『ホロアース』サービス終了で議論が沸騰 問われるのはメタバースである「必然性」か

メタバース普及のために求められるものとは

 大手VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社が、6月28日をもって自社のメタバースプロジェクト「ホロアース」をサービス終了することを発表。またしてもメタバース事業の難しさが浮き彫りとなり、ネット上ではさまざまな議論を呼んでいる。

ホロライブ「ホロアース」が6月28日で終了へ

 「ホロアース」はアニメルックで作り上げられたメタバース世界。自由にカスタマイズしたアバターにより、探検や建築、ショッピングや他のユーザーとのコミュニケーションなどを楽しめる空間となっている。

 また「ホロライブ」所属タレントとファンによる交流の場という側面も大きく、タレントが「ホロアース」に降臨したり、バーチャルライブを開催したりする機会が設けられてきた。

 プロジェクトが発表されたのは2021年のことで、2022年にベータ版が配信。昨年4月、ついに正式版となるVer.1.0.0がリリースされたところで、その後もアップデートが重ねられていた。

 「ホロライブ」といえばVTuber業界の最大手の1つだが、「ホロアース」に関してはファンのあいだでも前々から厳しい声が上がっていた。そのためサービス終了の発表に際しても、概ね納得感をもって受け止められているようだ。

 そんななかでカバーは5月14日、2026年3月期決算発表に伴い、特別損失の計上について報告。「ホロアース」関連のソフトウェア資産について帳簿価額の全額を減損処理し、約32億円を特別損失に計上したという。

 また経営責任を明確にするため、代表取締役社長と取締役CTOが役員報酬を自主返納することも明かしている。

ホロライブの後ろ盾でも越えられなかったメタバースの壁

 一時期は夢の新技術として注目を集めていたメタバースだが、昨今ではその普及の難しさが取り沙汰されている。「ホロライブ」の後ろ盾があった「ホロアース」ですらこの結果なので、あらためて現状を痛感せざるを得ない。

 CEOの谷郷元昭氏は決算発表に伴う説明会で、ライブやゲームなど手広く扱いすぎたことを「ホロアース」の失敗原因として挙げていた。たしかにそれも1つの要因かもしれないが、メタバースはもっと別の限界に直面しているようにも思われる。

問われる「メタバースである必然性」 Roblox隆盛とWebの利便性を前に

 たとえば今話題の「Roblox」はメタバースの一種に数えられるものの、実際には若年層がさまざまな無料ゲームを楽しむプラットフォームとして定着している。それが空間である必然性はあまりなく、受容のされ方としては、2000年代に若年層のあいだで大流行した無料フラッシュゲームサイトとあまり変わらないようにも見えてしまう。

 そもそも昨今では、Webサービスのプラットフォーム化が進んでおり、さまざまなコンテンツが流通する双方向的な“場所”がネット上に乱立している状況。そのためメタバースとそれ以外のサービスの境界が曖昧になっているのではないだろうか。

 もちろんメタバースは人々がアバターによって参加する仮想空間の存在、ひいては「場」が存在することによって定義されるため、たんなるWebプラットフォームとは明確に異なる側面があるのも確かだ。

 しかし本当に“空間”が求められているのかどうかは、判断が難しい問題だろう。たとえば、メタバースの特徴でもあるリアルタイム性や“場”としての機能は、ビデオや音声通話、テキストで情報がまとまったWEBページ、いつでも視聴できる動画配信などで代替できる。つまり、プラットフォームさえあれば、あえてバーチャルな空間を用意する必要性がないケースも多々存在する。

 仮想空間での経済活動よりもワンクリックで商品を購入できる通販サイト、アバターで参加するバーチャルライブよりもお手軽に動画を見られる動画配信サイト……。自然淘汰的に洗練されてきたネット社会の利便性を前に、メタバースはどんなオルタナティブな価値観、つまり「メタバースである必然性」を提示できるだろうか。

 メタバースという概念が定着しつつある今だからこそ、より解像度を高めて、目新しさ以外の価値を発信していく必要があるのかもしれない。

〈参考〉
『ホロアース』プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001208.000030268.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001188.000030268.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001168.000030268.html

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