ボカロP・OSTER projectはなぜ『ボカコレ』に“ガチ”で挑み続けるのか シーンのベテランが語る葛藤と恐怖
OSTERが思う、TOP100の魅力 「評価されるって苦しい。けど、そこに夢を見てる」
──OSTERさんは以前から「ボカコレ中は気が休まらない」という旨の話もされていますよね。
OSTER:「TOP100」部門の他の曲とか、怖くて絶対に聴けないですね(笑)。「本物の若い人が作ってるな」って自信をなくしちゃうので。でも、今回の「エキシビション」部門は、楽しんでいろんな曲をチェックできました。例の「食べ物曲」シリーズも速攻で聴きにいったし(笑)。
──それもひとつ、投稿参加者も純粋な気持ちで、いちリスナーとしてボカコレを楽しめるように、というドワンゴさんの狙いかもしれませんね。実際に戦いの場にいると、やっぱりなかなかそうはいかないでしょうから。
OSTER:ボカコレはガチればガチるほど、期間中に平穏でいられないんですよ。だからこそ、そんな思いをしてるのは自分だけじゃないよ、そんな思いをしながらも参加しててえらいよ、というメッセージをこの記事を通して伝えたいですね(笑)。
やっぱり、評価されるって苦しいです。けど、そこに夢を見てガチで参加しているのも皆一緒だと思うので。一緒に頑張って欲しいな、と思いますね。
──以前も「ボカコレをリスナーとして楽しめるのはイベントが終わってから」と言われていましたよね。一方で、純粋なリスナーの視点からすると期間中のランキング変動も含めてリアルタイムで追うことの楽しさは後追いで実感できない部分なので、貴重ですね。
OSTER:遅刻投稿組がものすごい追い上げで上位に食い込んだりとかね。いろんなドラマがありますが、全部心臓に悪いんですよ(笑)。遅刻投稿がシステム的にも不利なのはわかっていますけど、やっぱり心理的にも追われてる感はあって……。
──実際、前回のボカコレ後の心情はいかがでしたか? 「TOP100」部門では自身の最高順位である12位という結果も残されました。
OSTER:大量の楽曲が投稿される中で12位を取れたことは、本当にすごいことだと思うんです。……でも、自分としては、まだまだもっと上に行きたい気持ちは全然あって、反省点の方が大きかったですね。次はもっと違う感じにしよう、って。終わった瞬間から次のボカコレのことずっと考えてますから。
ありがたいことに時々“レジェンド”なんて呼ばれていますが、それがものすごい皮肉に聞こえてしまうんですよ。そんな風に言われるほど今の自分の曲は聴かれていないし、ただずっと長くやっているだけの人なんじゃないか、って。自己評価が呼ばれ方に全然伴っていなくて、それがすごく苦しいんです。
これを打開するためには、やっぱり今の界隈を引っ張れるようなクリエイターに改めてならなきゃいけなくて。ランキングがすべてではないけど、もう一度現代のボカロシーンにいる人みんなが「この曲知ってる!」っていう曲を作りたいんです。そんな作品が年間で何曲あるかを考えると、とんでもなく狭き門なのはわかってるんですけど。
──年間で投稿されるボカロ曲の母数を考えると、恐ろしく高いハードルですよね。ちなみに、そういうお話を他のクリエイターさんとする機会などはあるんですか?
OSTER:いや、私そういう話を出来る人が周りに全然いなくて……。「仲間なんかいらねえよ」って曲を出しているせいかもしれないですけど……(笑)。
なんか、最近のボカロPさんってみんな「横の繋がり」が濃くないですか? 自分はすごく孤独な時代を生きてきたので、うらやましいなと思いつつも、反面自分があの中に入れるかと言われると、あんまり入れない気もして……。
──ですが、そういったOSTERさんの葛藤や挑戦の姿勢が、同様に長くボカロシーンで戦っているクリエイターさんの背中を押している一面はきっとあると思います。直近のボカコレでも、ベテランPの参加が散見されてますよね。
OSTER:前回、bakerさんも出てましたよね? あとはNemさんも。
──「アザトガール」と「スカーレット・ドリームズ」ですね。あとは鬱Pさんも「大雀蜂」を投稿されましたし、少し回を遡るとゆうゆ/仮乃スガタさんやガルナ/オワタPさん、梨本ういさんなどのお名前を拝見したことがありますね。
OSTER:あの頃の人たちで、私みたいなマインドでやっている人は今もうあんまりいない気がするんですよね。直接お話したことはほとんどないんですが、こんな中年にもなってギラついててみっともないと思われてないかな……(笑)。
──とんでもないです。一生ギラついていきましょう(笑)。そんなお話を経て、次回の『ボカコレ2026冬』開催ももう目前です。今後のボカコレがこんなイベントになるといいな、という構想などはありますか?
OSTER:「エキシビション」部門の新設は個人的にすごくいいと思ったので、このままいって欲しい気持ちと、一方でその捉え方が変な方向にこじれて参加者が息苦しくならないといいな、と。システム云々の話より、参加者一人ひとりの意識の問題でもあるので、難しい部分ではありますけどね。
でも、ドワンゴさんならその都度ユーザーの意見を柔軟に聞き入れて、対策やアイデアを考えてくださる、という信頼が私の中にはあるので、その点では安心しています。そういった対策と革新を続けていくことで、今後もボカコレがすごく楽しいイベントでありつづけるんじゃないかと思います。
──ランキングの面白さもありつつ、単純にボカロ曲を楽しむ投稿祭本来としてのも両立できるといいですよね。加えてそれが、純粋なリスナーでも投稿者でも同じように。相反する要素もあるので、難しさはありますが……。
OSTER:ガチな人もエンジョイしたい人も、みんなが納得できるといいですよね。私自身も、今後もボカコレが「新進気鋭のクリエイターの発掘場」であると同時に、私みたいな昔からやっているクリエイターが「再注目されることを目指せる場」でもあり続けて欲しいな、と願っています。
そういう意味でも、ボカコレにはこの先も夢のある場所、シーンであり続けてほしいですね。
──新しい人も昔の人も、全員を置いて行かない。それはボカロ文化の原点である多様性の、より理想に近い姿でもあると思います。
OSTER:どんな音楽でも、誰でも受け入れるよ、という懐の深さ。誰かが明言化したわけじゃないけれど、それが暗黙の共通認識として根底にあるのがボカロの良い所ですから。ボカコレはその性質を体現して、これからも盛り上がるイベントであり続けると嬉しいですね。
──ありがとうございました。そうしたら次回は『ボカコレ2026冬』にて、ですね。
OSTER:今回は一応、「TOP100」部門の1曲だけの予定です。「これがOSTER projectだぞ」と原点に返るような、それでいてこれまでの3年間で変わってきた自分の集大成となる曲を出したいと思ってます。
……いや、でも今から「エキシビション」部門も間に合うのかな? こうやってまた自分で地獄を作っちゃうんですよね。情熱が地獄を作るんですよ、クリエイターは(笑)。
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