注目のキーワード「フィジカルAI」とは何か 日本メーカーの活躍が期待される理由と共に解説
テスラやGoogleも参入 世界のヒューマノイドロボット開発
前述のように、フィジカルAI市場においてヒューマノイドロボットは、大きなポテンシャルを秘めている言わば“フィジカルAIの花形”である。それゆえ、世界および日本でさかんに研究開発が進んでいる。以下では、世界におけるヒューマノイドロボット研究事例を紹介する。
NVIDIAと並び立つほどヒューマノイドロボットの研究開発に熱心な企業のひとつとして、自動車メーカーのTeslaが挙げられる。同社が開発中の『Tesla オプティマス』に関する2024年10月公開のYouTube動画を視聴すると、同ロボットが人間や障害物を検知して、工場内を二足歩行する姿を確認できる。
Forbes JAPANは2026年1月30日、Tesla株の上昇を伝える記事を公開した(※3)。アメリカ時間同月29日、同社は2025年第4四半期の決算を発表したのだが、その発表において同社製自動車のモデルSとモデルXの生産を終了して、製造施設を『Tesla オプティマス』の生産に転換すると述べたのだ。
以上の発表直後、同社株価が上昇した。こうした動向から、同社は近い将来、”自動車メーカー”ではなく”ロボットメーカー”として知られるようになるかもしれない。
生成AIにおけるOpenAIのライバルであるGoogleも、その傘下の研究機関・DeepMindが中心となって、ヒューマノイドロボット開発を進めている。同機関が開発しているのは、Google開発の生成AIであるGeminiをロボット向けにブラッシュアップした「Gemini Robotics」である(※4)。
Gemini Roboticsを実装したロボットは、人間と自然言語で会話できるうえに、まったく訓練したことのない新規のタスクについても、その解決法を推論できる。まさに“物理版生成AI”とも言える汎用性の実現を目指しているのだ。
中国のロボットメーカーの動向も見逃せない。というのも、同国のテック業界動向を伝えるメディア36Kr Japanが2026年2月4日に公開した記事によると、2025年における世界のヒューマノイドロボット出荷数トップ3のメーカーは、いずれも中国企業だからだ(※5)。
出荷数1位の中国メーカーの智元機器人(英語企業名「AgiBot」)は、世界最大規模の家電製品見本市CES 2026に多種多様なロボットを出品し、そのなかにはヒューマノイドロボットもあった(以下の画像を参照)。
『ASIMO(アシモ)』の伝統を受け継ぐ日本のフィジカルAIメーカーたち
ヒューマノイドロボット開発は、日本でもさかんに取り組まれている。この動向の背景として、かつて自動車メーカーのホンダが世界初の本格的二足歩行ロボット『ASIMO(アシモ)』を開発したことからもわかるように、日本メーカーにはこの分野における歴史的蓄積があることが指摘できる。
ソフトバンクグループ株式会社傘下のソフトバンクロボティクスグループ株式会社は2026年2月2日、同社が開発したロボット『Pepper』が世界初の量産型ヒューマノイドロボットとしてギネス世界記録に正式認定されたことを発表した。この発表に合わせて、同ロボットの後継機『Pepper+』の提供開始も発表した(※6)。
最新AIを搭載したPepper+は、さまざまな用途で活躍できるように開発された汎用ロボットだ。具体的には、リアル店舗での接客や顔認証技術を活用したオフィスの入退室管理などが可能だ。エンタメ方面での活躍も期待されており、YouTubeには同ロボットがSnow Manの「カリスマックス」を歌っている動画が公開されている。
2014年創業のスタートアップであるドーナッツロボティクス株式会社は2026年1月21日、同社の特許技術を搭載した二足歩行の量産ヒューマノイド『cinnamon 1(シナモン ワン)』を発表した(※7)。2026年内に同ロボットによる工場内や建築現場での作業代替を目指している。
cinnamon 1の特徴として、ジェスチャーで操作する技術「サイレント ジェスチャー コントロール」への対応が挙げられる。こうした特徴により、各種工作機器の動作音で人間の声が届きづらいような状況でも、ジェスチャーによるロボット制御が可能となる。
2025年10月2日には電子部品メーカーの村田製作所が、ヒューマノイドロボット開発を目指す一般社団法人「KyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)」を早稲田大学などとともに設立したことを発表した(※8)。ロボット開発における各研究フィールドを、そのフィールドを得意とする企業が担当する”ヒューマノイドのための日本連合”を結成して、ロボット開発に取り組む。
KyoHAは2026年3月に初期プロトタイプを製作し、同年末に2ndプロトタイプの製作を予定している。
以上のようにフィジカルAIは本格普及の前段階にあり、関係企業はその研究開発でしのぎを削っている。この分野に関して、日本企業は世界のライバルたちと互角に戦えるポテンシャルを持っている。それゆえ、NVIDIAやTeslaのような海外のビックテック企業だけではなく、日本のメーカーやスタートアップにも注目すべきだろう。
〈参考〉
(※1)NVIDIA「フィジカル AI とは?」
https://www.nvidia.com/ja-jp/glossary/generative-physical-ai/
(※2)Cervicorn Consulting「Physical AI Market Size, Share, Growth, Report 2025 to 2034」
https://www.cervicornconsulting.com/physical-ai-market
(※3)Forbes JAPAN「テスラ株上昇、マスクがAI転換を表明 モデルSとXを終了しロボット「Optimus」生産へ」
https://forbesjapan.com/articles/detail/90735
(※4)Google DeepMind「Gemini Robotics」
https://deepmind.google/models/gemini-robotics/
(※5)36Kr Japan「人型ロボット、2025年世界出荷1万3000台 中国メーカーがトップ3独占」
https://36kr.jp/456326/
(※6)ソフトバンクロボティクスグループ株式会社「Pepper世界初の量産型ヒューマノイドとしてギネス世界記録認定!」
https://www.softbankrobotics.com/jp/news/press/20260202a/
(※7)PR TIMES「ドーナッツロボティクス、日本ブランドのヒューマノイド『cinnamon 1』を発表 世界初のジェスチャーコントロール搭載のヒューマノイドを年内に市場投入」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000057944.html
(※8)村田製作所「「KyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)」~日本発・純国産ヒューマノイドロボット開発に向けたモノづくり体制と製作ロボット内容を発表~」
https://corporate.murata.com/ja-jp/newsroom/news/company/general/2025/1002