エレコム『IST PLUS』実機レビュー 欲しかった機能を全部載せした正統進化トラックボール

エレコム『IST PLUS』実機レビュー 

 エレコムは5月26日、親指操作タイプのトラックボールマウス「IST」シリーズの新モデル『IST PLUS』を発表した。発売は2026年6月下旬を予定している。

 初代「IST」は、独自の支持ユニット交換構造やエルゴノミクス設計が高く評価された一方で、「マルチペアリングに対応してほしい」「設定を本体に保存したい」といった要望が寄せられていた。今回登場した『IST PLUS』は、そうしたユーザーの声に応える形で進化したモデルとなる。

 今回、発売に先立って実機を試用する機会を得た。前回、『HUGE PLUS』でトラックボールデビューを果たした筆者にとって、本製品は親指操作タイプの「IST」シリーズ初体験でもある。なお、試用期間中は専用ソフトウェア「ELECOM Mouse Assistant 6」がまだ『IST PLUS』に対応しておらず、一部機能は発表会会場でしか試すことができなかった。

 そのため本稿では、主にデフォルト状態での操作感を中心に、ファーストインプレッションをお届けしたい。人差し指でのボール操作に慣れている筆者にとって、『IST PLUS』の使い勝手はどうだったのかお伝えしていく。

欲しかった機能を一気に載せてきた正統進化モデル

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 まず、今回発表された『IST PLUS』とはどんな製品なのか整理していきたい。製品名にある「IST」は、「Industry Standard Trackballs」の頭文字を取ったシリーズ名で、トラックボールの業界標準を目指して展開されている製品群だ。

 日本国内ではこれまで「イスト」と呼ばれることも多かったが、海外では英語読みの「アイエスティー」と呼ばれるケースが主流だったという。市場によって呼び方が分かれる状況を避けるため、本モデルから日本国内でも正式に「アイエスティー」へ呼称を統一する。

 2023年に登場した初代モデルは、自然な角度で手を置ける独自のエルゴノミクス形状に加え、支持ユニットを交換することで操作感を変更できる構造が特徴だった。一般的なトラックボールでは、内部の支持機構をユーザー側で変更できない製品がほとんどで、このカスタマイズ性の高さはかなり珍しい存在だったと言える。

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 今回の『IST PLUS』では、そうした基本構造を継承しながら、実用面の機能強化が図られている。

 特に大きな進化点が、Bluetoothと2.4GHz無線の両対応になったことだ。最大3台までのマルチペアリングに対応し、本体上部のボタンから瞬時に接続先を切り替えられる。しかも、接続切り替えボタンが本体上面に配置されているため、底面スイッチ式のようにマウスを持ち上げる必要がない。

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画像提供:エレコム

 さらに、新たにオンボードメモリも搭載。ボタン割り当てやDPI設定を本体側へ保存できるようになった。会社支給PCや共用端末など、専用ソフトをインストールできない環境でも、自分好みの設定を維持したまま利用できる。

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 搭載するボールは直径36mm。大型寄りのサイズ感で、親指の移動量を抑えながら細かな操作もしやすく、扱いやすいバランスに仕上がっている。

 ラインアップは2種類を用意。静音性と滑らかな転がりを重視した「ボールローラー」モデルと、ミネベアミツミ製ベアリングを採用した低摩擦仕様の「ベアリング」モデルだ。

 特に後者は、操作時の軽さが際立っていた。わずかな指の動きでもスムーズにカーソルが動き、長時間作業や細かなポインティングを重視するユーザーには、かなり魅力的な選択肢になりそうだ。

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 電源は単3形電池1本で動作し、アルカリ乾電池利用時の電池寿命は最長約2年1カ月。ワイヤレス運用でも頻繁な電池交換を気にせず使いやすい仕様になっている。本体サイズは約96×126×52mm、重量は約120g(電池含まず)だ。

握りやすい本体に、共通レシーバー規格の採用で日々の使いやすさがさらに向上

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 実際に数日使ってみて、まず感じたのは「手の置きやすさ」だ。ISTシリーズ特有の傾斜形状は継承されているものの、単に見た目重視のエルゴノミクスデザインというわけではなく、かなり実用性を意識した作りになっている。手首を無理にひねることなく、自然な角度で手を預けられるため、長時間の作業でも疲れにくかった。

 特に良かったのは、親指の可動範囲のバランスだ。親指操作タイプのトラックボールは、製品によってはボール位置が遠すぎたり浅すぎたりして、親指に負担が集中しやすい。しかし「IST PLUS」は、ボール位置と角度の調整が非常にうまくまとまっている。36mmの大型ボールも効果的で、少ない指の動きでもカーソルを大きく動かせた。

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 ホイールクリックを含む5ボタンすべてに静音スイッチを採用している点も実用性が高い。クリック感はしっかり残しながら、クリック音だけを自然に抑えているため、深夜の作業やオフィス環境でも扱いやすい。

 冒頭でも触れたように、今回の試用期間中は「ELECOM Mouse Assistant 6」が『IST PLUS』に対応しておらず、ボタン割り当てやDPI(解像度)の変更は試せなかった。デフォルトの500DPIでも十分に操作することができたように感じているが、製品自体は専用ソフトを利用することで100〜4000DPIまで調整可能で、用途に応じた細かなカーソル速度設定にも対応する。

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レシーバーは背面に収納可能

 また、今回の新要素のひとつが、新しい共通レシーバー規格「ELECOM Bridge E」への対応である。1つのUSBレシーバーに最大7台までの対応機器を登録できるため、USBポートが限られるノートPC環境では便利だ。

 さらに、専用ソフト「ELECOM Mouse Assistant 6」を利用すれば、接続方式を柔軟に設定できる。接続用チャンネルは3つ用意されており、たとえば、

CH1:会社PC(2.4GHz)
CH2:自宅PC(Bluetooth)
CH3:タブレット(Bluetooth)

 といった使い分けにも対応する。「ELECOM Bridge E」を複数用意すれば、最大3系統をUSBレシーバー接続で統一することも可能だ。Bluetooth利用が制限される企業環境では、こうした構成はかなり実用的だろう。オンボードメモリ機能についても同様で、会社PCなど専用ソフトをインストールできない環境では、その恩恵はかなり大きいと感じた。

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 「IST」シリーズらしい特徴として、メンテナンス性の高さもしっかり受け継がれている。ボールは裏面から簡単に押し出して取り外せるほか、新開発のボールローラーユニットは水洗いにも対応。内部もゴミを排出しやすい構造になっており、長く快適に使い続けやすい設計だ。

 トラックボールは構造上、どうしても皮脂やホコリが溜まりやすいデバイスだけに、掃除のしやすさは地味ながら非常に重要なポイントになる。

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 さらに、専用の「ボールメンテナンスキット」も用意される。フッ素コーティングによって滑走感を回復できるアクセサリーで、初代「IST」との互換性も備えているという。

『HUGE PLUS』ユーザーが『IST PLUS』を使って感じたこと

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 実際に『IST PLUS』を使ってみると、初代「IST」で評価されていた操作感やエルゴノミクス設計を継承しつつ、日常利用で感じやすかった不満点を着実に改善したモデルに仕上がっていると感じた。

 特に印象的だったのは、親指操作の軽快さだ。普段『HUGE PLUS』を使用している筆者にとって、『IST PLUS』はかなり方向性の異なる製品だった。『HUGE PLUS』が大型パームレストによる「手を預ける」ような安定感を重視したモデルなのに対し、『IST PLUS』は一般的なマウスに近いサイズ感と握り心地を採用している。

 一方で、カーソル操作を本体ごと動かさずに行えるトラックボールならではの利点はしっかり受け継がれている。腕全体を大きく動かす必要がないため、長時間作業でも手首や肩への負担は少ない。親指で軽快にボールを転がせる操作感も快適で、デスクワークとの相性も良好だった。

 今回の試用では、「ELECOM Bridge E」やオンボードメモリ機能を細かく試し切ることはできなかったものの、発表会のデモを含めて触れた限りでは、実用面での利便性は着実に向上している印象を受けた。複数デバイスを使い分ける環境や、オフィス用途でも扱いやすさは増しているだろう。

 今回紹介した『IST PLUS』の店頭予想価格は、ボールローラーモデルが8,380円、ベアリングモデルが10,980円(税込)。エレコムダイレクトショップでは、5月26日12時から6月14日まで数量限定の先行予約販売も実施される。

 トラックボールは慣れが必要な入力デバイスだが、一度慣れると通常のマウスへ戻れなくなるユーザーも少なくない。『IST PLUS』は、これからトラックボールを試してみたい人向けの入門機としてはもちろん、既存ユーザーのステップアップ先としても完成度の高い一台に仕上がっている。

 特に、複数デバイスを日常的に使い分けるユーザーや、オフィスと自宅を行き来するモバイルワーカーとの相性は非常に良いと感じた。

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