さたぱんPが語る、ボカロPとしての“在り方と信念” 海外シーンへの視座と大成功の遠征を振り返る
さたぱんPの挑戦は続く 今後のボカロシーンに期待すること
──ありがとうございました。最後に今後も海外へ文化が拡大する中で、今の日本のボカロシーン自体に期待することはありますか。
さたぱんP:ボカロシーンで注目されていない音楽ジャンルって、まだまだありますよね。例えばレゲエミュージックはそのひとつだと思っていて。元々私自身もレゲエがすごく好きで、一応「ボカロレゲエ」というタグもありますけど、ロックやハイパーポップに比べると投稿数がかなり限られるんです。だから最近、ボカロに詳しい方に会うたび、「いいボカロのレゲエありません?」って絶対訊くんですよ(笑)。
そういう現状のボカロカルチャーでフィーチャーされていないジャンルを上手にマッチさせたら、もっと海外の人にも刺さると思うんです。しかもレゲエって今、アフリカ圏のサブスクサービスでめちゃくちゃ再生が回っているらしいんですよ。なぜかというと、アフリカ圏でここ数年一気にスマホが普及したから。
アフリカ圏の方々がスマホを持つようになって、サブスクサービスでガンガン曲を聴いているから、今世界中のレゲエアーティストが皆びっくりするぐらい、再生数が回っているんです。そういう我々にとっての“未開の地”、今の生活でほぼ関わりのない場所で、アフリカの方々にも刺さる曲をボカロでやれたらめちゃくちゃ面白いんじゃないか、と考えています。誰もやっていない分、「本当にできるのか?」という思いも当然ありますが、そこは挑戦したいし期待したいですよね。何もない畑を耕していく面白さというか。
──それ、すごく夢のある話ですね。ものすごく面白そうです。
さたぱんP:ただやっぱり大事なのは、それをウケ狙いでなく「やりたいからやる」じゃないとダメで。これが流行りそうだから、でなくレゲエが好きだから、そのジャンルが好きだからやる、が絶対に大前提ですね。「自分に刺さらないならやらない」も必要です。
そもそもレゲエとしてちゃんとした音楽を作らないといけないし、音楽や文化へのリスペクトがないものってすぐにわかるんですよ。特にレゲエは元々慣習や文脈にめちゃくちゃ厳しいジャンル/業界で、実際にやったとしたら、間違いなく初めはバッシングされると思います。それも、多方面から(笑)。私としては、その壁もすでに見えていて、でもやるならそれを超えなきゃいけない。刺される……違うな、レゲエなら“撃たれる”覚悟でやらなきゃいけない、と。
──少し前にSNSでも、VOCALOIDとHIPHOPにまつわる論説が局所的に注目を集めてましたよね。そこに通ずる話でもある気がします。
さたぱんP:ボカロ曲である以前に、どんなジャンルでも音楽文化に対するリスペクトは大事ですからね。特にHIPHOPは元々ギャングスタの音楽だったのが、だんだんアッパーグラウンドになっていって、間口が広がりすぎると本質的な要素は薄れていってしまって……というのも、議論になっていますよね。これはすごく難しい話だと思います。
ただ、私自身はやっぱり“濃い音楽”が好きだし、自分の活動でも何でも、リスペクトを持った“濃い”ものを、これからもやっていきたいですね。
■シンガポール『AFA2025』に出演した栗山夕璃&さたぱんPパフォーマンスの様子
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