kz(livetune)が語る、“ボカロ”が世界に広がったシーンの現状 オーストラリア開催『SMASH!』の盛り上がりと共に振り返る

「ボーカロイドに対するスタンスは、昔も今もずっと変わらない」

ーー今回の『SMASH! Anime Convention』では、12日のアフターパーティーと13日のデイイベントに出演しましたが、それぞれ違った時間帯でパフォーマンスしてみてどうでしたか?

kz:いつも通りというかなんというか……。最近、どこでやってもアウェイ感がないんですよね(笑)。初音ミクをはじめとしたボーカロイドもそうですが、ここ10年ぐらいで日本のカルチャーが世界に浸透した影響か、かつてよりもリアルタイムに色んなアニメや音楽などが届いているような気がしていて。

 昔だと集英社作品だけしか届いてないんじゃないか、というくらいの感覚だったのですが、コスプレイヤーさんの衣装なんかにも顕著に表れているように、どんどんやりやすくなっているというか。ヨーロッパはまだ少しタイムラグがあるようにも思えますが、今回のようにオーストラリアやアジア圏は特に差がなくなってきていると思います。

ーー今回の『SMASH!』への出演を後押しした『ACC』のように、様々なキャリアのクリエイターに世界へ飛び出すチャンスを与えるプロジェクトというのは、一人のアーティストとしてどのように感じますか?

kz:自分や同年代のクリエイターは、おかげさまでアジア圏でのDJも度々やらせてもらっているのですが、若手となると全く違いますからね。重い気持ちで捉えないでほしいし、これを機会に売れる・売れないということを考えないでほしいのですが、1人でも2人でも終わった後に「あの曲すごく好きでした」と言ってもらえる人が海外にいてくれたら、単純に嬉しいと思うし、クリエイターとしてすごくモチベーションになる。そういう機会を与えてくれるのはすごくいいと思います。

ーー最後に、kzさんは今後ボーカロイドカルチャーへどのように関わっていきたいですか?

kz:それは俺に曲を作れってことですか?(笑)。

ーーそういう意図はないんですけど(笑)、せっかくなのでそこも含めて伺わせてください。

kz:ボーカロイドに対するスタンスは、昔も今もずっと変わらないです。すごく気に入ってるシンセの音色があったとして、5年後もそれを使うかと言われたら使っていないかもしれないですけど、6年後くらいに「久しぶりに使ってみたいな」と思う瞬間もあったりするわけですから。

ーーその時々で必要だと思ったら、もう一度手に取ることもあるだろうと。

kz:そうですね。その時の自分の方向性とやりたいこと次第です。人間のボーカルじゃなきゃいけないのか、VTuberに曲を作りたいのか、ある特定のカルチャーに対して作るのか、その時々で使う音色やデバイスは変わるわけで。

 その流れでボーカロイドのシーンに対して何かやりたいことがあったり、周りで盛り上がってみんなでやるかという機運が高まったら作ると思いますし。そこに関しては背負うものもないし、気負ってもいないというスタンスなんですよね。

 人間のアーティストでも「曲を数年提供してないから仲違いしている」とはならないじゃないですか(笑)。その延長線上だと思ってもらえれば。

■「Asia Creators Cross」について

 日本のクリエイターが世界で、世界のクリエイターが日本で、相互に活躍できる機会の創出を目的としたクリエイター連携プログラム。

 本イベント『Anime Festival Asia 2025』におけるクリエイターの出演もその一環となっています。

 今後も、世界中の影響力のあるさまざまなイベントを通じて、クリエイターがより多くのファン、共に制作を行う仲間、クライアントとボーダレスに出会える場を広げ、コミュニティの構築やリソースの共有、ネットワーキングを促進していきます。

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