「龍が如く」はなぜ人を惹きつけるのか 誕生から20年、一貫して描かれ続けた“生々しい人間ドラマ”

『龍が如く』はなぜ人を惹きつけるのか

 12月8日、「龍が如く」シリーズが発売から20周年を迎える。

 いまや年齢・性別を問わず愛される人気作品に成長した「龍が如く」。同シリーズはなぜ、人を魅了し続けるのだろうか。本稿では20周年のタイミングで、あらためてその魅力を掘り下げていく。

全世界で累計2,770万本を販売したセガ発のアクションアドベンチャー「龍が如く」

『龍が如く8』ストーリートレーラー

 「龍が如く」は、セガ傘下の龍が如くスタジオが開発を、セガが発売を手掛けるアクションアドベンチャーシリーズだ。プレイヤーは、東京・新宿に実在する歌舞伎町をモデルとした架空の街・神室町を舞台に、元ヤクザの主人公・桐生一馬の目線から、彼をめぐる人間模様の物語を見つめていく。

 初作である『龍が如く』が発売されたのは、2005年12月8日のこと。以降、シリーズからは、9作のナンバリングタイトルとその外伝、スピンオフ、リメイク/リマスターなどが展開されている。全世界における累計販売本数は2,770万本(フルゲームの合計。ダウンロード版を含む)。いまやセガを代表する人気IPのひとつとなっているのが、「龍が如く」シリーズだ。

 2025年12月8日には、『龍が如く 極』『龍が如く 極2』のリマスター版と、『龍が如く0 誓いの場所』のディレクターズ・カット版『龍が如く0 誓いの場所 Director's Cut』もリリースを迎えた。

その魅力は、生々しい人間たちが織りなすドラマティックなストーリーに

Nintendo Switch™ 2『龍が如く0 誓いの場所 Director's Cut』ファーストトレーラー【2025年6月5日発売】

 セガ発のアクションアドベンチャーとして、ファンならずとも誰もが知る人気作品となった「龍が如く」。同シリーズはなぜ、これほどまでにフリークたちの心を掴むのだろうか。

 最大の魅力は何と言っても、ドラマティックなストーリー展開だろう。「元ヤクザ」「歓楽街」「喧嘩バトル」など、ゲーム内に登場するワードは一見、キャッチーさを狙ったもののように見える。しかし、実際にプレイすると、そのようなファーストインプレッションとは裏腹に、しっかりと作り込まれたシナリオの存在に誰もが気付くことになる。

龍が如く0 誓いの場所

 それもそのはず、シリーズ人気の礎を築いた第1作『龍が如く』と第2作『龍が如く2』では、『不夜城』『漂流街』『少年と犬』などの作品で知られる小説家・馳星周氏がシナリオの監修を手掛けている。同氏は、ミステリーにハードボイルドの要素を加えた文学分野のサブジャンル「暗黒小説(ノワール小説)」の代表的作家として知られている。こうした同ジャンルの個性はシリーズの作品的特徴と距離が近い。少なくとも、その黎明期においては、馳星周氏の作家性とのシナジーによって、シナリオのクオリティが担保されてきたはずだ。

 一方で、本当に評価すべきなのは、同氏がシナリオの監修を離れたあとも、シリーズがその質を担保し続けてきた点だ。おそらくここには、実現したいこと、ファンの支持が集まっているポイント、築いてきた作品性などに対する、制作陣の高い解像度の存在があるのだろう。だからこそ、「龍が如く」は誕生から20年が経った現在もなお、尻すぼみになることなく、広くフリークたちに支持される作品となっている。シリーズの現在地にシナリオの完成度が与えた影響は大きい。

龍が如く0 誓いの場所

 また、こうしたドラマティックなストーリー展開を支えているのが、個性あふれるキャラクターたちの存在だ。無論「魅力的なキャラクターが登場する」というだけであれば、他の人気作品/シリーズにも共通する性質だろう。「龍が如く」だけのオリジナリティとして、さらに噛み砕いた表現にするのならば、それは「登場する全員が生々しい人間らしさを持っている」となる。

 たとえば、主人公の桐生一馬は絵に描いたような極道でありながら、義理と人情に厚く、面倒見が良いという内面を抱えている。他方、「100億の少女」と呼ばれるシリーズ全体のヒロイン・澤村遥は、ひょんなことから裏社会に巻き込まれ、さまざまな危機に直面するという不幸な生い立ちながら、利発的で愛らしいという幼気な少女である。ゲーム内において、桐生はその性格から、彼女を守るために奔走する。それぞれに人間らしいキャラクターたちのあり方や関係性が、プレイヤーの感情移入を誘い、さらに物語をドラマティックに感じさせている面もあるのかもしれない。

龍が如く0 誓いの場所

 これらに加え、高難易度のトレンドに逆行した人を選ばないアクション性、カジノやパチスロ、キャバクラといった舞台を歓楽街としていることならではのサブイベントの存在などが、シリーズを「ただの任侠作品」という立ち位置から脱却させている。もし「龍が如く」が、その作品名やテーマにあるとおりの無骨な任侠作品だったとしたら。現在のように、年齢や性別を問わず支持されるシリーズとはなり得なかったのではないだろうか。

龍が如く0 誓いの場所

 ゲーム業界においては、作品数を重ねるたびに、本来の魅力を失っていく人気シリーズが少なくない。その意味において、「龍が如く」は稀有の存在であると言えるだろう。20周年を彩った3タイトルは、リマスターや移植と、すべてが既存作品のリバイバルだったが、遠くない未来にはきっと、ナンバリング最新作などでファンをさらに満足させてくれるはずだ。

 ゲームカルチャーに名を刻む作品に成長した「龍が如く」シリーズ。今後のさらなる飛躍に期待したい。

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