エレコムの「HUGE」シリーズ8年ぶりアップデート、名機「bitra」も復刻  新型トラックボールマウス3モデル一挙レビュー

エレコム「HUGE」シリーズ最新レビュー

 エレコムは11月13日、コアなユーザーから絶大な支持を得るトラックボールマウスシリーズに、3つの新型モデルを投入した。

 その3モデルとは、『HUGE PLUS』『bitra(親指操作タイプ)』『bitra(人差し指操作タイプ)』。『HUGE PLUS』は8年ぶり、「bitra」シリーズは約6年ぶりのアップデート(販売終了から約2年を経ての復刻)となり、シリーズを愛用するユーザーにとって待望の新型モデルと言えるだろう。

 これらの新モデルは、エレコムが30年以上にわたり培ってきたPC周辺機器開発のノウハウと、ユーザーからのフィードバックを融合させて生まれた製品であり、トラックボールの操作感を根本から変える可能性を秘めている。

 発売に先立ち、筆者はこの新モデル3機種を自宅のデスクで約1週間試用する機会を得た。本稿では、それぞれの使用感を紹介したい。

「HUGE」シリーズに8年ぶり新モデル『HUGE PLUS』が登場 ベアリング搭載で摩擦力約40%低減

 『HUGE PLUS』(M-HT1MRBK)は、直径52mmの大型ボールを採用した人差し指操作型のフラッグシップモデル「HUGE」シリーズの後継機だ。

 HUGEシリーズの最大の特長である、手首から手のひら全体を乗せることができ、操作時の手首の負担を軽減する低反発素材のパームレストと、大胆かつ繊細な操作を可能にする大玉(ボール径52mm) はそのまま継承されている。

 人差し指操作型のトラックボールマウスは手首をひねらずカーソルを操作でき、長時間作業をしたときの手首への負担が通常のマウスやトラックパッドに比べて圧倒的に少ない。また、実際に作業していると、パームレストのおかげで手首が程よい角度で固定されるのも負担の軽減に役立っている印象だ。

 今回のリニューアルの最大のポイントは、ボール操作の滑らかさ。『HUGE PLUS』は、支持ユニットにミネベアミツミ社製の高性能ベアリングを標準採用し、圧倒的な滑り心地を実現。ボールがなめらかに回転することで、腕や手首への負担を軽減するほか、大画面でも高速な操作を可能としてくれる。

 エレコムは、横浜技術開発センターでトラックボールの摩擦力を測定する装置を新たに開発し、このベアリング支持ユニットの性能を定量的に測定。その結果によると、動き出しの摩擦力は人工ルビーの約50%に低減しており、動作中の摩擦力も約40%低減していることから、動き出しからその後の操作まで、軽い力で安定したボール操作が可能だという。

 実際に操作してみると、わずかな力だけで滑るようにボールが動き、そのまま大きくカーソルを動かすことができる。また、摩擦力が低いからか、わずかな指の動きも精密に反映される。これなら、クリエイティブな作業で求められる精緻なポインター操作もストレスなく対応できそうだ。

 トラックボールの支持部に関しては、上位モデルの「IST」シリーズで開発された支持ユニット換装機構を採用しているため、適度な滑らかさを求めるユーザーは別売の人工ルビー支持ユニットに換装することもできる。

 DPI感度は、接続先切り替えスイッチの後ろにあるボタンで変更でき、500・1000・1500の3種類から選べる。画面の解像度や作業内容によってすぐに変えることができるのがとても便利だ。

 接続性も大幅に向上している。USBレシーバーを使用した2.4GHzワイヤレス接続、Bluetooth、そしてUSB有線の3つの接続方式に対応するマルチ接続が可能となり、合計3台のデバイスを同時に接続し、スライドスイッチで簡単に切り替えられる。

 有線接続時は、ポーリングレート1,000Hzに対応しており、ゲーミングマウスクラスの高性能センサーと相まって、よりなめらかな操作が可能だ。

 さらに、リチウムイオン電池を内蔵した充電式モデルのため、電池交換が不要な点も嬉しいところ。充電端子はUSB Type-Cのため、PCやスマートフォンの電源アダプタを使って充電できる。

 電源モードはローエナジーモードとハイスピードモードの2種類があり、本体裏側のスイッチで切り替え可能。ローエナジーモードは名前のとおり消費電力を抑えるモードで、満充電の状態から最長5ヶ月使い続けることができる。

 ハイスピードモードはボールを高速で動かしたときの追従性が高くなるが、かわりに消費電力が多くなり、満充電の状態からは最長3ヶ月のバッテリー持ちとなる。USB有線接続時には、常にハイスピードモードで動作する仕様だ。

 搭載されているボタンはチルト込みで10個で、いずれも専用のアプリでカスタマイズが可能。また、主要な7ボタンには静音スイッチが採用されているため、オンラインミーティングなどでも快適に使用できる。

 本体サイズは幅約114.7mm×奥行約181.9mm×高さ約57.2mm、重量は約279g(レシーバーを除く)。マウスとしてはヘビー級で、デスクトップでの使用を想定した存在感のあるサイズだが、トラックボール上級者にとっては理想的な環境を得られるはずだ。

 『HUGE PLUS』は2025年11月下旬に発売予定で、通常価格は19,800円だが、11月18日までは先行予約キャンペーンで16,800円で購入できる(価格は税込)。

一般的なマウス形状とトラックボールの特徴を両立 初心者におすすめ『bitra(親指操作タイプ)』

 2019年に発売され、惜しまれながら販売終了となったエレコム史上最もコンパクトな持ち運び用トラックボール「bitra」が、約2年の時を経て復刻を果たした。

 新しい「bitra」シリーズは、従来の「M-XPT1」シリーズと比較して約30%の小型化を実現しており、持ち運びに優れる。クリック時にカチカチと鳴らない静音スイッチを採用したことで、図書館など音が気になる場面でも安心して使用できる。

 本製品は、内蔵バッテリーではなく単4電池1本で駆動する仕様を採用する。また、衝撃吸収素材を使用した持ち運び用の専用収納ポーチも付属する。このポーチには、予備の単4電池を収納できるスペースがあり、外出先での急な電池切れにも備えられる。

 「bitra」シリーズには親指操作タイプ(M-MT1MRS)と人差し指操作タイプ(M-MT2MRS)の2種類が用意されている。まずは親指操作タイプから見ていこう。

 親指操作タイプは、名前のとおりトラックボールが親指部分に配置されており、親指でくるくると回して操作する。本体は手にしっかりと収まるフィット感があり、コンパクトながらも自然な使用感を目指している。

 bitraの親指操作タイプは、一般的なマウスとボタン配置が似ているため、初心者もほとんど違和感を覚えずにトラックボールマウスに移行できる。筆者はトラックボールマウスを使うのが久々だったのだが、驚くほど手にしっくりと馴染み、自然に使い始めることができた。

 この親指操作タイプでは、スクロールホイールが本体の傾斜角度に合わせて16度傾けられている。この角度が重要で、ホイールをよりスムーズに回せるようになっているとのこと。

 復刻版で大きく進化したのは、接続まわりのアップデートだ。2.4GHzワイヤレス接続に加えてBluetoothにも対応し、最大2台のデバイスを同時に接続できるマルチペアリング仕様となった。仕事用PCとプライベート用タブレットといったように複数のデバイスを使い分けるモバイルユーザーにとって、非常に使い勝手のよい設計だ。

 本体裏側には、ボール取り出しボタンが用意されていて、ここを指やボールペンの先などの細いものでググッと押し込むことでボールを簡単に取り外すことができ、ボールや内部のボール受けのメンテナンスも簡単に行える。

 本体サイズは幅約74mm×奥行約90mm×高さ約41mm、重量は約77g(電池含まず)と、非常に軽量コンパクト。また、カラーバリエーションとして、従来のブラックに加え、ホワイトモデルが新たに追加されている。

 bitraの親指操作タイプは2025年12月上旬に発売予定で、通常価格は12,980円だが、11月18日までは先行予約キャンペーンで9,980円で購入できる(価格は税込)。

『bitra(人差し指操作タイプ)』はコンパクトなのに大玉操作を実現

 bitraシリーズのもうひとつの選択肢が、人差し指操作タイプだ。こちらも親指操作タイプと同様に、約6年ぶりのアップデートであり、静音スイッチ採用、マルチ接続対応、専用収納ポーチ付属といった基本性能は共通している。

 最大の特徴は、そのコンパクトな設計にもかかわらず、直径34mmの大型ボールを搭載している点にある。持ち運びやすさを重視しつつも、ある程度の繊細さとダイナミックな操作を両立したいユーザーに適したモデルだ。

 人差し指操作タイプは指の可動範囲が広く、快適にカーソル操作ができるのがメリットだ。本モデルでは、コンパクトな筐体ながらもボールの可動域を極限まで拡張しており、一度の操作でポインターを広範囲に動かすことができる。

 また、人差し指は繊細な操作に向いており、試しに写真編集アプリでレタッチ作業をしてみたところ、トラックボールマウスとは思えない精度で快適に作業をこなすことができた。

 ボール部分のお手入れも簡単で、本体裏側からボールを押すだけで簡単に取り外しが可能だ。

 本体サイズは幅約62mm×奥行約94mm×高さ約40mm、重量は約83g(電池含まず)。使用感としては、親指タイプよりも手の負担が分散されやすく、人差し指で広範囲を操作する快感が得られた。

 bitraの人差し指操作タイプは2025年11月下旬に発売予定で、通常価格は12,980円だが、11月18日までは先行予約キャンペーンで9,980円で購入できる(価格は税込)。

 bitraシリーズの復刻に合わせて、エレコムはトラックボールに対応する直径25mmと直径34mmのシルバーの交換ボールを新たに発売する。この交換ボールは、エレコムが独自にコーティング層を分析し、センサーで動きを検出しやすい厚みと色を採用することで、高いポインター追従性を実現しているとのこと。

 交換ボールは本体とは別売りになっていて、販売価格は25mmが1,880円、34mmが2,479円(どちらも税込)。

人気モデルの復刻&パワーアップ。買い替えや初挑戦の良い機会かも

 エレコムが今回発表した3機種は、長年のトラックボールユーザーからのフィードバックを反映させ、現行のデジタル環境に合わせた大幅な進化を遂げている。

 『HUGE PLUS』のベアリングによる滑らかさは、トラックボール操作の概念を塗り替える可能性を秘めており、また、モバイルに特化したbitraシリーズの復刻と機能強化は、トラックボールを自宅だけでなく外出先でも活用したいという需要に応えるものだ。

 これらのハードウェアの進化を支えるのが、エレコムの統合ソフトウェア「エレコム マウスアシスタント」だ。このソフトウェアは2025年1月にVer.6に大幅アップデートされており、ユーザーインターフェースの刷新や、使用するアプリケーションに応じて設定が自動で切り替わる自動プロファイル切替機能、ポインター操作がアクションに変わるジェスチャー機能などを備えている。

 2026年3月にはさらに大型アップデートを予定しており、「ジェスチャー機能Ver.2」(トラックスクロール/ハットジェスチャー)や、簡単に直線が引ける「ルーラー機能」など、トラックボーラー待望の機能追加を計画している。特に「HUGE PLUS」は、この2026年3月のアップデートで、本体に設定を保存できるオンボード機能に対応予定だ。

 今回の3機種は、ユーザーの要望を反映したハードウェアの進化に加えて、ソフトウェアによる高いカスタマイズ性と未来への拡張性を持っており、トラックボール操作の快適さをさらに一段引き上げ、日常の作業体験をより豊かにしてくれる存在になりそうだ。

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