『Weekly Virtual News』(2025年12月26日号)
にじさんじ・鈴原るるの復帰に湧いたVTuber業界 『VRChat』は公式イベントで日本市場の“特異性”を明かす
鈴原るるが4年越しの復活
先々週の連載で、元にじさんじ・鈴原るるのYouTubeチャンネルのアーカイブが再公開されたことを伝えた。2021年に引退しつつも、その活動は語り草になっていた一人。突如のチャンネル再公開に対し、「復帰するかどうか具体的な動きは見られない」と記した。
しかし、12月16日に突如、にじさんじ公式Xが動いた。「このパレットにもっともっと、思い出を重ねよう。」の一文とともに、見慣れたシルエットが動画に映され、鈴原るるの過去の姿が現れた。
映像の最後に記された日付は12月23日。そして、更新が停止していた鈴原るるのXアカウントは、その日から毎日カウントダウンを重ねていた。そして迎えた23日、見事に活動復帰を迎えた。
完全な活動終了をはさんでからの復帰は、それこそにじさんじの笹木咲など前例はあるが、4年というブランクを挟んだ復帰は前例が思いつかない。間違いなく、VTuber業界の大きなマイルストーンとなった一日として記憶されるだろう。
『VRChat』初の公式ビジネスカンファレンス開催 日本市場への熱視線が明らかに
12月17日には、『VRChat』のビジネスカンファレンス「VRChat Japan Business Experience 2025」が開催された。日本で『VRChat』の公式ビジネスイベントが開催されるのは、これが初めてだ。
筆者も現地に赴いたが、VRChat社による基調講演では日本市場への注力が語られ、「『VRChat』における日本のクリエイターの数は、その他の国のクリエイターの数よりも多い」と記したスライドの撮影写真がXで多数拡散されたことも合わさり、その意思は広範囲に伝わることとなった。
イベントはその他にも、現在事業に取り組む関連企業のセッションや、展示コーナーで充実していた。そして、いくつかの企業は新展開の発表も行った。とりわけ、『VRChat』向けアイテムの販売先として名高い「BOOTH」運営のピクシブは、『VRChat』連動即売会『BOOTH Festival VRChat Edition』の開催を発表した。
イベント内容はシンプル。「BOOTH」側のWeb会場に登録されたアイテムが、『VRChat』の専用会場で抽選表示され、ユーザーは現実の買い物のように選択することができる。最後に“商品カゴ”から商品情報をまとめてチェックできるというイベントだ。会場での表示をシンプルにする代わりに、出展のしやすさと、来場者へのバーチャルな買い物体験を提供する、新しい基軸の即売会イベントだ。
また、トランスコスモスも越境ECサイト「Geek Jack」にて、『VRChat』方面で活動するクリエイターの制作以外の作業を代行するサービス「モデサポ!」を「VRChat Japan Business Experience 2025」で発表した。メッセージや翻訳、利用許諾管理代行など、クリエイターにとって煩わしい「クリエイティブ外作業」を行うというもので、こちらも需要が見込める切り口だ。
『VRChat』はマネタイズ面で将来性を不安視する向きもあるが、少なくとも日本市場に向けた事業開発においては、非常に前向きな姿勢が感じ取れた。運営本体と日本の事業者やクリエイター/コミュニティが手を取り、さらなる発展へとつながることを2026年は期待したいものだ。
天羽衣と猫宮ひなたのVRChat配信をチェック
ところで、最近はまた『VRChat』に顔を出すVTuberが見られるようになった。直近で見られた配信を2つ紹介しよう。
まずは、ななしいんく所属の天羽衣。デスクトップモードで行う初めての『VRChat』配信は、スタンミとの出会いで脚光を浴びた一般ユーザー・トコロバとの共演だった。まさかの組み合わせに筆者も驚かされたが、Twitchでの配信も多い天羽衣の活動を鑑みれば、意外と自然な出会いとも感じる。
二人は比較的最近公開されたホラーワールドに挑戦。謎解き要素もあったため配信時間は2時間にも及んだが、談笑しつつホラーを堪能する姿は、2024年にスタンミとトコロバが配信で見せた「ケの日のVRChat」の光景を思い起こさせた。なお、天羽衣はVRデバイスを調達済みのようで、今後さらに踏み込んだ配信を展開する可能性もありそうだ。
次に、黎明期から活動する古参の猫宮ひなた。12月7日から、『VRChat』を舞台にした動画投稿を開始した。彼女だけでなく、隠神こかげや八尋けいなど、いわば猫宮ひなたファミリーで、赤見かるびのオリジナルワールド「BURGER PRINCESS」訪問からスタートしている。
そこから連続で『VRChat』動画を投稿しているが、最新回では日本人向けの交流ワールド「FUJIYAMA」を訪問。他のユーザーもいる空間へと乗り込み、一般ユーザーとの交流を行っていた。こうした動きができるのは独立勢力ならではの強みだろう。この強みを活かした、機動力の高い展開を仕掛けていくのか、個人的に注目したいところだ。