カバー「mekPark」の狙いとは何か? VTuber業界の「練習生制度」と他社事例から考える

カバー「mekPark」の狙いを考える

 VTuberタレントグループ「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社が、新たなタレント養成プロジェクト「mekPark」を始動した。

 公式WEBサイトによると「mekPark」は練習生3名とディレクター1名の4人体制で活動を展開し、ホロライブプロダクションのタレントデビューを目指すプロジェクトとのこと。活動期間は“最長”で2年。期限内に基準に届かなかった場合は正式デビューすることができない。その一方で才能が認められれば、期間を待たずに早期デビューを掴み取る可能性もあるそうだ。

プレスリリースより(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001238.000030268.html)

 この記事の執筆時点(2026年5月15日)では詳細な基準値は明らかになっていないが、デビューのための3つの指標が既に公表されている。

 ひとつ目は「信頼(運営審査)」。主にガイドライン遵守、誠実な活動姿勢、スキルの向上といった、努力面が定性的に見られるようだ。

 二つ目が「熱量(活動データ)」。視聴数、同時接続数、二次創作(UGC)といった定量的な盛り上がりがチェックされる。

 そして三つ目が「意思(ファン支持)」。こちらはホロライブの公式スマートフォンアプリ「ホロプラス」を通じた応援、アンケート結果など、ファンからの直接的な意見が加味されるようだ。

 現在、「mekPark」では「ACHRORA」と「Unit B (Pre-Debut)」ふたつのユニットがすでに発表されている。「Unit B (Pre-Debut)」についてはティザー映像が公開されており、そのビジュアルや名前も明らかになっている。ボーカルの宵凪ネオン、ピアノの玲銘ミラ、ボーカル兼コンポーザーの清澄ライラ3名による音楽ユニットのようである。

【ティザー映像】UNIT B(Pre-Debut)【 #UNIT_B 】

 さて、ここでVTuberシーン全体に目を向けてみると、これまでも練習生的なデビュー前段階の学びの場を設けるVTuber・バーチャルタレント系の事務所はいくつかあった。それぞれの特徴を比較してみたい。

ANYCOLORが運営する「VTA(Virtual Talent Academy)」

プレスリリースより  (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000827.000030865.html)

 「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社は、2021年から「VTA(Virtual Talent Academy・バーチャルタレントアカデミー)を開設している。

 公式WEBサイトによるとVTAとは「国内最大級のVTuberグループ「にじさんじ」のノウハウを存分に活かし、VTuber/バーチャルライバーとして活躍するためのタレント育成プロジェクト」とのことで、にじさんじ所属ではない、練習生を育成するための部門として運営されている。

 なお、VTAでどのようなカリキュラムが行われているかの詳細については、公開されていない。

 2024年までは練習配信として、VTAの公式YouTubeチャンネルにてそれぞれの練習生が毎週一回、ひとり30分の枠で、制服姿の立ち絵で配信をおこなっていた。またXのアカウントについても個別のものはなく、公式アカウントのみの発信になっていた。

 その後、一時期は公開の練習配信がおこなわれなくなったが、2025年の「VTA新米ガールズバンド生」で練習配信が再開された。その後、通常オーディションの他に「にじさんじ VTAストリーマーオーディション」「にじさんじ VTAゆめかわライバーオーディション」「にじさんじ VTAバーチャルお笑いコンビオーディション」のようなカテゴリー別のオーディションも行われるようになった。現在(2026年5月15日時点)は通常オーディションは行われておらず、「実力派ボーカルオーディション」「にじさんじ VTAアイドルオーディション」「にじさんじ VTA一芸突破オーディション」の受付が2026年6月5日まで行われている。

 元アカデミー生としては、「Ranunculus」の天ヶ瀬むゆ、海妹四葉、先斗寧の3人や、「VOLTACTION」の風楽奏斗、渡会雲雀、四季凪アキラ、セラフ・ダズルガーデンの4人がユニットとして2022年からにじさんじで活動を開始。その後も鏑木ろこ、石神のぞみ、栞葉るり、立伝都々、佐伯イッテツ、星導ショウ、榊ネスなど、数多くの元アカデミー生がにじさんじからデビューし、活躍している。基本的には練習生時代の名前を引き継いでデビューする者がほとんどだが、「美園聡」が「セラフ・ダズルガーデン」になったように、デビューに伴って名前が大きく変更されることもある。

プレスリリースより(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000405.000030865.html)

 アカデミー生がどのような基準でデビューするかに関しては、公開されていない。元アカデミー生で、現在デビューしていない生徒は多数存在する。

 そしてVTAの場合、研修期間が終わると、練習配信の動画は全て非公開になる。現在も、公式チャンネルではアカデミー生の動画は一本も公開されていない。

 配信アーカイブが全て消えてしまうので、アカデミー生の活動は追いかけづらい。しかし、SNSを見る限り、練習配信を行っていた当時は、アカデミー生の“箱推し”的なファンが多くいたように筆者には感じられた。

 実際ににじさんじライバーとしてデビューできるかどうかわからないものの、アカデミー生の中には個性が強く才能のある人が多かったこともあり、「応援したい」という気持ちを強く持たせるプロジェクトだったようだ。推測の域を出ないが、練習配信のないアカデミー生が現在はいるようなので、成長過程を視聴者に見せることよりも「育成そのもの」に重点を置いているのが、今のVTAの運営体制なのだろう。

ぶいすぽっ!の育成プログラム「研究生制度」の場合

プレスリリースより(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000164.000044525.html)

 「ぶいすぽっ!」を運営する株式会社Brave groupでは、2023年からぶいすぽ研究生制度をスタートさせている。当時のプレスリリースでは「より多くの応募者の方に挑戦の機会を提供するための教育プログラム」と表現されている。

 「ぶいすぽ研究生制度」は、一般的にイメージされる「練習生」の制度と比べると、やや独特なルートになっている。

 「ぶいすぽっ!」が研究生制度を始める以前のオーディションでは、メンバーとしてそのまま採用されるか、もしくは「努力枠」と呼ばれるオーディション合格後にスキルアップに取り組む枠、あるいは追加の「課題」をデビューの条件として課される「条件付き合格」のような仕組みが存在していた。

 研究生制度は前述の「努力枠」を拡張したもので、研究生であることを明かさずに一個人配信者として活動し、実践を通してスキルアップをはかる仕組みになっている。

プレスリリースより(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000164.000044525.html)

 ぶいすぽ研究生制度からは、2024年に紡木こかげが、2026年には龍巻ちせが、研究生からデビューしていることを自身のXのポストや配信上で明らかにしている。

 紡木こかげのポストの動画を見ると、研究生としての活動は期間が定められているのがわかる。その間に何度か、採用試験を受けることができるようだ。受かるためのハードルはかなり高そうではあるが、チャンスが一度ではないというのは、研究生のモチベーションを高める寛容な措置だろう。

 なお、自分から、ぶいすぽ研究生に応募することは不可能だそうだ。公式WEBサイトによると「オーディションに落ちた場合、一部の方に限り運営から個別で研究生に対しての提案をするため、希望して研究生になることはできません」と明記されている。

 研究生に対しては、2023年のリリース段階では「希望者へのPC貸与」「定期的な採用試験の実施」「運営からの活動フィードバック」「ゲーム上達のプランニング」「配信戦略の提案」というサポートがなされることが公開されていた。それ以外にどのようなカリキュラムが行われているかについては明らかにはされておらず「詳しくは研究生候補の方にのみ案内しております」と公式サイトで発表されている。

 研究生時代は完全にサイレントで活動するため、視聴者側は追うことができない。このことからも、あくまでもデビュー前の育成カリキュラムであって、成長の過程を視聴者に見せるための企画ではないということがわかる。ぶいすぽっ!はゲームの実況配信がメインのグループなだけあって、ゲーム上達のための指導などが入っているのも、非常に独特。かなり手厚い教育システムが組まれているようだ。

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