NANAのテック・アルテミス 仕事に役立つBizテック観測所(第18回)
フルスタックアプリをわずか2分で生成! M5 Max 搭載の新型『MacBook Pro』レビュー 128GBメモリ×40コアGPUがもたらした衝撃

Appleは2026年3月、新型『MacBook Pro』を発売した。外観デザインは大きく変わらなかったものの、内蔵SoCを最新世代の「M5」シリーズに刷新。ラインアップとしてはM5 ProおよびM5 Maxを選択でき、パフォーマンスが引き上げられている。
これまで「Max」チップ搭載モデルは、より多くのCPU・GPUコアや大容量メモリを武器に、プロ向けの高負荷な制作作業を支えられる存在とされてきた。
しかし、その価値を従来のように「高解像度な画像編集や動画制作向け」とだけ説明するのは、もはや実態に合わなくなりつつある。なぜなら、4K動画編集やRAW現像といった従来の高負荷な作業は、「M5」や「M5 Pro」でも十分にこなせるようになってきたからだ。かつては「Maxでなければ厳しい」とされていた処理も、SoCの進化により今では多くのユーザーにとって日常的なものになりつつある。
では、「M5 Max」は下位のSoCとどんな違いを生むのか。その答えは、単に「より重い作業をこなす」という延長線上にはなく、むしろこれまでクラウドに頼るのが当たり前だった処理、特に「生成AIの分野」で新たな価値を持ちはじめている。
本稿では、その一例として「ローカルLLM」に注目する。クラウドに頼らず、大規模言語モデルをどこまで実用的に扱えるのか。M5 Max搭載『MacBook Pro』がもたらす、新しい「プロ向け性能」のあり方を検証していく。
16インチMacBook Pro (M5 Max) のデザインをチェック
今回のレビューにあたり、『MacBook Pro』の16インチフルカスタムモデルを試用することができた。Apple公式サイトで購入すると、その価格はなんと118万3800円(税込)。中古の軽自動車が買えてしまう値段なので、慣れていない人が聞くと驚いてしまうかもしれないが、メインメモリ128GBと8TBのストレージを搭載していることを考えたらむしろ妥当とも言える値段だ。
▼ 試用機のスペック
16インチMacBook Pro
スペースブラック
Nano-textureディスプレイ
M5 Max(18コアCPU、40コアGPU)
128GBメモリ
8TB SSD
118万3800円(税込)
『MacBook Pro』の筐体はアルミニウムユニボディを採用し、フラットで直線的なラインを基調としたシンプルなデザインに仕上げられている。薄型ながら剛性は高く、ディスプレイを開閉するヒンジ部分も安定感がある。閉じた状態では装飾を抑えたミニマルな外観で、天面中央にAppleロゴが配置されている。
カラーバリエーションはスペースブラックとシルバーの2色を用意。今回試用したスペースブラックのような濃いカラーは一見すると指紋が目立ちそうに感じられるが、独自の陽極酸化処理(酸化皮膜シール)が施されており、指紋が付着しても目立ちにくく、拭き取りやすい。
サイズは14インチと16インチの2種類を展開。いずれも薄型で持ち運びやすさに配慮された設計だが、16インチモデルは表示領域の広さが特徴だ。
筆者は14インチモデルを日常的に使用しているため、16インチモデルを触るとサイズの大きさを実感する。持ち運びや取り回しの面では不利に感じる場面もあるが、複数のアプリを並べて作業する用途では、この表示領域の広さが大きなメリットとなる。
ディスプレイにはMini-LEDバックライトを採用したLiquid Retina XDRを搭載。ベゼルは細く、上部にはノッチ(切り欠き)を備える。高い輝度とコントラスト、優れた色再現性を実現しており、プロ用途にも対応できる品質だ。Nano-textureディスプレイを選択すれば、外光の映り込みを抑えて視認性を高めることができる。
インターフェースも充実しており、左側面にはMagSafe充電ポート、Thunderbolt 5ポート×2、ヘッドフォンジャック、右側面にはThunderbolt 5ポート、HDMIポート、SDXCカードスロットを備える。プロユースを意識した構成で、外部機器との接続性も高い。
まさにモンスター級 「M5 Max」チップの性能を数値化してみた
今回の検証の主軸となる「M5 Max」は、AppleのM5シリーズにおける最上位SoCに位置づけられる。18コアのCPU(6つの高性能なスーパーコアと12のパフォーマンスコアで構成)と、最大40コアのGPUを備え、マルチスレッド性能と並列処理性能を大幅に強化している。
また、最大128GBのユニファイドメモリと最大614GB/sのメモリ帯域に対応し、大規模なデータを扱う処理でもボトルネックが発生しにくい。前世代と比較してCPU・GPUともに性能が向上しているほか、AI処理性能も大きく強化されており、コード生成やデータ解析といった高負荷なワークロードにも対応する設計だ。
「M5 Max」の性能を数字で確かめるため、「Geekbench 6」でベンチマークスコアを計測してみた。
CPUスコアは、シングルコアスコアが4306、マルチコアスコアが29066。GPUスコアはOpenCLが144909、Metalが223235という結果になった。
もっともお手頃な価格で手に入れられる『MacBook Neo』もCPU・NPU性能はかなり優秀だったが、本機の特徴はむしろGPU性能の高さにある。特にMetalスコアが22万を超えている点からも分かる通り、並列処理能力はノートブックとしては非常に高い水準にある。
この「M5 Max」の処理能力の高さは、AI系の処理性能にも表れている。上記は、ベンチマークソフト「Geekbench AI」を用いてM5 MaxのAI演算能力を数値化したものだ。特にGPUパフォーマンスが大きくスコアを伸ばしている点が確認できる。
ローカルLLMの推論をはじめとするAI処理は、CPUの純粋な演算性能だけでなく、大量のデータを同時に処理するGPU性能やメモリ帯域の影響を強く受ける。モデルの重みデータ(パラメーター)を読み込みながら連続的にトークンを生成するという特性上、こうした要素がボトルネックになりやすいためだ。
その点、M5 Maxは高いGPU性能に加え、128GBのユニファイドメモリを搭載することで、大規模モデルの扱いやすさという面でも有利だ。上記はあくまでベンチマークスコアではあるが、「どのような処理に向いているか」という観点でも従来のノートブックとは異なる用途領域に踏み込めるポテンシャルを備えているといえるだろう。
「ローカルLLM」も快適動作 フルスタックのブログアプリがわずか2分で生成
ベンチマークスコアからは、M5 Maxの高い処理能力が数値として確認できた。一方で、こうした性能が実際の用途でどのように活きるのかは、実際に動かしてみなければ見えてこない部分も多い。そこで、ローカルLLMを用いて実用面での挙動を検証してみた。
今回の試用機はメインメモリ容量が128GBと大きいため、「LM Studio」を用いて、コード特化モデル「qwen3-coder-next」(80Bクラス)を試すことに。ユニファイドメモリのおかげで、80BクラスのMoEモデルでも快適にロードすることができた。
コード生成は文章と比べて出力内容が具体的で、生成される量も多くなりやすい。フルスタック構成を一度に出力させることで、処理が途中で止まらず最後まで安定して続くかどうかも確認できる。処理の重さや安定性を見極めるうえでも適した題材だろう。
検証では、Next.js、TypeScript、Prisma、PostgreSQLを組み合わせたフルスタックのブログアプリ実装を指示し、認証(JWT)やCRUD、コメント機能、いいね機能まで含めた構成を要求した。
あえて「すべてのコードを省略せず出力する」条件を付けたが、生成は途中で途切れることなく最後まで継続し、約2分程度で完走。体感として待たされる印象はほとんどなく、処理は一定のリズムで進み続けた。
出力終了後に確認したところ、生成速度は約88tok/sec(1秒あたりの生成量)。ローカルLLMとしては十分に高速な領域だ。一般的なノートブックでは、こうした長大なコード生成は途中で止まったり、メモリ不足で動作させられない場合も少なくない。それに対して今回の環境では、設計から実装までを一気に吐き出す処理でも安定して完走できた。
ここで改めてM5 Maxの性能の高さを実感できるのが、処理時間の速さだ。本来、M1 Maxモデルであれば同じフルスタックコード生成は5〜15分程度かかる作業だが、M5 Maxではわずか2分で完了。カップラーメンが出来上がるよりも短い時間で完了できる点からも、ローカル環境における実用性が大きく向上していることがわかる。
また、ほかのモデルでも試してみたところ、「Llama 3.3 70B」では約12tok/sec、「Qwen 3.5 27B」では約24tok/secとなった。生成中にアクティビティモニターをチェックすると、GPU使用率は90%近くまで上がり、ファンが音を立てて回っていたが、温度は85℃前後で落ち着いていた。
結果として、小規模なWebアプリであればクラウドに依存せず、ローカルだけで生成できる現実味が見えてくる。しかも、それがデスクトップ環境ではなく、持ち運び可能なノートブックで実現できている点は大きい。
今回の検証を踏まえると、今後のデスクトップMacの進化にも期待がかかる。これまでもMacBook Proなどのノートブックで先行した技術や性能が、後からMac Studioなどのデスクトップモデルに展開されてきた経緯がある。ノートブック型デバイスでローカルLLMの活用がより現実的になった今、デスクトップ環境でもさらに余裕を持って大規模モデルを扱えるようになるだろう。
総額100万円超と高価だが40コアGPU+128GBメモリは「真のプロ」に
今回は、長大なコード生成や大規模コンテキストを扱うローカルLLMの動作検証という形で、新型MacBook Proの性能を確かめた。その実力はまさにモンスター級、とてもインパクトのあるものだった。
検証から見えてきたのは、ローカルLLMの実用性をさらに一段引き上げる存在になっているという点。先代のM4 Maxの時点でも、ローカルLLMはすでに実用的で、十分に快適と言える水準に達していたが、M5 Maxでは、処理のひとつひとつがよりスムーズになり、待ち時間や引っかかりをほとんど感じさせない「ストレスのない体験」へと確実に進化している。
40コアGPUを内蔵したM5 Maxと、128GBのメインメモリを搭載した環境では、80Bクラスのコード特化モデルを現実的な速度で安定して動作させ、フルスタックアプリの生成を数分で完走できた。M1 Maxなど過去のモデルで数十分を要していた、あるいは実用的ではなかった処理が、ノートブック単体で無理なく完結するようになっている。この「無理なくこなせる」という感覚こそが、世代進化の本質的な価値だろう。
この性能が特に活きるのは、やはりプロユースだろう。開発の現場では、設計から実装までを一気に生成するコードエージェントとして機能し、機密性の高いコードやオフライン環境でも安心して扱える、開発環境に深く統合されたローカルAI基盤として機能する。また、長文生成や要約、翻訳といったクリエイティブ用途でも、大規模モデルを実用的な速度で扱えるため、思考からアウトプットまでの流れを途切れさせることなくローカルで完結できる。
さらに、大規模コンテキストを扱うデータ分析や研究用途においても、機密データをクラウドに上げることなく処理できるメリットは大きく、企業用途や個人のプライベートAI環境としても現実的な選択肢となるだろう。加えて、動画・画像生成の前処理や機械学習のプロトタイピングなど、これまでデスクトップやクラウドに依存していた作業も、持ち運べる1台に集約できる。
総じて、M5 Maxは「ローカルLLMを日常的なツールとして使いこなす」ための完成度を大きく引き上げたチップだ。M1〜M3世代が「試せる環境」、M4世代が「実用に足る環境」だったとすれば、M5世代は「ストレスなく使い倒せる環境」に到達したと言える。
クラウド利用コストの削減、プライバシーの確保、処理速度の向上という3つのメリットを高い次元で両立できる点も含め、ソフトウェア開発者やAIエンジニア、クリエイターにとって、その価値は非常に大きいはずだ。
































