生誕30周年を迎える「ペルソナ」シリーズ カルト的人気から世界標準のRPGへ昇り詰めた生存戦略とは

「ペルソナ」シリーズが2026年で誕生から30周年を迎える。
「ペルソナ」はなぜ、30年という時を経て、いま絶頂期を迎えつつあるのか。シリーズのこれまでを振り返りつつ、人気の理由を考察する。
誕生から30周年を迎える人気RPGシリーズ「ペルソナ」
「ペルソナ」は、1996年にPlayStationで発売された『女神異聞録ペルソナ』を初作とするアトラスの伝奇ジュブナイルRPGだ。シリーズからはこれまでに、5作のナンバリングと多数のスピンオフ、移植版/完全版、リメイク/リマスターなどが展開されている。
最新作は、2024年4月(日本では2025年6月)にモバイル/PC向けにリリースされた『ペルソナ5:The Phantom X』。同タイトルは、シリーズの特長ともなっているスタイリッシュな世界観を、基本プレイ無料、かつ家庭用ゲーム機以外のプラットフォームで味わえるとして、サービス開始直後から多くのフリークにプレイされた。
また、2024年には、シリーズの分岐点となったナンバリング第3作の移植版『ペルソナ3 ポータブル』が、『ペルソナ3 リロード』としてPlayStation 5、Nintendo Switch 2、Xbox Series X/S、PCなどでリメイク化。近い将来には、同様に支持を集めるナンバリング第4作の完全版『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』も、『ペルソナ4 リバイバル』(以下、『P4R』)として復刻される予定となっている。いまや「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」といったRPGジャンルの双璧に勝るとも劣らない人気を誇っているのが、「ペルソナ」というシリーズだ。
アニバーサリーイヤーを祝う大規模なオンライン施策を展開中
先にも述べたとおり、「ペルソナ」は2026年、誕生から30周年の節目を迎える。アトラスの親会社であり、シリーズの発売元でもあるセガは今年1月より、“毎月だいたい30日あたりにさまざまなオンライン施策をお届け”する「毎月月末お楽しみ企画」を実施している。
1月の第1弾では、これまでに刊行されたコミカライズ作品の一部を最大5巻まで無料公開するキャンペーンや、当該商品の30%OFFセールなどを展開。2月の第2弾では、劇場版『ペルソナ3』とTVアニメ『PERSONA -trinity soul-』の全話を、動画プラットフォームのABEMAで一挙に放送/配信した。
また、去る3月23日には、3月末分の施策の内容が明らかに。第3弾では、『ペルソナ3』関連のサウンドトラックやライブ映像を30時間にわたり楽しめる、一夜限りのオンライン配信イベントを開催するという。プレスリリース内に記載された表現を見るかぎり、同企画は今後、『Persona Sound Station(ペルソナサウンドステーション)』という名前で、シリーズの別作品にも波及していくと見られている。
なぜペルソナは、誕生から30年がたった今、絶頂期を迎えつつあるのか
シリーズの生誕30周年を記念して展開されている、公式による本気度の高いオンライン施策。SNS上では、多くのシリーズファンが一連の動向を好意的に受け止めている。施策がスタートした時点では一部にとどまっていた熱狂が、第2弾、第3弾と回を追うごとに、少しずつ広がりつつある印象だ。おそらくシリーズ第1作が発売された日の9月20日に向け、さらに規模が大きく、訴求力の高いキャンペーンが展開されていくのだろう。もしかすると、そこに至るまでの過程で『P4R』の発売日や、ナンバリング新作にあたる『ペルソナ6』の存在が明かされていくこともあるのかもしれない。推測どおりの流れになるとすれば、その温度はさらに上昇していくことになるはずだ。
そうした盛り上がりの裏には、シリーズが築き上げてきた確かな人気の存在がある。なぜ「ペルソナ」は誕生から30年が経過しつつある今、絶頂期を迎えることができているのだろうか。
最大の理由と考えられるのが、シリーズが新規ファン層の発掘に成功した点だ。当初、「ペルソナ」はどちらかと言えば、コアゲーマーに愛されるRPGとしてのデザイン/ゲーム性を持っていた。「スピンオフ元である『女神転生』シリーズからの影響を感じさせる、ダークで含みのあるシナリオと世界観」「イラストレーターの金子一馬氏による、クセがありつつもどこか魅力的なキャラクターデザイン」「『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』に比べると、複雑で難易度の高いバトルシステム」などはその一例だ。シリーズの黎明期は、これらの要素に集まるコア層の、良い意味での偏愛によって支えられてきた面がある。
その一方で、シリーズはナンバリング第3作の『ペルソナ3』を境に方針を転換。根幹にある“ペルソナらしさ”に、キャッチーさ、スタイリッシュさを取り入れながら、新たなアイデンティティを築き上げてきた。こうした変化は、シリーズの支持層にも影響。「ペルソナ」は新たに手に入れたわかりやすいデザイン/ゲーム性によって、コア層だけでなく、ライト層にも愛されるRPGへと姿を変えることとなった。
ご存知のとおり、古参のファンのなかには、「ペルソナ」のエンターテインメント作品化を歓迎しない人もいる。しかしながら、そのような挑戦によって、シリーズの歴史が繋がってきたこともまた、否定しようのない事実だ。実際に、ナンバリング作品の販売本数は、ナンバリング第4作『ペルソナ4』まで概ね横ばいの状況が続いたが、その後の第3作、第4作のアペンド版/移植版/完全版のリリースを機に飛躍。最新ナンバリングである『ペルソナ5』では、オリジナル版が全世界320万本超、完全版の『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』が全世界330万本超(のちに発売されたリマスター版を含む)という、シリーズ最多の販売数を記録した。また、第3作『ペルソナ3』の発売以降は、登場人物のキャラクター性を全面に出し、メディアミックスやスピンオフ作品化も加速。多角的にファンを発掘してきた面もある。
たらればにはなるが、もしナンバリング第2作『ペルソナ2 罪・罰』以前の方向性でその後の作品が制作されていたとしたら、上述のようなシリーズの飛躍はなかったに違いない。商業的成功をベースにしたシリーズの継続という観点では、開発元であるアトラス、発売元であるセガの英断と見ることができるのではないだろうか。
ともすると、「ペルソナ」のエンターテインメント作品化は改悪であるとも言われやすい。しかし、ビジネスとして成功しなければ存続が叶わないこともまた、自明の理であるといえる。ゲームカルチャーには、こうした生存戦略に失敗し、歴史に埋没してしまったシリーズ/作品が多くある。賛否はあれど、このように名前が残っていくことが、一周まわって文化的であるともとらえられる。
シリーズのあいだに横たわるファンの対立構図を解消するためにも、ぜひアトラスには第2作『ペルソナ2 罪・罰』のリメイク化に臨んでほしい。人気の礎となってきた作品の復刻は、シリーズが飛躍してきたからこそ取り組める施策であるからだ。このことこそが、次の10年を歩んでいく「ペルソナ」に求められるものなのではないか。シリーズを愛するすべてのファンを納得させてはじめて、「ペルソナ」は本当の意味で、「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」に比肩しうるRPGシリーズとなれるはずである。誕生から30周年を迎える今だからこそ、そのような想いを口にせずにはいられない。

























