Ray-Ban Meta/Oakley Meta日本上陸 「スマホの次」を目指すAIグラスのデザイン論とは

AIグラスは次のスマホになる?

 Metaと世界最大のアイウェアブランドのEssilorLuxottica(エシロールルックスオティカ)は、AIグラス「Ray-Ban Meta」「Oakley Meta」の日本展開に関する発表会を開催した。AIグラスというカテゴリーは、近年さまざまな企業が参入を進めている。そんななかで、今回の発表会で印象的だったのは、両者がこの製品を単なる“ウェアラブル端末”として語っていなかった点だ。

左からEssilorLuxottica日本・韓国・東南アジア統括シニアバイスプレジデントであるオリヴェエ・シュバン氏、EssilorLuxotticaのチーフデザインオフィサーのマッテオ・バティストン氏、Meta日本法人代表取締役の味澤将宏氏
左からEssilorLuxottica日本・韓国・東南アジア統括シニアバイスプレジデントであるオリヴェエ・シュバン氏、EssilorLuxotticaのチーフデザインオフィサーのマッテオ・バティストン氏、Meta日本法人代表取締役の味澤将宏氏

 登壇したEssilorLuxotticaのチーフデザインオフィサー、マッテオ・バティストン氏が、AIグラスを「Augmented Identity(拡張されたアイデンティティ)」という言葉で表現したのは象徴的といえるだろう。それは単なるAIデバイスではなく、“人間らしさを拡張する道具”としてメガネを捉える視点だったからだ。

「AIはArtificial Intelligenceだけではない」

デザインとテクノロジーのバランスを考え「自然であること」を強調したチーフデザインオフィサーのマッテオ・バティストン氏
デザインとテクノロジーのバランスを考え「自然であること」を強調したチーフデザインオフィサーのマッテオ・バティストン氏

 発表会の中でも、最も強いメッセージを放っていたのはバティストン氏のセッション。AIという言葉から多くの人が連想するのは、Artificial Intelligence=人工知能だ。しかし氏は、これからのAIは「Augmented Identity=自己拡張」という意味を持つようになると語る。

 AIは単に命令を実行する存在ではなく、人に寄り添い、聞き、学び、理解し、表現を支援する存在へ変化していく。そして、そのAIと人間の距離が近づくほど、“どんな形で存在するのか”が重要になるという。

 スマートフォンは便利だが、使うたびに視線を画面へ落とす必要がある。イヤホンは音声体験を自然にするが、映像をともなわなければ視覚情報とは切り離されている。その中で、メガネは極めて特殊な存在だ。氏は「メガネは感覚に最も近いデバイス」と説明した。視界の延長線上にあり、日常生活の中で常時装着され、さらに機能だけでなく自己表現としても成立し得る。

AIグラス「Ray-Ban Meta」「Oakley Meta」

 腕時計やスマートフォンとも異なり、メガネは顔の一部になる。だからこそAIグラスには、単純なスペック競争では成立しない難しさがある。「美しい眼鏡を、単なるコンピュータにしてはいけない」。バティストン氏が何度も強調したのは、その点だった。

ガジェット感を消すことの難しさ

展示

 AIグラスというカテゴリーは、技術的には成立していても、「日常で自然に使えるか」という壁に長く直面してきた。顔に装着するデバイスは、少しの違和感でも強く意識される。重さ、厚み、ヒンジの角度、テンプルの圧力、カメラ配置、レンズの存在感──。どれかひとつでも崩れると、普通のメガネではなく“Theテック製品”に見えてしまう。特に日本市場は、その違和感に敏感な市場だという。

 EssilorLuxottica側は日本を最重要市場のひとつと位置づけている理由として、日本人の品質感覚の高さを挙げた。日本では、単に機能が優れているだけでは受け入れられない。細部の精度、仕上げ、装着感、長時間利用での快適性など、完成度の高さが求められる。その意味で、日本市場はAIグラスの真価が試される市場でもある。

 バティストン氏は日本文化に対する理解にも触れながら、「精度」「ディテール」「妥協しないものづくり」が重要だと語った。今回のRay-Ban MetaやOakley Metaでは、ヒンジ設計や重量バランス、ノーズパッド、テンプル構造などを細かく調整し、普通のメガネとして成立させることを徹底したという。特に印象的だったのは、“自然であること”を繰り返し語っていた点だ。AIグラスは未来感を強調するほど、逆に日常から離れていく。だからこそ彼らは、未来的なデザインよりも、“いま人々が掛けたいと思えるデザイン”を優先した。

AIグラスは「スマホの次」なのか

「Metaが持つ多彩なSNSプラットフォームを活用したい」と語るMeta日本法人代表取締役の味澤将宏氏
「Metaが持つ多彩なSNSプラットフォームを活用したい」と語るMeta日本法人代表取締役の味澤将宏氏

 一方で、Meta側はAIグラスを次世代コンピューティング・プラットフォームの中心として位置づけている。Meta日本法人代表取締役の味澤将宏氏は「見たものを理解し、音声で自然に対話できる、非常にパーソナルなAI体験」が重要だと説明した。従来のスマートフォンは、画面を見ることが前提のデバイスだった。しかしAIグラスでは、現実世界そのものがインターフェースになる。例えば、目の前の看板を翻訳する。見えている建物について質問する。歩きながら音声でメモを残す。写真や動画を自分視点で共有する。こうした体験は、スマートフォンよりも自然に行える可能性がある。

デモンストレーションの展示
発表会ではAIグラスを通して見たものを認識し、音声で応えてくれるデモンストレーションも。「Hey、Meta、この本には何が書いてある?」と聞くと翻訳もしてくれる

 今回の発表会でも、Meta AIによる翻訳機能や視覚認識機能が紹介された。特に日本市場では、“翻訳”への期待が高いという。事前の消費者調査でも、看板やメニューを読み取る機能への関心が強かったと説明された。さらに、InstagramなどのSNS文化との親和性も高い。日本では「撮影して共有する」文化が広く定着しており、自分視点で撮影できるAIグラスは、その延長線上にある存在として受け入れられる可能性がある。

“普通のメガネ”であることが最大の武器

調光グラスのモデル
現在、隆盛しつつあるAIスマートグラスジャンルでMetaのAIグラスは、Ray-Banや
Oakleyと組んだことにより多彩なアイウェアを揃えられるのが強みのひとつとなっている。こちらは調光グラスのモデルで夏場などでの使用にも最適だ

 今回の製品群は、大きくライフスタイル・光学・スポーツという3方向で展開される。「Ray-Ban Meta」は、象徴的なRay-Banデザインをベースに、12メガピクセルカメラやオープンイヤー型オーディオを統合したモデルだ。見た目はあくまでRay-Banでありながら、撮影・音楽・通話・AI機能を自然に使える。また、度付きレンズへの対応も重視されている。

 AIグラスはガジェットとして短時間利用されるのではなく、“一日中掛け続けられること”が重要だからだ。調光機能を持つTransitionsレンズも用意され、屋内外をシームレスに移動できる設計になっている。一方、Oakley Metaはスポーツ領域を強く意識したモデル。Prizmレンズや拡張バッテリーを採用し、屋外利用を前提とした設計が特徴となる。

AIグラス普及の鍵は“安心感”

本体右側に付いているLEDランプ
撮影時には右側のLEDランプが点灯し、撮影中を外部に伝える

 AIグラスに対しては便利さへの期待と同時にプライバシーへの不安も存在する。Meta側はその点についても強調していた。味澤氏は、撮影時にLEDで周囲へ明示する設計を採用していることを説明。日本市場向けには利用ガイドラインも公開し、安心して利用できる環境づくりを進めるという。また、日本独自のコミュニケーション文化への対応にも触れ、国内プラットフォームとの連携を検討していることも明かした。AIモデルについても、購入時点で完成するものではなく、継続的なアップデートによって進化していくという。発表会では、視覚障害者支援への応用にも触れられた。文字読み取りや周辺認識、歩行支援など、AIグラスが“身体を拡張する技術”として機能する可能性も示されている。

ウェアラブル・テックは定着するのか

AIグラスを装着している様子

 スマートフォンは、人々の生活を大きく変えた。そのなかで生まれた「常に画面を見続ける」というライフスタイルーーAIグラスが目指しているのは、その逆方向なのかもしれない。ポケットから端末を取り出すのではなく、視界の中で自然にAIと対話する。現実世界から切り離されるのではなく、現実を見ながら情報へアクセスする。

 その意味でAIグラスはスマホを置き換えるデバイスというより、スマホの一部機能をより自然なかたちで代替し、生活に溶け込ませる。ただし、その未来が成立するかどうかは、AI性能だけでは決まらない。人が自然に掛け続けたいと思えるか。違和感なく日常へ溶け込めるか。そして「普通のメガネ」として成立するか。今、その新しい競争が本格的に始まるタイミングになりそうだ。

1200万画素カメラ&Meta AI搭載のAIグラスが日本上陸 『Ray-Ban Meta (Gen 2)』と『Oakley Meta』5月21日発売

EssilorLuxotticaとMetaは、AIグラス『Ray-Ban Meta (Gen 2)』および『Oakley Met…

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