全国へ届けられるフォルクスワーゲン車を支える物流拠点の規模を実感した。

約5万点の部品を保管する巨大パーツデポへ

パーツデポ

 続いて案内されたのは、全国のアフターサービスを支える「パーツデポ」。ここには約4〜5万点もの部品が保管されており、日本全国の正規ディーラーや整備工場へ日々発送されている。

 部品は主にドイツ・カッセルにある世界中央倉庫から船便や航空便で届き、イギリスからの部品もこの施設でまとめて管理される。船便では40フィートコンテナを1日4本、週20本受け入れられる能力を備えているという。

倉庫内部

倉庫内部

 倉庫に入って最初に目を引くのは、8メートルもの高さがある天井だ。一般的な国内の物流倉庫よりかなり高く、ドイツの倉庫基準に合わせて設計されている。

 今回のツアーでは、高所専用のフォークリフトが最上段までパレットを運ぶデモンストレーションも行われた。天井近くまで荷物を持ち上げる様子は想像以上に迫力があり、無事に入庫を終えると参加者から拍手が沸き起こった。

倉庫内で使われる電動フォークリフト
倉庫内では電動フォークリフトを使用し、環境に配慮。ちなみに自社製なのかと思いきや、トヨタ製であるとのこと

 倉庫内では、大量の部品を効率よく保管・出荷するため、小物部品のピッキングを担う専用の自動機が導入されている。

 必要な部品をシステムで指定すると、機械が該当するケースを自動で取り出し、作業者の手元まで搬送する。すべての部品と保管棚にはバーコードが付けられており、部品の保管場所もシステムで一元管理。担当者によると、この自動機は日本市場の重要性が認められ、ドイツ本社の投資によって導入された設備だという。

働いているスタッフ

 このパーツデポから発送される段ボールは1日平均約3,500箱。全国35拠点の正規販売店をはじめ、整備工場などを含む約700カ所へ部品が届けられている。

 また、イベント会場で販売されていたGTIグッズも、普段はこのパーツデポで保管・出荷されているという。クルマだけでなく、オーナー向けグッズも同じ物流網によって全国へ届けられていることを知ることができた。

特別カラーの『ビートル』
パーツデポ入り口に飾られていた特別カラーの『ビートル』

 普段は見ることのできない物流や品質管理の現場を実際に歩いてみると、日本全国へ届けられるフォルクスワーゲン車や純正部品が、多くの人の手と高度な物流システムによって支えられていることがよく分かった。

 日本へ輸入されたフォルクスワーゲン車が最初に到着し、納車前の最終点検を経て全国へ送り出される場所。自分の愛車もここを通ってきたと思うと、GTIオーナーがこの場所を「聖地」と呼ぶ理由にも納得できる。GTI誕生50周年という節目に、その舞台裏を見学できた貴重な機会だった。

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