車と音楽のいい関係  オーディオ評論家・野村ケンジがJAIAにて最新自動車と音響システムをチェック!

野村ケンジが最新自動車と音響をチェック

 現代の車載音響システムは、デジタル技術の進化で飛躍的に向上している。そこでオーディオ評論家・野村ケンジがJAIA(日本自動車輸入組合)にて最新5車種に試乗し、レンジローバーのMeridian、ボルボ/VWのHarman Kardon製システムなどを徹底チェック! 車の特性と調和した高次元のサウンド体験から、進化を続ける車と音楽の「いい関係」をレポートしよう。

テスラ/Model Y
EVの強力加速と二重ガラスが叶えた静寂な音響空間

1.走行性能と快適性について

 とてつもなく強力な加速を持つ1台。最大トルクが瞬時に立ち上がるEVのメリットを存分に享受できる車となっている。いっぽうで、車両重量がかなりあるためブレーキやコーナリング時など僅かながらもセンシティブな一面が感じられた。基本的には余裕あるゆったりとした運転スタイルに向いている印象だった。なお、試乗車がスタッドレスタイヤを装着していたため、ハンドリングの正確な評価は保留としたい。

2.オーディオシステムについて

 イマーシブオーディオ対応の16スピーカーシステムは、なかなかに良質。(価格的に)高級といえるレンジのクルマだけあってか、スピーカーひとつひとつの音質は高い。オーディオブランドを前面に押し出しているサウンドシステムに対しては一歩届かない点も垣間見られたが、移動中にBGMとして楽しむには十分以上の品質といえる。イマーシブオーディオに関して、効果のほどがやや控えめだったが、それがかえって功を奏していて、違和感のない自然な広がり感を持ち合わせていた。加えて、 二重ガラスが外の騒音を効果的に遮断してくれるので、車内は非常に静か。音楽鑑賞や会話に適した環境を提供してくれた。

3.その他装備とコネクティビティについて

 ウインカー以外ほぼ全ての設定や操作をタッチパネルから行うため、慣れが必要となる。いっぽう、エンターテインメントに関しては、テスラ車はオリジナルシステムを採用するためCarPlayやAndroid Autoなどには対応していないものの、AppleMusicやSpotifyなど配信サービス、Googleマップなどのアプリを用意しているため、それほど不便を感じることはなさそう。

◎レンジローバー/SPORT SV EDITION TWO P635
2.5トンを感じさせない軽快な運動性と高次元で調和したMeridianサウンド

1.走行性能と快適性について

 車両としての基本性能が極めて高く、自然で滑らかな挙動を行ってくれるため、スポーティかつストレスのない操作を行うことができる。ボディサイズも把握しやすい。また、2.5トンという重量を感じさせない素晴らしい運動性能を持っていて、下り坂の停止時など特定の状況下でこそ認識はされるものの、通常の運転操作ではほとんど意識させない、軽快なドライビングを楽しむことが出来た。

2.オーディオシステムについて

 搭載されているMeridian製のオーディオシステムは、素晴らしいサウンドを聴かせてくれた。純正オーディオの枠を大きく超えるレベルで、ボーカルの歌声が明瞭に聴き取れ、低域も走行中に迫力を失うことなく、見事なバランスだった。個々のスピーカーユニット自体は必ずしも超高価なものではない印象を受けたが、それを補って余りある「チューニングの妙」が、この素晴らしい音響体験を生み出しているようだ。

 サウンドモードは「ステレオ」「Meridian」「Meridian立体音響」の3種類が用意されていた。特に「Meridian立体音響」モードは、音場を効果的に上方へ引き上げつつも、過剰なバーチャルサラウンド感を強調しない洗練されたチューニングに纏められており、よほど特殊なジャンルの楽曲を除けば、常用できるレベルの楽しさを提供してくれていた。完成度の高いオーディオシステムだと思う。なお、シートに内蔵されたボディソニック系スピーカーは、好みが分かれそうな傾向こそあれ、これはこれで楽しい。

3.その他装備とコネクティビティについて

 Android Autoに対応しており、スマートフォンを接続することで音楽サービス「Qobuz」などを利用することができた。音質や利便性の観点から、Bluetooth接続よりも有線でのスマートフォン連携がオススメだ。

ルノー/アルカナ エスプリ アルピ-ヌ マイルドハイブリッド
素直な走行挙動と車の魅力を補完するBoseサウンド

1.走行性能と快適性について

 先日大規模なマイナーチェンジが行われた最新ルノー・アルカナの第一印象は、クルマとして非常に「優等生」であり、完成度の高い1台と感じられた。特に走行性能において、SUV特有の重量物が上部にあるような感覚はなく、コーナリングの挙動など素直な動きをみせてくれたため、とても操作しやすかった。ただし、その代償としてか足回りはかなり硬めに設定されているようで、路面からの突き上げが比較的大きい点には注意が必要かも。比較的硬質な乗り心地は、ドライバーの好み次第といえる。

2.オーディオシステムについて

 搭載されているBose製オーディオシステムは、サラウンド機能を用意。僅かながら、音質も好みに応じて調整できるようになっていた。音質は、端的に表現すると「普及価格帯の車に搭載される、少し質の良いオーディオ」というレベル。とはいえ。Boseらしいメリハリある音作りは秀逸で、特に低域が不自然に膨らむことなく、かつ不足感もない絶妙なバランスはさすがといえる。多くのユーザーが「このオーディオが付いていて良かった」と満足できる水準であり、同時に「余計な費用がかかった」という感覚を抱かせることなく十分に楽しめるはず。今回のような、高級車が並ぶ試聴にあってはコスト面での不利さは否めないが、車の魅力を補完する付加価値として肯定できる存在だと思う。

3.その他装備とコネクティビティについて

 Android Autoに対応しており、Androidスマートフォンを接続して音楽再生などが可能となっている。しかしながら、その動作にはやや不安定な側面が見受けられたのが残念。エンジンを再始動時に音楽再生ボタンを再度押す必要があったり、Bluetooth接続がスムーズにいかないこともあったりと、多少煩わしい部分が残っていた。これらの挙動は、10年ほど前の古い世代の車載システムで頻繁に見られた特徴と類似しており、現行モデルながらも旧来のシステムが流用されている可能性が高い。システム全体の使いやすさについて、次世代モデルでの進化が期待されるところだ。

ボルボ/EX30 Cross Country Ultra Twin Motor Performanc
EVの力強い加速と車両との一体感が高い上質なサウンド

1.走行性能と快適性について

試乗を兼ね、かまぼこの名店として知られる小田原の「鈴廣」へGo。好物のかまぼこでエネルギーチャージしてご機嫌の野村氏。

 EVでありながら、全体的には欧州製EVとはやや趣が異なる、むしろ中国系EVに近い印象を持つ1台に感じられた。ボルボの親会社が吉利汽車(Geely)であることが関係しているのかもしれない。とはいえ、これは否定的な意味合いではなくむしろ肯定的な話で、EV先進国のひとつである中国の技術やトレンドを巧みに取り入れることで高い利便性を享受、高く評価できる車に仕上がっていた。時に加速の凄さは特筆もの。今回の試聴ではテスラ「モデルY」に勝るとも劣らない印象のスタート加速をみせてくれた。コーナリング時の挙動もSUVとしてはまずまず。このあたりは重量物が下側に集中しているEV車のメリットだろう。

2.オーディオシステムについて

 オーディオシステムはとても良質。搭載されているハーマンカードン製のオーディオシステムは、音楽が耳までよく届く良質なサウンドを聴かせてくれた。スピーカーの数を誇示するようなシステムではないものの、絶妙なバランスでチューニングされており、非常に聴き心地が良く、それでいてボーカルやメイン楽器の様子がしっかりと伝わる、また、音場が無理なく自然に広がってくれることも好ましい。車窓から流れる風景に溶け込むBGMのように、車両との一体感が高い、素晴らしいサウンドシステムだ。

 なお、上位車種にはB&W(Bowers & Wilkins)製の高級オーディオシステムが搭載されており、EX30のそれは(ボルボとしては)スタンダードなオーディオシステムに位置づけされているようだが、決して侮れない実力の持ち主だったことは確か。これは、過去20年以上にわたって車載オーディオシステムに注力し続けている、音作りへの確固たる哲学が息づいたボルボだからこその実力といえるかもしれない。

3.その他装備とコネクティビティについて

 Android Autoに対応しており、スムーズにAndroidスマートフォンを接続して音楽再生を楽しむことができた。いっぽうで、全体の操作性について、ガソリン車から違和感なく移行できるかというと多少なりの疑問が残る。ドライブレンジやリバースの選択といった基本的な操作に独特の癖があり、さらにウインカーレバーは手動で解除する際に独特の操作が必要となっていたりする。また、物理的なハードキーを廃し、テスラのようにほぼ全ての操作を中央のタッチパネルに集約したインターフェース設計は好みが分かれるところだろう。

◎フォルクスワーゲン/ID.Buzz
2.7トンを感じさせぬ軽快なフットワークと車内全体で楽しめる高音質サウンド

1.走行性能と快適性について

 試乗して最も印象的だったのは足廻りの完成度の高さ。デザインは往年の「タイプII」や「ヴァナゴン」を彷彿とさせる現代版フルサイズ・ワンボックスであり、2.7トンというかなりの車重をもつが、それを感じさせない軽快なフットワークを実現。特にスポーツモードでは、多少なり乗り心地は硬めに、路面からの突き上げを感じるようになるものの、非常にニュートラルかつ自然な動きをしてくれ、コントローラブルな操縦を楽しむことができた。実質、2トン以下の車を運転しているかのような感覚といえるだろうか。VW持ち前の技術力に加えて、重量物が下側に集まっているEVのメリットがうまく生かされているのかもしれない。もちろん、重量級の車体ゆえに、フル加速時には他のEVと比較して若干のもたつきが生じることは否めず、下りの停止などではブレーキがもう少し強力であればとの希望も芽生える(メーカーは回生ブレーキを含めたバランスを考えている様子)が、それも不快感や違和感には繋がらないレベルで巧みにまとめられていた。

 また、操作性に関してもなかなかのもの。従来のガソリン車からの乗り換えでも違和感を覚えることのない、自然な運転感覚と操作性を持ち合わせていた。

2.オーディオシステムについて

 ハーマンカードン製13スピーカーという大きなキャビンに相応しいオーディオシステムを採用。フロントは3ウェイ+センター、セカンドシート、サードシートにフルレンジ、2室にサブウーファーを配置している。そのおかげで、車内全体でBGMとして楽しむセッティングと、前席の乗員が本格的な音楽鑑賞に浸れるセッティングが巧みに両立されている。また、特定の音楽ジャンルに特化するのではなく、クラシックからJポップ、EDMまで様々なジャンルを高品質で楽しむことができた。こういった音質チューニングは、近年の車載ハーマンカードン製システム全体に見られる潮流であり、純正オーディオとして非常に高いレベルを達成しているように感じた。

3.その他装備とコネクティビティについて

 CarPlayやAndroid Autoに対応していて、便利に使いこなすことができる。いっぽう、接続方法によって音質が大きく変化する傾向も見られた。Bluetooth接続では接続の不安定さや音色の(僅かながら)ノイジーさが散見されたが、Android Autoを有線接続に切り替えるとそれが一変。音の力強さが格段に向上し、システム本来の安定した、かつ良質なサウンドを楽しむことができた。スマートフォンとの接続は有線がオススメだ。

総論/「昨今の自動車は音響システムとともに大きく進化、ユーザーの福音に」

 20年以上前の車では、エンジン始動直後にアンプが温まるまで音割れが起きることもまれにあったが、現代の車、とくに高価格帯の輸入車ではデジタル技術の進化により基礎的な音響性能が大幅に向上。一般ユーザーが「良い音で満足だ」と感じられるレベルが標準的に実現されている。いやはや、なんとも幸せな時代といえる。

 今回試乗した5台のオーディオシステムについては、まずレンジローバースポーツの素晴らしさに感銘を受けた。 メリディアン製システムは単なるブランド力だよりではなく、音作り、スピーカーユニット、DSPなど採用素材や設計の質が高く、かつチューニングも絶妙。2500万円という価格に見合うかはさておき、車の完成度とオーディオの良質さが高次元で調和していた。所有者の満足度は極めて高いことだろう。

 続いて、ハーマンカードン製システムを搭載している2台「ボルボ」「VW」にも感心させられた。黎明期にはそれほど良い印象を持てなかったが、四半世紀以上にわたるノウハウの蓄積により良質で満足度の高いシステムへと進化。ブランド名に恥じない仕上がりを持ち合わせていた。今後は、BMWやMINIなどもう少しスタンダードなクラスのシステムも試してみたい。

 このように、今回の市場は運動性能もオーディオ音質も最新モデルならではの確かな進化を感じる、素晴らしい経験となった。今後の更なる進化を期待したい。

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