NANAのテック・アルテミス 仕事に役立つBizテック観測所(第24回)
テック界隈で話題の『Even G2』を実際に試したら AIスマートグラスが“普段使い”に近づいていた

通知を見るたびにスマートフォンを取り出し、海外では翻訳アプリを開き、道に迷えばマップを確認する。いま私たちの生活は、思っている以上に「画面を見る」という行動に左右されている。
AIスマートグラスは、そうした行動を少しずつ減らそうとしている製品カテゴリだ。ただ、これまで登場してきた製品の中には、インパクトはあるものの、日常使いには割り切りが必要なモデルも少なくなかった。カメラの存在感が強かったり、本体が重かったり、バッテリー持ちに不安があったりと、"ガジェットの制約"が前面に出ていたためだ。
そんな中で登場したのが、Even Realitiesの『Even G2』。実際に試してみると、この製品はAIグラスを日常生活に自然に溶け込ませることを強く意識して作られていると感じた。本稿では約3カ月使った実体験から使用感をレポートしたい。
ガジェット感を抑えた『Even G2』の自然な設計思想

『Even G2』は、一見するとスマートグラスに見えない。フレームデザインはかなり控えめで、カメラやスピーカーも搭載していない。周囲から見れば、一般的なデザインのメガネという印象だ。度付きレンズにも対応しており、普段からメガネをかけている人でも違和感なく使える。
スマートグラスは便利である一方、「外で着け続けられるか」が大きな課題になりやすい。街中で目立つデザインだと、どうしても装着時間は短くなってしまう。その点、『Even G2』は良い意味で存在感が薄い。筆者自身も、数時間使った頃には、デバイスを装着している感覚をほとんど意識しなくなっていた。

重量は約36g。一般的なメガネと比べても極端に重いわけではなく、鼻への負担も軽めだ。マグネシウム合金とチタンを採用したフレームは剛性もしっかりしており、安っぽさは感じない。さらに、IP65相当の防塵・防水性能にも対応しているため、外出時も過度に気を遣わずに使える。
一方で、長時間使用すると気になる部分もあった。ツル部分はしっかりした作りになっている反面、やや硬めで、数時間連続で装着していると耳まわりに圧迫感を覚える場面があった。軽量ではあるものの、一般的なメガネとまったく同じ感覚で使えるわけではなく、長時間利用には多少の慣れが必要だ。


情報が必要な時だけ視界へ入ってくるため、表示そのものが視界の邪魔になりにくい。このバランス感はかなり良かった。HUD表示も自然にまとまっている。両眼導波路ディスプレイを採用しているが、常に情報が視界の中央に表示されるわけではない。必要な時だけ視界の端に情報が現れるため、普段の視界を邪魔しにくい。

通知の表示も、「スマートフォンを開く回数そのものを減らせる」という点で実用性が高かった。『Even G2』では通知が視界内に短く表示され、スマートフォンを手に取らずにメッセージ内容だけが確認できるため、作業や会話の流れが途切れにくい。小さな通知確認を視界内で完結できる感覚は、想像以上に快適だった。
翻訳・ナビが「視界」に表示される世界、アプリストアで可能性が広がる

実際に使っていて『Even G2』で個人的に便利だと思ったのは、リアルタイム翻訳機能だ。相手の話した内容が、ほぼ遅延なく視界に字幕のように表示される。スマートフォンの翻訳アプリでも似たことはできるが、『Even G2』は相手の顔を見たまま使えるのが大きい。
対応言語は英語だけではなく、中国語を含む複数言語に対応している。海外イベントや展示会では、英語圏以外の来場者と会話する機会も少なくないため、「とりあえず意思疎通できる」状態をすぐ作れる安心感は大きい。

また、会話を字幕表示する機能は、日本語同士の会話でも活用できる。会話内容をリアルタイムで文字として確認できるため、騒がしい会場やオンライン会議など、聞き取りづらい場面でも内容を追いやすい。後からアプリ側に文字起こしや要約が残るので、取材やミーティング用途とも相性が良い。
海外イベントや展示会では、相手の話を聞きながらスマートフォンの画面を確認する場面が意外と多い。『Even G2』では、相手の顔を見たまま会話を続けやすい。翻訳が100%正確というわけではないが、会話の流れを把握する用途としては十分実用的だった。
同じように、ナビゲーション表示も実用的だった。Googleマップと連携し、進行方向が視界内に表示されるため、地図を確認するたびに立ち止まる回数を減らせる。知らない街でも移動しやすく、歩きながら何度もスマートフォンを取り出さなくて済む点は便利だ。
ただし、表示されるのは道路形状を簡略化したルート情報が中心で、実際の風景の上にルート案内が重なるわけではないため、目の前の景色と表示された地図情報を頭の中で照らし合わせながら使う必要がある。一般的にイメージされるARナビとは少し感覚が異なる点には注意したい。

あと発売当初にはなかった機能として、『Even G2』は専用アプリストアも用意されるようになった。これは開発者が制作したアプリを追加できる仕組みになっていて、すでにいくらかアプリがリリースされている。
試しにいくつか使ってみたところ、たとえば最新ニュースが視界に表示される『ミライのARラジオ』は、グラスをかけたままハンズフリーでニュース・天気・話題が自動配信され、AIキャラクター「ミライ」が解説を加えてくれる。
まだまだ実用的なアプリは少ない印象(特に日本のユーザー向けは)ではあるものの、買った時点の機能だけで完結する製品ではないところは興味深いポイントだ。

完成度の高い『Even G2』だが、とはいえまだまだ荒削りな部分もある。AI関連の機能は便利だが、回答精度や補足内容にはバラツキがあったりする。翻訳も文脈によっては不自然な日本語になることがあり、完璧な同時通訳を期待すると肩透かしを受けるかもしれない。
また、カメラを搭載していない点もこの製品の方向性を象徴している。勝手に録画されないというプライバシー面での安心感につながる反面、写真・動画撮影系の用途は割り切る必要がある。Meta系スマートグラスのようなライフログ寄りのAIスマートグラスとは、かなり方向性が異なる製品だ。
そういう意味で『Even G2』は、多機能さを前面に押し出したウェアラブルというより、「AIを日常の中で自然に使う」ことを重視したメガネに近い製品と言えるだろう。
未来のガジェットではなく新しい日用品へ AIグラスは「視界の中の拡張画面」になれるか

AIスマートグラス市場は、まだ立ち上がったばかりの段階にある。ただ、『Even G2』の特徴は、必要以上に「未来感」を押し出していないことだ。派手なAR演出を前面に出すのではなく、普段の生活の中で無理なく使えることを重視した設計になっている。
実際に使っていて印象的だったのは、「情報を確認する場所」が変わる感覚だった。通知を見るたびにポケットからスマートフォンを取り出す回数が減り、道案内や翻訳のために画面を開く場面も少なくなる。通知確認や翻訳のたびに視線をスマートフォンへ移していた動作が減るだけでも、日常の使い勝手は想像以上に変わった。
もちろん、現時点では価格も決して安くなく、AI機能の精度も完璧とは言えない。翻訳やAI応答にはばらつきがあり、長時間装着時のフィット感にも改善の余地は残る。万人向けの製品と呼ぶには、まだ早い部分もあるだろう。
それでも『Even G2』は、「AIを常に身につける」という体験を、かなり現実的な形で成立させているように感じた。メガネとして日常に溶け込みながら、必要な情報だけを自然に視界へ届けてくれる感覚は新鮮だった。
派手な未来感を演出する製品ではないが、スマートフォン中心だった情報確認の流れを、少しずつ変えようとしている点は興味深い。
AIスマートグラスを「特別なガジェット」ではなく、「普段使いのメガネの延長線上」に落とし込もうとしている点こそ、『Even G2』らしい個性だ。






















