『超かぐや姫!』に登場する「未来の技術」と、“フラット”なインターネットの描き方を見て

ネガティブな要素が描かれない、理想的なバーチャルの未来

 

 また、『超かぐや姫!』では「スマコン」を悪用したり、「ツクヨミ」でいわゆる“荒らし行為”をするユーザーなど、ネガティブな描写はほとんど描かれない。ライバー活動で競い合うという仕組み上、嫉妬や妨害といったトラブルが巻き起こってもおかしくないし、物語の流れとしてそういったシーンが登場したとしても違和感はないだろう。しかし、同作ではスマコンも、ツクヨミも、ライバー活動も、一貫して「みんながハッピーになるためのツール」として描かれている。唯一、ストーリー後半で「チート」に対してシステムから警告が発せられるシーンはあるが、これもある種の「緊急避難」的な意味合いが強かった。

 そして、メインキャラである彩葉とかぐやが、現実とバーチャルに差を付けず、どちらも自分たちが幸せであるための居場所として大事にしていることも、本作の“姿勢”を表すワンシーンだ。とあるシーンで、かぐやが「やっぱ現実最高!」と言った時、彩葉が「私はツクヨミも好きだけど?」と返す会話がある。現実で海に遊びに行くのも、バーチャルでライブをするのも、どちらもかけがえのない体験であり、ふたりがそれらを等しく大切にしている様子が、随所で描かれている。このあたりは、山下清悟監督が明確に、インタビューで自身のスタンスを述べている。

「今回の作品では、ネットに対してネガティブやポジティブといった特別な感情を持つわけではなく、あくまで『インフラとしてのネット』を描いているんです」「あまり題材に対してメッセージ性を持たせているわけではないんです。例えば、『VRから現実に帰れ』といった形のテーマは一切ありません」「良くも悪くもネットに対する強い意識はなく、当たり前にそこにあるものとして描いているということです」(※2)

 かぐやがスマコンを用いて「ツクヨミ」でライバー活動をしているのは、それらのツールが自分たちの「楽しい」を表現するのに向いていたからに他ならない。「配信は実写のほうがいい」とか「「ツクヨミ」ライバーはアバターでやるべき」とか「ライバー特定からの炎上」というようなやりとりが一切起こらないのも、フラットな感覚でこの作品が作られているからだろう。

『超かぐや姫!』直前予告映像| 2026年1月22日(木) Netflixにて世界独占配信 - YouTube

 ネットでの活動や、バーチャルにまつわる毒っけがほとんど描かれないからと言って、物語の味が損なわれることはない。なぜなら、同作は「ふたりの女の子がハッピーに向かって突き進むこと」が一貫したテーマであり、それを描くために2時間20分の尺では足りないくらいに楽しい描写が詰め込まれまくっているからだ。まるで、映像・音楽・物語が爽快感に満ち溢れているのだから、そこにノイズは必要ないとでも言わんばかりに。

 人生のハッピーエンドを目指す物語においては、見えないものを形にして人と人がつながってきた「ネット文化」の表現方法も、とてもハッピーだ。興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。

※1:https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1768959910
※2:https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1768959910&p=3

■関連リンク
Netflix映画『超かぐや姫!』公式WEBサイト:https://www.cho-kaguyahime.com/

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